BYDの車載AIエージェント「ディディシャ」に注目 DENZA N8L超急速充電版が世界初搭載

6月23日、DENZA(騰勢)は「N8L超急速充電版」を正式発売しました。メーカー希望小売価格は31万9800元~34万9800元です。ラインアップは「超急速充電尊栄型」と「超急速充電旗艦型」の2グレードで、第2世代ブレードバッテリー、超急速充電技術、「天神之眼5.0」運転支援システム、車体制御システム「雲輦(DiSus)-A」などを搭載しています。その中でも、BYDの車載AIスーパーエージェント「ディディシャ(迪迪蝦、DiDi Xia)」を初搭載したことが注目を集めています。

公開情報によれば、DENZA N8L超急速充電版は、「ディディシャ」を世界で初めて搭載した量産車として位置づけられています。このことから、「ディディシャ」は今回の新型車発表における話題の一つとなりました。

実際には、「ディディシャ」が初めて公開されたのは今回ではありません。2026年5月28日に深センで開催されたBYDのスマート化戦略発表会で初披露され、当時は「宋(Song)Ultra DM-i」が王朝シリーズで初めて「ディディシャ」を搭載するモデルとして発表されました。価格は12万9900元からで、その後「宋Ultra EV」でもOTAアップデートを通じて利用可能になる予定とされています。ただ、当時の発表会では多くの新技術や新製品が紹介されたこともあり、「ディディシャ」自体は大きな話題にはなりませんでした。今回、DENZA N8L超急速充電版が「世界初搭載」を掲げて市場投入されたことで、改めて注目を集めています。

「ディディシャ」は、BYDが車両全体のスマート化システムを基盤に開発した車載AIエージェントで、従来の音声アシスタント「シャオディ(小迪)」を進化させたシステムです。従来の車載音声アシスタントは、「エアコンをつける」「ナビを開始する」「音楽を再生する」といった単一の音声指示を実行することが中心でした。一方、「ディディシャ」は、継続的な対話やユーザーの意図理解、タスクの分解・実行を重視し、会話の文脈や利用履歴を踏まえて複数の作業を連続して処理できる点が特徴です。従来のように指示を受けて個別の操作を実行するだけでなく、ユーザーの目的を理解し、一連のタスクの実行を支援する仕組みへと発展しています。例えば、従来の音声アシスタントでは、ユーザーの指示に従ってルート沿いの花屋や充電スポットを検索することはできても、その後の店舗選択や予約、ルート変更などは利用者自身が操作する必要がありました。一方、「ディディシャ」は、これら一連の作業を一つのタスクとしてまとめ、ユーザーの許可とシステムの対応範囲内で、店舗の提案やルート作成、予約、注文などを行うことを目指しています。

また、「ディディシャ」は多言語や一部方言の認識にも対応しており、地域を問わず利用しやすい環境を実現します。BYDは、個人の嗜好や機密性の高いデータについては車載側で優先的に処理し、クラウド側は高度な推論や知識サービスを担当すると説明しています。一方で、車載AIエージェントの記憶機能やサービス提供能力が向上するにつれ、データセキュリティやアクセス権限の管理、誤作動の防止などは、今後も継続的に検討すべき課題になるとみられます。

機能面では、自然言語による対話、継続的な会話、車内環境の記憶、複数サービスを横断した処理に対応しています。車両制御では、エアコンやシート、ウインドウなどを音声で操作できるほか、移動時にはナビゲーション、充電スポット、飲食店、ホテルなどの情報を組み合わせてルートや旅程を提案します。また、レストラン予約、チケット手配、コーヒーの注文、映画の推薦、フードデリバリーなどの生活サービスにも対応します。公開情報によると、曖昧な表現を理解し、ユーザーの利用履歴を参考にしながらニーズを推測する機能も備えています。

技術面では、BYD独自の大規模AIモデルを基盤とし、「AIOS」をプラットフォームとして採用しています。AIエージェントエンジンが対話やタスク管理を担い、「Agentオープンプラットフォーム」を通じて外部サービスとの連携を実現します。これにより、車両機能の制御だけでなく、ナビゲーションや生活関連サービス、スマートフォン、スマートホームなどとの連携も可能になります。

業界全体では、車載AIエージェントは次世代スマートコックピットの重要な方向性として注目されています。これまでのスマートコックピットは、大型ディスプレイや音声操作、アプリ連携、ナビゲーション機能が中心でした。しかし、大規模AIモデルやAIエージェント技術の導入が進むことで、車載システムは単なる操作インターフェースから、ユーザーの意図を理解し、複数のサービスを連携・実行するスマートプラットフォームへと進化しつつあります。

BYDの「ディディシャ」は、車両制御機能、ユーザーデータ、外部サービス、大規模AIモデルを組み合わせ、新たな車載体験の構築を目指す取り組みです。今後、こうした車載AIエージェントが業界の新たなトレンドとなるかどうかは、実際の使い勝手やシステムの安定性、エコシステムの充実度、データ保護の仕組みなどによって左右されるでしょう。一方で、自動車のスマート化競争が、個別機能の充実からシステム全体のAI能力やサービス提供能力へと軸足を移しつつあることは確かです。

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