中国、道路交通安全法改正案に自動運転規定 作動中の交通違反はメーカー側が責任

 8月25日、中国の「道路交通安全法」改正案が第14期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第24回会議で初めて審議されました。改正案には「自動運転車に関する特別規定」と題する章が新設され、自動運転車の法的位置付けや公道走行の条件、交通違反の責任、保険制度などが、中国の国家法として初めて明確に示されました。

 改正案では、自動運転車は道路交通規則への適合性試験に合格し、法令に基づく登録を行ったうえで、設計運行条件を満たす場合に限り、自動運転機能を作動できるとしています。自動運転機能の作動中に道路交通法規に違反した場合は、自動車メーカーまたは輸入事業者が処分を受けます。メーカー側が違反行為は自動運転機能とは無関係だと主張する場合には、そのことを示す証拠の提出が必要となります。

 自動運転機能を作動していない自動運転車や、運転支援機能のみを備えた車両については、引き続き通常の自動車と同じ規定が適用されます。つまり、現在市場に出回っている多くのL2(レベル2)運転支援車は今回の規定の対象外で、引き続きドライバーが運転責任を負います。

 改正案は、自動運転車に対して自動車交通事故責任強制保険制度を導入する方針も示しており、具体的な制度は国務院が定めます。また、設計運行条件を満たしていない場合には、自動運転機能を作動できないようにすることも求めています。

 中国では今回の法改正に先立ち、自動運転車の市場参入や技術基準の整備が段階的に進められてきました。2023年末には工業情報化部など4部門がインテリジェント・コネクテッドカーの市場参入・公道走行試験を開始しました。2025年12月には、初のL3(レベル3)条件付き自動運転車が市場参入許可を取得し、北京と重慶の指定区域で試験運行を開始しました。さらに2026年7月には、強制国家標準「インテリジェント・コネクテッドカー 自動運転システム安全要求」(GB 44721—2026)が公布され、2027年7月1日から施行される予定です。

 これまでの試験制度や技術基準と比べ、今回の改正案は運転支援と自動運転の責任分担を法律レベルで一段と明確にした点が特徴です。L2では引き続きドライバーが運転責任を負う一方、所定の条件を満たしたL3の自動運転機能が作動している場合には、交通違反の責任が自動車メーカーや輸入事業者側に移ります。

 ただし、今回明確にされたのは主に、自動運転中に発生した交通違反について誰が責任主体となるかという点です。交通事故が発生した場合に、すべての責任を一律にメーカーが負うという意味ではありません。事故については、公安機関の交通管理部門が車両データを取得するとともに証拠を収集し、検査や鑑定を行ったうえで責任を判断することになります。

 近年、中国の自動車市場では「L2.999」「都市NOA」「高機能スマートドライビング」「ゼロ介入」など、さまざまな表現が販売促進に使われています。しかし、製品がL2にとどまる限り、運転責任を負うのはドライバーです。責任主体が明確になれば、メーカーがL3の自動運転機能を投入する際には、より直接的な法的責任を負うことになります。これにより、機能を過度に強調したり、曖昧な表現によってユーザーに誤解を与えたりする販売手法を抑制する効果も期待されます。

 もっとも、自動運転が道路交通安全法の改正案に盛り込まれたからといって、L3の大規模な商用化に必要な条件がすべて整ったわけではありません。本格的な普及には、2027年7月1日に予定されている強制国家標準GB 44721—2026の施行に加え、保険制度や交通取り締まり・事故処理に関する細則の整備を待つ必要があります。