中国財政部と国家税務総局は10月12日、「一部製品の輸出税還付政策の調整に関する公告」(2026年第29号)を共同で発表し、2027年4月1日から新エネルギー車(NEV)の増値税(付加価値税)の輸出還付率を現行の13%から9%へ、4ポイント引き下げると発表しました。中国の新エネルギー車輸出に関する重要な税制変更となります。
公告によると、同日から電子たばこ関連機器などの製品についても、増値税の輸出還付を廃止します。一方、対象製品のうち中国の消費税が課されるものについては、輸出時の消費税の還付・免税制度を引き続き適用します。新たな還付率は、輸出貨物の税関申告書に記載された輸出日を基準に適用されます。
今回の政策変更は施行の約半年近く前に発表されており、自動車メーカーには輸出コストの再計算や海外向け販売価格の見直し、既存契約への対応に一定の準備期間が与えられました。今回の調整は新エネルギー車を対象としており、従来のガソリン車などは含まれていません。また、今後さらに還付率を引き下げるのか、最終的に廃止するのかについても、現時点で明確な方針は示されていません。
中国では2024年12月、太陽光発電関連製品や電池などの輸出税還付率が13%から9%に引き下げられました。さらに2026年4月からは、太陽光発電関連製品などの輸出税還付が廃止され、電池の還付率も6%に引き下げられました。電池については、2027年1月1日から還付が廃止される予定です。
今回、新エネルギー車も輸出税還付率の引き下げ対象となったことで、政策調整の対象が太陽光発電や電池などの新エネルギー関連産業から、自動車完成車へと広がったことになります。
政策変更への布石:海外競争の規範化から税制調整へ
今年8月24日、中国商務部、工業情報化部(MIIT)、国家市場監督管理総局の3部門は、「自動車産業の海外競争行為およびコンプライアンス体制整備に関する指針」を共同で策定し、9月1日に公表しました。
同指針は、自動車メーカーに対し、コストを基礎とし、国際市場の需給動向を踏まえた価格設定方針を確立するよう求めています。また、不当な競争優位を得るために市場秩序を乱す行為を避け、海外市場での希望小売価格を設定する際には、頻繁かつ大幅な価格変動を避けるよう求めています。
ただし、この指針は企業向けの参考資料という位置付けであり、直接的な罰則規定は設けられていません。また、海外での価格設定と輸出税還付の適用資格を連動させる仕組みもなく、実効性は主に企業の自主的な対応と政策的な誘導に委ねられています。
これに対し、今回の輸出税還付率の引き下げは、企業のコスト計算や利益率、輸出価格に直接影響するため、より実効性のある政策手段となります。
輸出急増の裏で、中国ブランド同士の海外価格競争が激化
近年、中国の自動車輸出は急速に拡大しています。税関統計によると、2025年の中国の完成車輸出台数は約832万台に達し、輸出先は200以上の国・地域に広がりました。このうち新エネルギー車の輸出台数は261万5,000台で、前年比103.7%増となりました。
輸出企業やブランドの増加に伴い、海外市場の競争構造も変化しています。東南アジア、中東、中央アジア、中南米などでは、中国メーカーの競争相手はトヨタやフォルクスワーゲンなどの従来の海外メーカーだけでなく、他の中国ブランドとなるケースが増えています。
中国車の価格競争力は、主に完成度の高いサプライチェーンや生産効率の向上、開発スピード、規模の経済によるものですが、輸出税還付制度も企業に一定の値下げ余地を与えてきました。
9月3日、中国の自動車専門メディア「汽車商業評論」の賈可編集長は、「乗用車完成車の輸出税還付廃止に関する政策提言」と題する記事を発表しました。過去2年間にわたる複数の海外市場での現地調査を踏まえ、一部の海外ディーラーが中国の輸出企業に適用される税還付を仕入れ価格の交渉に織り込み、あらかじめ車両の供給価格を引き下げるよう要求していると指摘しました。
つまり、輸出税還付によって生まれる価格面の利益が、必ずしも中国企業に残るわけではなく、価格交渉を通じて海外の購入業者や販売チャネルに移転しているということです。
一方、中国の輸出企業は、車両の仕入れや保管、輸送に加え、税還付を受けるまでの資金負担も抱えています。利益率が低く、価格交渉力の弱い企業にとっては、輸出税還付制度が必ずしも実際の収益改善につながっていない可能性があります。
もちろん、輸出税還付は本来、国内で課された増値税を輸出品の価格に転嫁させないための制度であり、国際貿易で広く採用されている税制上の中立性を確保する仕組みです。そのため、単純に政府による輸出補助金と同一視することはできません。
しかし、中国の自動車産業がすでに一定の国際競争力を確立し、輸出規模も拡大し続けているなか、高い輸出税還付率を維持することは、中国メーカー同士の海外での過当競争を助長するだけでなく、外国から政府補助金との批判を招く要因にもなりかねません。こうした背景から、輸出税還付制度の見直しを求める声が高まっています。
