2026年も中国の自動車輸出は高い伸びを続けています。全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)によると、1~7月の輸出台数は640万台に達し、前年同期比54%増となりました。現在のペースが続けば、年間輸出台数は1,000万台を突破する可能性があります。
一方、業界では中国の自動車輸出がいつピークを迎えるのかをめぐる議論が増えています。自動車産業関係者の予測はおおむね2028~2030年に集中し、ピーク時の規模については1,200万~1,500万台との見方が中心です。
予測を左右する主な要因は、海外市場での貿易障壁の強まりと、中国メーカーによる海外現地生産の拡大です。
2029年前後、約1,200万台でピークとの見方
比較的早くから海外展開を進めてきた中国系Tier1サプライヤーの関係者は、中国の自動車輸出が2029年前後にピークを迎え、約1,200万台に達する可能性があるとみています。
背景には、海外工場が稼働しても、完成車輸出が直ちに減少するわけではないとの見方があります。
中国メーカーは東南アジア、南米、欧州など複数地域で同時に市場を開拓しており、地域ごとに成長時期が異なります。また、海外工場も操業開始から生産能力を引き上げ、安定供給に至るまでには時間を要します。
このため、今後数年間は完成車輸出が高水準を維持し、海外生産能力が本格的に拡大する2028~2029年ごろに、輸出と現地生産の新たな均衡が形成されるとの見方です。
約1,500万台で本格的な限界との予測も
中国の自動車輸出には今後2~3年間、なお成長余地があり、1,500万台前後に達して初めて明確な制約に直面するとの予測もあります。
この見方では、中国車の世界市場シェア拡大に伴う貿易政策の変化を重視しています。
中国車のシェアがさらに高まれば、自国産業を保護するため、関税の引き上げや現地調達要件、投資審査、公共調達上の制限などを導入する国・地域が増える可能性があります。中国国内で生産した完成車をそのまま輸出するモデルは、規模が拡大するほど政策面、コスト面で制約を受けやすくなります。
欧州ではすでに、中国製バッテリー式電気自動車(BEV)に対する相殺関税が導入されています。現地生産などを重視する産業政策も強まっており、こうした措置が他地域にも広がれば、完成車輸出の一段の拡大は難しくなる可能性があります。
この意味で「1,500万台」という天井を左右するのは、中国メーカーの製品競争力だけではなく、各国市場が大規模な完成車輸入をどこまで受け入れるかという点です。
CBU輸出は2028年にも転換点か
「完成車輸出」と「中国メーカーの海外販売」を分けて考える見方もあります。
ある世界大手自動車部品メーカーの海外事業責任者は、CBU(完成車)輸出に限れば、2028年前後に転換点を迎え、輸出台数が減少に転じる可能性があるとみています。一方、KD方式による部品・半完成車の輸出まで含めれば、全体の変動は比較的緩やかになる可能性があります。
背景にあるのは、海外現地生産による完成車輸出の代替です。
中国大手メーカーは海外生産拠点の整備を加速しています。BYDはタイとブラジルで現地生産を開始し、ハンガリーでも工場建設を進めています。奇瑞汽車はスペイン、マレーシア、南アフリカで生産拠点を展開し、上海汽車(SAIC)のMGも欧州での生産を計画しています。
海外工場の立ち上げ初期には中国から完成車や部品を輸出する必要がありますが、現地生産能力が拡大すれば、中国から完成車を直接輸出する比率は低下します。
このため、CBU輸出は、中国メーカーの海外販売全体より早くピークを迎える可能性があります。
2030年前後に横ばい圏へ
一方、輸出が天井に近づく時期を2030年前後とみる業界関係者もいます。
この予測は、地政学、関税政策、海外生産能力の三つを総合的に考慮したものです。
数年前には、中国メーカーの海外工場が2025~2026年に相次いで稼働し、現地生産が完成車輸出を早期に代替するとの予測がありました。
しかし実際には、輸出の成長は従来の予想以上に続いています。中国メーカーが複数の海外市場に同時展開しており、地域ごとの成長サイクルが異なることに加え、新エネルギー車(NEV)の輸出増加も成長を支えています。
このため、輸出の伸び率は徐々に鈍化するものの、海外工場の稼働を機に急減するのではなく、2028~2030年にかけて次第に横ばい圏へ移行するとの見方があります。
貿易障壁と海外生産が「天井」を左右
これらの予測には違いがあるものの、輸出のピークを左右する要因は、貿易障壁と海外現地生産の二つに集約されます。
中国車の海外市場シェアが高まるなか、一部の国・地域では関税引き上げや現地生産・調達要件の強化などが進んでいます。こうした政策がどの程度の速度で広がるかによって、完成車輸出の成長が続く期間も変わります。
同時に、販売規模が一定水準に達した市場では、関税や物流コストを負担して輸出を続けるより、現地生産の経済性が高まります。
海外工場の立ち上がりが早ければ、中国国内で生産する完成車の輸出は早期に横ばいに向かいます。逆に海外工場の建設や生産能力の拡大に時間を要すれば、高水準の輸出が続く期間も長くなります。
輸出のピークは海外販売のピークではない
業界関係者が共通して指摘するのは、「輸出台数」と「中国メーカーの海外販売台数」は別の指標だという点です。
海外工場の稼働が本格化すれば、中国メーカーが海外で販売する車両に占める現地生産車の比率は高まります。その結果、中国から輸出する完成車が伸び悩んだり減少したりしても、中国ブランドの海外販売全体は拡大を続ける可能性があります。
つまり、自動車輸出のピークは海外事業の成長が止まることを意味するのではなく、その成長モデルが変わる転換点とみることができます。完成車輸出を中心とした展開から、輸出、現地生産、サプライチェーンの海外展開を組み合わせた事業モデルへの移行です。
自動車メーカーの海外工場拡大に伴い、部品、半導体、コックピットシステム、内装などのサプライヤーも、海外生産体制の整備を進めています。
現時点の業界予測では、中国の完成車輸出は2028~2030年ごろに段階的なピークを迎え、規模は1,200万~1,500万台程度になる可能性があります。ただし、実際の時期と規模は、各国・地域の貿易政策と中国メーカーの現地生産の進展速度に左右されそうです。
