BYD、5年以内に世界首位へ――王伝福氏の目標に期待と懐疑の声

6月9日にBYD深圳本社で開催された年次株主総会において、BYDの董事長である王伝福氏は、約1,000人の株主を前に「今後5年以内に、BYDは規模の面で真の世界最大の自動車メーカーになる」との目標を示しました。
王氏は、現在のBYDの成長を制約している最大の要因は市場需要の不足ではなく、第2世代ブレードバッテリーの生産能力拡大であると説明しました。電池生産能力の段階的な拡充と海外市場の継続的な拡大により、今後数年間も力強い成長を維持できるとの見方を示しています。
また、海外事業と技術革新が今後の成長を支える重要な原動力になると強調しました。電池技術や超急速充電技術などの継続的な進化により、BYDは国内外市場でさらなる影響力の拡大を目指す考えです。
その後、BYDも王氏が株主総会の場で「世界最大の自動車メーカーを目指す」という目標を表明したことを認めました。
王氏が掲げた「5年以内に世界首位」という目標に対して、インターネット上では楽観的な見方も少なくありません。一部のネットユーザーは、BYDがすでに新たな発展段階に入ったと評価しています。
支持派は、BYDが直面する課題が、かつての「市場不足」や「技術不足」から「生産能力不足」へと変化したと指摘します。王氏が第2世代ブレードバッテリーの生産能力を成長のボトルネックと位置付けたこと自体が、市場需要がすでに十分存在していることを示しており、企業の関心が受注獲得から受注対応へと移行している証拠だとみています。
また、現在のBYDは10年前の中国自動車メーカーというよりも、かつてのトヨタやフォルクスワーゲン、あるいはサムスンのような世界的製造業企業に近い段階にあるとの意見も見られます。
海外市場についても、支持派はBYDが東南アジア、中東、欧州、南米で早くから事業基盤を構築してきた点を評価しています。単に車両を販売するだけでなく、研修体制やサービスネットワーク、サプライチェーンの整備も進めており、自動車産業における競争は製品販売だけでなく、グローバルな事業運営能力そのものの競争であると指摘しています。
さらに、BYDの将来の成長余地は海外展開だけでなく、技術革新にもあるとの見方があります。第2世代ブレードバッテリー、メガワット級急速充電、DMハイブリッド技術、自動運転技術、AI技術の進化などが、今後の成長を支える重要な要素になると期待されています。
一方で、王氏が示した時間軸に対して懐疑的な見方も少なくありません。
最大の理由は販売規模の差です。2025年のBYDの販売台数は約460万台であるのに対し、トヨタは1,100万台を超えています。2030年までに世界首位を実現するためには、BYDは今後数年間にわたり年平均約19%の成長を維持する必要があります。
また、Geely(吉利汽車)、シャオミ(小米汽車)、XPeng(小鵬汽車)、Leapmotor(零跑汽車)などが次々と新型車を投入するなか、BYDは10万~20万元クラスの市場において、かつてのような圧倒的優位性を失いつつあります。中国市場は「BYD一強」の状態から複数メーカーによる激しい競争へと移行しています。2026年1~5月のBYD販売台数は前年同期比で約20%減少しており、とりわけ中国国内販売の落ち込みが大きく、昨年の販売水準を維持することすら容易ではないとの見方もあります。
さらに、海外市場も最大の不確実要因とされています。米国市場への参入は事実上困難であり、欧州市場では反補助金関税の圧力に直面しています。今後も中国車に対する各種規制や障壁が強化されるとの見方があります。インド、日本、韓国市場も参入障壁が高いとみられています。
そのため、BYDの海外成長は現在、東南アジア、中南米、中東、オーストラリアなどに依存していますが、これらの市場規模には限界があります。また、これらの市場における中国ブランドのシェアが拡大したとしても、その恩恵を受けるのはBYDだけではありません。Chery(奇瑞汽車)、Geely(吉利汽車)、GWM(長城汽車)なども積極的に海外展開を進めており、BYDは中国メーカー同士の競争に加え、世界の既存自動車メーカーとの競争にも直面することになります。
こうしたことから、一部のネットユーザーは「5年以内にトヨタを超えて世界首位になる可能性は低い」との見方を示しています。一方で、目標達成までの期間を10年、あるいはそれ以上に延ばせば、実現の可能性は高まるとの意見も少なくありません。