SERES、第2ブランド「賽豆科技」を立ち上げ――ByteDance系AI技術を導入し大衆市場に参入

6月9日、SERES(賽力斯)は新たな自動車ブランド「賽豆科技」を発表しました。ブランドの正式発表に伴い、資本再編や技術協業、製品計画を巡る情報も徐々に明らかになっています。

賽豆科技の前身は重慶藍電科技有限公司です。藍電ブランドは2023年に設立され、主に10万~15万元クラスの大衆向け新エネルギー車市場をターゲットとしていました。これまでに藍電E5などを投入してきましたが、市場での販売実績は期待を下回っていました。

2026年5月、藍電科技は総額66億7100万元の増資を完了し、社名を重慶賽豆科技有限公司へ変更しました。再編後、同社の株主構成は大きく変化しています。重慶市の国有資本を背景とする沙磁致遠が34.5%を保有して筆頭株主となり、SERESの持株比率は32.96%となって第2位株主に後退しました。また、CATL(寧徳時代)傘下の問鼎投資が9.89%を保有するほか、博俊科技や星宇股份などのサプライチェーン関連企業も出資しています。

今回の再編により、SERESは賽豆科技に対する支配権を失い、関連事業も上場会社の連結対象から外れることになります。資本構成を見ると、賽豆科技はSERESの完全子会社的な事業プラットフォームから、「地方国有資本+完成車メーカー+産業チェーン資本」が共同で参画する市場化主体へと転換したといえます。

賽豆科技が大きな注目を集めている理由の一つは、ByteDanceとの関係です。ブランド名に含まれる「豆」の文字が、ByteDance傘下の大規模言語モデル「Doubao(豆包)」を想起させることに加え、ByteDanceのAI事業を担う火山引擎がプロジェクト開発に深く関与していることから、一時は「ByteDanceが自動車事業に参入するのではないか」との見方も広がりました。

これに対し、ByteDanceは6月6日に声明を発表し、自動車の製造や自動車ブランドの立ち上げを行う計画はないと説明しました。また、賽豆はByteDanceやDoubaoが立ち上げた自動車ブランドではなく、双方に資本関係も存在しないと強調しました。ByteDanceによれば、同社の役割は自動車業界のパートナーに対して、大規模言語モデルやスマートコックピット、AI関連技術サービスを提供することにあるとしています。

ただし、複数のメディア報道によると、今回の火山引擎の関与度は、これまで一部自動車メーカーと進めてきた技術協業よりもかなり深いとみられています。

一部報道によれば、両社の協業はかなり以前から準備が進められており、ByteDance内部では「Aプロジェクト」と呼ばれていたとされています。推進責任者は火山引擎の自動車事業責任者である楊立偉氏です。

SERESと火山引擎はすでに協業基盤を築いています。2025年には、SERES傘下の鳳凰技術が火山引擎とEmbodied AI(身体性AI)分野に関する協業枠組み契約を締結し、AIやインテリジェントシステムを巡る共同開発を進めてきました。

そのため、賽豆科技はByteDanceが直接自動車事業に参入するものではなく、SERESが主導し、火山引擎が中核的なスマート化技術を支える新ブランドと位置付けるのが実態に近いとみられます。

6月9日夜、賽豆科技は新たなAI自動車ブランド「AIVA(Artificial Intelligence Voyage Ahead)」を正式発表しました。AIVAは10万~20万元クラスの若年層向けスポーティ市場を主戦場とし、第1弾モデルとしてEV(電気自動車)とレンジエクステンダーEV(EREV)の2種類のパワートレインを設定したクロスオーバーモデルを投入します。

また、全車に「Doubao(豆包)大規模言語モデル」を活用したスマートコックピットを標準装備し、先進運転支援システム(ADAS)は元戎啓行(DeepRoute.ai)が提供します。

業界関係者からは、外観について「NIO ET5Tに近いクロスオーバーワゴンのようなスタイル」との見方も出ています。市場関係者によれば、このモデルは当初、2026年4月に量産段階へ入る予定でしたが、現在は延期されているといいます。

今後、同ブランドの製品は中国市場と海外市場の双方で販売される予定です。SERESはすでに専用のマーケティング・販売チャネルチームを組織しており、AITO(問界)とは別の独立した販売ネットワークを構築する方針です。

SERES全体の戦略から見ると、賽豆が担う役割はAITO(問界)とは異なります。過去数年間、SERESはファーウェイ(華為)と共同展開するAITOブランドによって急成長を遂げました。2026年第1四半期のSERESの新エネルギー車販売台数は7万8500台に達し、前年同期比43.9%増加しました。売上高は257億4600万元で、同34.46%増となりました。

一方で、ファーウェイの「鴻蒙智行(HIMA)」エコシステムは拡大を続けており、ファーウェイとの協業ブランドは当初のAITOから、LUXEED(智界)、STELATO(享界)、MAEXTRO(尊界)、さらに上汽集団との協業ブランドである「尚界」へと広がっています。

こうしたなか、市場ではAITO(問界)の独自性が徐々に薄れつつあり、SERESもファーウェイ体系の外で新たな成長源を模索する必要があるとの見方が広がっています。そのため賽豆は、AITOとは異なる市場ポジションを与えられています。AITOが25万元以上の中高級市場を主戦場とするのに対し、賽豆は10万~20万元の大衆市場を狙います。また、AITOがファーウェイの「鴻蒙智行」体系を基盤とするのに対し、賽豆は火山引擎とDoubao大規模言語モデルを活用し、独自のスマート化体験を構築する方針です。

このような「ダブルブランド戦略」は、SERESがより幅広い消費者層を取り込むうえで有効であり、同時に単一ブランドへの依存度を下げる効果も期待されています。

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