BYD、欧州現地生産を加速 ハンガリー工場が年内量産、第2工場は仏・西が候補 輸出採算悪化も背景に

 BYDは欧州での現地生産体制の構築を加速しており、製造分野への投資と人員採用を大幅に拡大する計画です。

 10月12日、BYDの執行副総裁で国際事業責任者を務める李柯(Stella Li)氏は、2026年パリモーターショーでBloombergのインタビューに応じ、ハンガリーに建設中の欧州初の乗用車工場が稼働に向けた最終準備段階にあり、今年第4四半期に本格量産を開始する予定だと明らかにしました。また、欧州で第2、第3の完成車工場の建設も検討しており、フランスとスペインが候補地に挙がっているといいます。

 李氏はさらに、BYDの欧州従業員数が近く1万人を超え、2030年までには4万人を突破するとの見通しを示し、欧州市場への長期的な事業展開に強い意欲を示しました。

ハンガリー工場が間もなく量産開始、欧州生産ネットワークを拡大

 BYDのハンガリー工場は、同国南部のセゲド(Szeged)に位置し、EU域内で初めて建設する乗用車生産拠点となります。2023年12月に建設計画が発表され、当初は2025年末の生産開始を予定していましたが、その後2026年第4四半期に延期されました。

 BYDはハンガリー工場に加え、欧州での生産ネットワークをさらに拡大する方針です。今年9月、BYDの欧州特別顧問を務めるアルフレド・アルタビラ(Alfredo Altavilla)氏は、欧州市場での販売拡大とEUの現地生産要件への対応を見据え、長期的には完成車組立工場3カ所とEV用電池工場1カ所からなる生産体制が必要との認識を示しました。

 新工場の立地については、今年上半期にはイタリアが最有力候補とされていました。しかし、ステランティス傘下のブランドをめぐる買収交渉がまとまらなかったため、イタリアは候補の一つに後退し、現在はフランスとスペインが重点的な検討対象となっています。

 事情に詳しい関係者によると、フランスとスペインはあくまで候補地であり、最終的な建設地は現時点では予測できないといいます。BYDにとって現在の焦点は、立地選定そのものよりも、進出先との条件交渉に移っているようです。十分な優遇措置が提示され、事業上の制約も少なければ、速やかに契約締結へ進む可能性があります。それほど欧州での現地生産体制の確立が急務となっているということです。

輸出支援策の縮小と収益圧力が現地生産を後押し

 関係者は、最近の中国とEUによる自動車貿易をめぐる政府間交渉や、中国の新エネルギー車輸出に関する増値税還付率が13%から9%へ引き下げられたことを挙げ、BYDが厳しい経営環境に直面していると指摘しています。

 過去の決算資料によると、BYDの利益に対して政府補助金が大きな割合を占めています。2024年の通常の事業活動に関連する政府補助金は104億元に達し、同年の親会社株主に帰属する純利益402億元の約26%に相当しました。2025年には同補助金が124億7,000万元に増加した一方、親会社株主に帰属する純利益は326億元に減少し、補助金の対純利益比率は約38%に上昇しました。

 今回の輸出還付率の引き下げ(4%)を純利益から単純に差し引くと、2025年の利益は約201億3,000万元となり、前年比の減益率は決算上の約19%から約32.5%に拡大する計算になります。ただし、これは補助金の規模を比較するための参考値であり、実際の営業利益や補助金廃止時の利益を示すものではありません。

 また、輸出還付率の引き下げによる影響について、ドイツ銀行の試算では、BYDの輸出車1台当たりの純利益が約5,000元減少するとされています。輸出車両の採算を直接圧迫する要因となります。

 JPモルガンの分析はさらに厳しく、販売価格を引き上げない場合、2027年のBYDの利益が約18%減少する可能性があるとしています。

 最近、中国のSNSでは、BYDが従業員向けの利益連動賞与を廃止し、業績評価に基づく報酬も引き下げているとの情報が広がっています。従業員の間でも先行きへの不安が強まっているとされ、BYDが人件費の抑制を通じて、予防的なコスト削減に着手している兆候ではないかとの見方も出ています。ただし、これらの情報については、会社側による公式な確認は得られていません。

欧州の保護主義強化、現地生産の必要性が一段と高まる

 欧州の地場自動車メーカーとの競争に加え、EUによる中国車への貿易規制もBYDにとって大きな課題となっています。

 EUはすでに中国製EVに対する追加関税を導入しており、今後は輸入数量制限や、さらに踏み込んだ市場参入規制に発展する可能性も否定できません。こうした動きは、BYDを含む中国自動車メーカーの海外展開にとって重要なリスクとなります。

 BYDにとって、輸出に依存した事業モデルを維持することは次第に難しくなっています。貿易障壁の強化や中国国内の輸出支援策の縮小に対応するためにも、欧州での投資を急ぎ、現地生産体制を早期に確立する必要性が高まっています。

 ハンガリー工場の本格稼働に加え、第2、第3工場の建設計画がどこまで具体化するかが、今後のBYDの欧州事業を左右する重要な焦点となりそうです。