中国、「第15次5カ年計画」NEV産業計画を発表 過剰生産能力を抑制、自動運転の参入要件も厳格化

 中国工業情報化部など9部門は9月10日、「スマート・コネクテッド新エネルギー車産業発展『第15次5カ年計画』」(以下、「計画」)を共同で発表しました。2030年までに、新エネルギー乗用車の販売比率を70%、商用車を40%とし、自動運転機能を備えた車両の本格的な普及を目指します。

 新エネルギー車の普及率や産業規模の拡大を重視してきた「第14次5カ年計画」と比べ、今回の「計画」では産業の生産性や競争秩序に対する要求が大幅に強化されました。従業員1人当たりの労働生産性を2025年比で15%引き上げるほか、世界販売台数上位10社に入る完成車メーカーや、世界上位100社に入る部品メーカーを複数育成する方針です。

過剰生産能力の警戒・調整

 中でも注目されるのが、「生産能力の警戒・調整」が初めて国レベルの自動車産業計画に盛り込まれた点です。

 「計画」は、新たに独立系の新エネルギー車メーカーを設立するプロジェクトの条件を厳格化するとともに、自動車メーカーの法令に基づくM&Aや地域をまたぐ事業統合を促進するとしています。また、市場原理と法制度に基づいて非効率な生産能力の退出を進め、動力電池についても生産能力の警戒・調整を強化します。

 こうした政策転換の背景には、自動車業界の設備稼働率の低迷があります。国家統計局によると、中国の自動車製造業の設備稼働率は2026年第1四半期に約70.3%、第2四半期も70.8%にとどまりました。いずれも、製造業で一般に健全な水準とされる75%前後を下回っています。

 今後は単純に新エネルギー車の生産能力を増やすのではなく、既存設備の稼働率を高めるとともに、M&Aを通じて業界の集約を進めることが政策の重点となります。

自動運転の参入・認証要件も厳格化

 「計画」では、自動車生産に加え、L2およびL3以上の運転自動化システムに関する参入・認証要件を整備し、新技術、新材料、新工法の採用に対する評価・管理を強化するとしています。

 工業情報化部の辛国斌副部長はこれまでに、一部の革新的な車両設計が十分な試験や検証を経ないまま市場投入され、製品品質や自動運転の安全性をめぐる問題が発生していると指摘しています。今後は新たな設計に対する審査や試験・検証を強化し、十分な検証を経ていない製品の市場投入を防ぐ方針です。

 自動運転に関する制度整備も加速しています。2026年6月には強制国家標準「スマート・コネクテッドカー 自動運転システム安全要求」が公布され、2027年7月1日の施行が予定されています。さらに8月に公表された道路交通安全法の改正草案では、初めて「自動運転車に関する特別規定」が設けられました。

 中国では、自動運転車の製品認証から公道走行、責任の所在までを包括する独自の監督・管理制度が徐々に整備されつつあります。

価格競争からサプライヤーへの支払い管理まで規制拡大

 自動車業界の収益性が低下する中、「計画」は独占禁止、不正競争防止、価格監督の強化も打ち出しました。また、地方政府による不適切な財政補助や税制・土地面での優遇措置を是正するとともに、企業間の代金支払い管理を強化します。

 中国汽車工業協会によると、2026年上半期の自動車製造業の売上高は前年同期比1.8%増の5兆1,900億元となった一方、利益総額は19.5%減の1,953億5,000万元に落ち込み、売上高利益率は3.8%にとどまりました。

 規制当局は今年に入り、相次いで対策を打ち出しています。2月には国家市場監督管理総局が「自動車業界価格行為コンプライアンス指針」を公表しました。6月には工業情報化部と市場監督管理総局が、過度な競争の疑いがある自動車メーカーに対して事情聴取と注意喚起を実施しています。

 さらに9月7日には、両部門が自動車メーカーによるサプライヤーへの支払い期間の適正化に関する文書を共同で発表しました。

 一連の措置からは、監督の対象が自動車の販売価格をめぐる競争だけでなく、サプライチェーンや企業間取引の秩序にまで広がっていることが分かります。

中国の自動車政策、「規模拡大」から「効率向上」へ

 「第14次5カ年計画」期間中、中国の新エネルギー車の年間販売台数は136万7,000台から1,649万台へ増加し、新車販売に占める比率も5.4%から47.9%まで上昇しました。新エネルギー車、動力電池、主要材料の生産量はいずれも世界全体の70%以上を占めています。

 一方、市場規模が急速に拡大したことで、中国自動車産業が直面する課題も変化しています。

 従来は新エネルギー車の供給拡大と市場規模の成長が政策の中心でしたが、「第15次5カ年計画」では、設備稼働率、業界の集約度、企業の収益力、競争秩序といった「質」と「効率」に重点が移りつつあります。