中国、2030年に全固体電池の一定規模での実用化へ 7部門が新型電池「第15次5カ年計画」を発表

 ※本記事は「計画」全文を原文の章立てに沿って再構成したものではなく、自動車専門メディアの読者向けに、新型電池技術や自動車の電動化、関連サプライチェーンと関係の深い内容を抜粋し、テーマ別に整理したものです。

 9月28日、中国の工業情報化部(MIIT)や国家発展改革委員会(NDRC)、交通運輸部など7部門は、新型電池産業に関する「第15次5カ年計画」を発表しました。2030年までに全固体電池(All-Solid-State Battery)の一定規模での実用化を目指すほか、長寿命リチウムイオン電池ではサイクル寿命1万5000回を目標に掲げています。

 計画ではリチウムイオン電池を中心としながら、ナトリウムイオン電池やフロー電池などを組み合わせた製品体系を構築します。自動車分野では、NEV(新エネルギー車)向け駆動用バッテリーの安全性、急速充電性能、低温性能、軽量化、エネルギー密度の向上を重点項目としています。

2030年に全固体電池を一定規模で実用化

 今回の計画で、自動車業界にとって特に注目されるのが全固体電池です。

 2030年までの目標として、新型電池に関連する材料や技術の開発を進めるとともに、全固体電池について「初歩的な規模化応用」を実現するとしています。つまり、2030年までに全固体電池の一定規模での実用化を進める方針です。

 全固体電池では、イオン伝導率やサイクル安定性、コストなどを重点課題に設定。界面接触、長寿命化、量産を想定した加圧システムなどの技術開発を進めます。

 材料面では、高電圧・高容量の正極材とリチウム金属系負極、アノードフリー技術などの組み合わせを想定しています。固体電解質についても、硫化物系やハライド系、高性能ポリマー複合系などの開発・量産能力を高める方針です。

ドライ電極や等方圧プレスなど量産技術も対象

 電池そのものだけでなく、製造技術も重点分野となります。

 計画では、厚膜電極やドライ電極、熱圧転写、高精度積層、多層タブのレーザー溶接、等方圧プレス(Isostatic Pressing)などの技術開発を盛り込んでいます。

 特に全固体電池向けでは等方圧プレス装置などの専用設備を開発し、材料開発から量産工程までを含めた産業基盤の構築を進めます。

EV用電池は安全性、急速充電、低温性能を強化

 リチウムイオン電池については、エネルギー密度や出力密度、サイクル寿命の向上を継続します。

 EVや電動船舶向けの駆動用バッテリーでは、安全性に加え、急速充電性能、低温環境への適応性、軽量化、エネルギー密度を重点的に改善する方針です。

 また、新エネルギー車(NEV)だけでなく、公共交通、大型トラック、航空、内航船、農業機械などでも電動化を進めます。

 中国政府は別の「電子情報製造業発展・第15次5カ年計画」でも、固体電池やナトリウムイオン電池、フロー電池などの産業化と、NEVや船舶、航空、ロボット、建設機械などへの用途拡大を打ち出しています。

ナトリウムイオン電池も並行して開発

 全固体電池だけでなく、ナトリウムイオン電池も重点技術に位置付けられました。

 ナトリウムイオン電池では、コスト、安全性、資源調達面の特徴を生かしながら、正極・負極材料の改良を進めます。車載用途では高安全性、低温性能、高エネルギー密度を備えた駆動用電池を開発する方針です。

 一方、定置型蓄電用途では、安全性や経済性、長いサイクル寿命を重視します。

 製品体系全体としては、リチウムイオン電池を主軸とし、ナトリウムイオン電池やフロー電池などを並行して展開する構成となります。

AIを電池開発から生産まで活用

 電池産業へのAI(人工知能)の導入も計画に盛り込まれています。

 材料開発ではAIを使って電極や電解質の組成を設計・最適化し、電池性能の予測にも活用します。生産工程では、マシンビジョンなどを利用して製造条件を調整し、生産効率や製品の均一性を高めます。

 BMS(Battery Management System)については、幅広い温度域や高出力条件、経年劣化した状態でも推定精度を高め、熱暴走を早期に検知する技術の開発を進めます。

EV用バッテリーに「デジタルID」、リサイクルも強化

 使用済みバッテリーの回収と再資源化も重点項目です。

 メーカーなどに対して販売量に応じた使用済み電池の回収体制整備を促し、解体、破砕、選別、精錬、有価元素の回収といった工程の自動化・高度化を進めます。

 さらに、EVなどに搭載する駆動用バッテリーについて「デジタルID」を構築し、製造から使用、回収までのライフサイクル情報を管理する方針です。電池の「デジタルパスポート」に相当する仕組みについても、国際的な利用を想定した制度を検討します。

 製品ごとのカーボンフットプリント算定体系や関連データベースも整備し、データの国際的な相互承認・共有を進める計画です。

 今回の計画では、全固体電池の研究開発だけでなく、材料、製造装置、BMS、熱管理、AI活用、車載用途、リサイクルまでが対象となっています。中国の新型電池政策は、2030年を一つの節目として、次世代電池の量産・実用化を支えるサプライチェーン全体を整備する内容となっています。