BYDとファーウェイが相次ぎ事故補償制度を導入 先進運転支援の競争は「技術力」から「補償責任」へ

BYDは5月28日、先進運転支援システム「天神之眼(God’s Eye)」AおよびBを搭載した車両を対象に、「シティナビゲーションアシスト(CNOA)」利用時の安全補償制度を導入すると発表しました。

利用者が規定に従ってシティナビゲーションアシストを使用中、自車側に過失責任のある交通事故が発生した場合、自車が負担すべき直接的な経済損失については、BYDが上限を設けず補償します。また、この補償は車両所有者の任意自動車保険を利用しないため、翌年度以降の保険料にも影響しません。

その後、1カ月も経たない6月22日には、ファーウェイのスマートカー事業ブランド「引望(Yinwang)」も同様の制度を発表しました。

同社は、「HUAWEI乾崑智駕(ADS)Max」上位機能パッケージに、新たな補償サービスを追加すると発表しました。対象となるのは、法令に従って公道および対象エリアでADSを正常に利用している際に発生した事故で、自車および第三者の人身傷害や財産損害が補償対象となります。

これにより、ファーウェイはBYDに続き、中国で2社目となる先進運転支援向け事故補償制度を導入した自動車メーカーとなりました。

わずか1カ月足らずの間に、中国を代表する2社が相次いで補償制度を導入したことで、「先進運転支援中に事故が発生した場合、誰がその損失を負担するのか」が改めて業界の大きな関心事となっています。

「補償制度」とは何か

ここでいう「補償制度」とは、事故が発生した際に自動車メーカーがドライバーの法的責任を肩代わりする制度でも、自動運転における責任免除を意味するものでもありません。

一定の利用条件を満たした上で先進運転支援機能を使用中に事故が発生した場合、人身傷害や物的損害などの経済的損失について、自動車メーカーが補償を行う制度です。

中国最高人民法院が公表した指導事例でも、L2レベルの先進運転支援システムは運転者に代わって運転主体となるものではないとされています。先進運転支援機能を作動させていても、運転主体はあくまでドライバーであり、交通違反や行政上・刑事上の責任は引き続き運転者が負います。

つまり、BYDとファーウェイが負担するのは経済的な補償であり、法的責任ではありません。

BYDとファーウェイの補償制度の違い

両社とも「補償制度」と呼んでいますが、その仕組みには大きな違いがあります。

BYDが採用したのは、メーカーによる直接補償方式です。

対象は「天神之眼A」「天神之眼B」を搭載した車両で、補償額に上限は設けられておらず、車両所有者の任意自動車保険を利用する必要もありません。

ただし、「無償」「上限なし」とはいえ、適用条件は厳格に定められています。補償対象はLiDARを搭載した「天神之眼」搭載車に限定され、対象となるのはCNOA(シティナビゲーションアシスト)の利用時のみです。また、営業用車両は対象外であり、利用者は規定どおりに機能を使用し、所定の学習・テストを修了していることが条件となります。飲酒運転や車両改造などの場合は補償対象外となります。

さらに、「天神之眼C」を搭載した車両は、そのままでは補償対象とはならず、1万2000元を支払って所定のアップグレードを行うことで、初めて補償対象となります。従来のアップグレード価格は9900元でした。

また、BYDは「天神之眼B(LiDAR版)」のオプション価格も1万2000元に設定しています。

つまり、BYDの補償制度は決して無条件で提供されるものではなく、対象ユーザーや利用条件を明確に限定した上で設計された制度です。

一方、ファーウェイが導入したのは、上位機能パッケージに付帯する補償サービスです。

7月1日までにADS Max上位機能パッケージを購入したユーザーには1年間、7月1日以降に購入したユーザーには最長3年間の補償が提供されます。

BYDとの最大の違いは、この補償がADS Max上位機能パッケージに付帯している点です。期間限定割引の終了後、パッケージ価格は3万2000元から標準価格の3万6000元へ戻り、各メーカーの補助金を反映した実際の購入価格も約4000元引き上げられました。

また、公表されている補償内容によると、ファーウェイの補償を受けるには車両が任意自動車保険に加入していることが前提となっており、事故発生時には補償条件に基づいて補償が行われます。この点は、メーカーが直接補償を行うBYDの方式とは異なります。

「補償制度」が意味するもの

これまで、先進運転支援中に事故が発生した場合、自動車メーカーは「運転主体はあくまでドライバーである」と説明し、事故による損害賠償は主に任意自動車保険に委ねられるのが一般的でした。いわゆる「先進運転支援保険(智駕保険)」も、多くは保険会社が提供する商品でした。

しかし、BYDとファーウェイが相次いで補償制度を導入したことで、自動車メーカー自らが事故による経済的リスクの一部を負担する動きが始まりました。これは、先進運転支援をめぐる競争が、チップの演算性能やアルゴリズム、センサー性能といった技術競争だけでなく、「事故が発生した際に誰が補償するのか」というリスク負担の領域へと広がりつつあることを示しています。

今後、L3自動運転に関する法制度や国家標準の整備が進む中で、BYDやファーウェイに続き、同様の補償制度を導入するメーカーが増えるのかが注目されます。

 

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