中国、L3/L4自動運転向け初の強制国家標準を公表 安全性の立証を義務化、2027年7月施行へ

中国工業情報化部は6月16日、「智能網聯汽車(スマートカー)自動運転システム安全要求」の強制国家標準案(意見募集稿)を公表し、パブリックコメントの募集を開始しました。意見募集期間は2026年6月17日から24日までで、施行日は2027年7月1日が提案されています。
これは中国で初めてとなるL3(条件付き自動運転)およびL4(高度自動運転)向けの強制国家標準です。2024年に公表された推奨国家標準「GB/T 44721—2024『智能網聯汽車(スマートカー)自動運転システム汎用技術要求』」を体系的に発展させたものであり、推奨標準から法的拘束力を持つ強制標準へ移行することになります。
同標準は、L3および/またはL4自動運転システムを搭載したM類(乗用車)およびN類(貨物車)を対象としており、自動駐車システムは適用対象外です。自動運転システム(ADS)の技術要件、安全確保要件、同一型式判定要件のほか、検査・検証および確認試験の方法についても規定しています。
動的運転タスク(DDT)の実行に関しては、ADSの安全水準が少なくとも「適格かつ運転に集中しているドライバー」と同等以上でなければならず、利用者や他の道路利用者に対して不合理な安全リスクをもたらしてはならないと明記されています。また、システム作動中はすべての動的運転タスクを担い、自らが設計運行条件(ODD)の範囲内にあるかどうかを継続的に認識することが求められます。
さらに、想定された標準運行条件下ではADSの運転行動によって衝突を引き起こしてはならず、リスク状況において衝突が回避できない場合には、事故による被害や損失を可能な限り低減しなければなりません。また、システム障害時には、動的運転タスクの遂行能力に影響を及ぼす故障や機能異常を検知できることが求められています。
旧標準と比較した場合、今回の新標準における最大の変更点は、評価の重点が「走行できるかどうか」から「十分な安全性を確保しているかどうか」へ移った点です。旧標準が開発指針としての性格を持つガイドラインだったのに対し、新標準は市場投入のための必須要件となります。
特に、ADSの安全性が少なくとも「適格かつ運転に集中しているドライバー」と同等以上であることが求められるため、自動車メーカーは今後、「何万km走行した」「何都市で実証した」といった実績だけでシステム性能をアピールすることは難しくなります。どのような条件下で機能するのか、どのように安全性を検証したのか、そして異常発生時にどのようにリスクを制御するのかを明確に示す必要があります。
そのため新標準では、「Safety Case(安全ケース)」制度が導入されました。企業は「主張―論拠―証拠」という枠組みに基づき、自動運転システムの安全性を体系的に立証しなければなりません。設計運行条件下におけるシステムの能力範囲だけでなく、それを裏付ける論理的根拠や試験データを提示し、技術要件への適合性と、安全上の不合理なリスクが存在しないことを証明する必要があります。
これは、従来に比べて安全性検証の比重が開発の上流工程へ移ることを意味します。これまでは開発を進めた後に試験を実施する形が一般的でしたが、今後は「どのように安全性を証明するか」をあらかじめ設計段階から組み込むことが求められます。
検証体系については、シミュレーション試験、試験場試験、公道試験を統合した枠組みを採用しています。複数の試験結果によって安全性に関する主張を裏付けるとともに、シミュレーション結果と実車試験結果との整合性も検証し、追跡可能かつ検証可能な安全立証体系を構築する方針です。
また、L3とL4では運用特性の違いを踏まえた差別化された要件が設けられています。
L3自動運転では、人とシステムの運転引き継ぎが重要なポイントとなります。ADSは運転を引き継ぐドライバーの対応能力を継続的に評価し、直近30秒以内に少なくとも2種類の独立した有効指標によって、動的運転タスクを遂行できる状態にあることを確認しなければなりません。運転を引き継ぐドライバーがシートベルトを着用していない場合や、1秒を超えて運転席を離れた場合には、システムは介入要求を発しなければなりません。
また、運転を引き継ぐドライバーが運転を引き継がなかった場合や、安全ケースで規定された条件に該当する場合には、システム自らが最小リスク戦略(MRM)を実行し、車両を最小リスク状態へ移行させることが求められます。
一方、L4自動運転では、規制の重点はシステム自身のリスク対応能力に置かれています。システムは動的運転タスクの遂行において遠隔支援に依存してはなりません。また、ADSソフトウェア、認識システム、自動運転機能、設計運行条件、最小リスク戦略なども型式判定の対象に含まれます。
業界関係者の間では、今回の強制国家標準案の公表は、自動運転規制が「普及促進重視」から「安全重視」へと大きく転換する象徴的な出来事と受け止められています。これまでのように曖昧な表現や機能アピールによって市場シェアを競う時代は終わりを迎え、今後は安全性そのものが競争力の中核になるとの見方が広がっています。
標準案によると、新たに型式認可を申請する車両は施行日から適用対象となります。一方、すでに型式認可を取得している車両については、施行開始から13カ月後に適用されます。業界の対応期間として、およそ1年間の移行期間が設けられる予定です。