BYD、「堯舜禹」や「年内2万台導入」報道を否定――それでも人型ロボット開発が進む理由

BYDの人型ロボットをめぐる報道が、ここ数日、中国国内で大きな注目を集めています。
一部では、BYDが独自開発する人型ロボットの開発コードネームが「堯舜禹(ぎょう・しゅん・う)」であり、試作機はすでに第7世代まで進化しているほか、約150台が深圳および長沙の工場で実証運用され、2026年には社内で2万台を導入する計画だと伝えられました。
これに対しBYDは6月5日、メディアの取材に対して、「コードネーム『堯舜禹』」「第7世代試作機が深圳・長沙工場で実地テスト中」「約150台が稼働中」「年内2万台の社内利用を目標としている」といったネット上の情報はいずれも事実ではないと回答しました。
ただし、BYDが否定したのはこれらの具体的な情報であり、人型ロボットそのものの開発を否定したわけではありません。
実際、こうした噂が広がる以前から、BYDグループの執行副総裁である李柯氏は、同社が人型ロボットの開発を進めていることを公の場で認めていました。
李氏は、自動車産業で培われたAI、ソフトウェア、ハードウェアの技術はロボットと共通する部分が多いとの見方を示しています。また将来的には、BYDがロボットを製造するだけでなく、既存の販売ネットワークを通じて販売する可能性にも言及しました。
さらに、BYDに近い関係者もメディア取材に対し、同社が実際に人型ロボットの研究開発を進めていると明らかにしています。
公開されている情報を整理すると、BYDが人型ロボットを開発していると判断できる根拠は主に以下の点にあります。
まず、BYDはすでに専門のエンボディドAI(具身知能)研究チームを設立しています。
同社が過去に公表した採用情報によれば、エンボディドAI研究チームは2022年に発足しており、人型ロボット関連分野も研究対象に含まれています。BYDによると、このチームはロボット本体やシステムのカスタマイズ開発を進めており、すでに工業用ロボット、協働ロボット、自律移動ロボット、さらには人型ロボットに類する製品の開発を完了しているといいます。
次に、BYDは投資を通じてロボット産業チェーンへの布石も進めています。
2023年には智元机器人(AgiBot)へ出資し、2025年には触覚技術や人型ロボット製品を手掛ける帕西尼感知科技(Pasini Technology)にも出資しました。
李柯氏も、BYDは将来的に自社開発だけでなく、他企業との共同開発も視野に入れていると説明しています。
また、戦略面から見ても、BYDの動きは決して例外的なものではありません。
近年では、Tesla(テスラ)、XPeng(小鵬汽車)、広汽集団(GAC)、奇瑞汽車(Chery)など、多くの自動車メーカーが人型ロボット分野への参入を進めています。
業界関係者によれば、スマートカーと人型ロボットは、人工知能、ソフトウェアアーキテクチャ、サプライチェーン、生産体制などの面で高い共通性を持ち、産業チェーンの重複率は60〜70%に達するとされています。そのため、人型ロボットを将来の「第二の成長エンジン」と位置付ける自動車メーカーが増えています。
もっとも、ネット上で拡散している「第7世代試作機」「150台が工場で稼働」「年内2万台導入」といった具体的な数字については、BYD公式が発信した情報ではありません。
現時点で確認できる事実は、BYDが人型ロボットの研究開発を進めていることです。一方で、外部で伝えられている製品コードネームや試験運用規模、導入計画などの詳細については、いずれも裏付けが取れていません。
つまり、BYDが人型ロボット事業に取り組んでいること自体は複数の公開情報から確認できますが、ネット上で流布している具体的な開発進捗や導入計画については、現時点では未確認情報として慎重に扱う必要があると言えるでしょう。