9月1日、中国商務部、工業情報化部、市場監督管理総局の3部門は、「自動車業界の海外競争行為およびコンプライアンス体制整備に関する指針」(以下、「指針」)を共同で公表しました。中国の自動車メーカーに対し、海外市場における価格設定や販売、アフターサービス、雇用、データ管理などについて新たな方向性を示したものです。
今回の「指針」で重点の一つとなっているのが、海外市場での価格競争です。
「指針」では、海外で価格を設定する際、コストや現地市場の需給、商慣行などを踏まえ、市場シェアの獲得を目的とした無秩序な値下げを避けるよう求めています。同一車種でも仕様ごとに価格差を明確にし、短期間に頻繁かつ大幅な価格変更を行うことで、既存顧客の利益やブランドイメージを損なわないよう注意を促しています。
また、現地の販売店や代理店が持つ価格決定の自主性を尊重し、不合理な販売政策によって店頭価格に過度に介入しないことや、表示価格とは別に恣意的な上乗せを行わないことも求めています。
価格以外では、海外市場への投入前に、製品が現地の道路事情や気候、利用環境に適しているかを十分に確認するよう求めています。あわせて、現地市場に対応した品質管理、修理、アフターサービスの体制を整備することも盛り込まれました。
海外で生産・事業を展開する際には、現地の労働法規を順守し、従業員の権利を保護するとともに、政治、産業、事業運営に関するリスクを事前に把握することも求めています。
コネクテッドカーや自動運転などの分野では、データ管理への対応を特に重視しています。海外で車載通信、運転支援、自動運転などの事業を展開する場合、車両やユーザーに関するデータの収集、保存、利用、越境移転について現地法に従って適切に管理し、ユーザーのプライバシーを保護する必要があるとしています。
今回の「指針」が公表された背景には、中国の自動車輸出や海外投資が引き続き拡大する一方、一部の海外市場で中国ブランドによる相次ぐ値下げや競争激化がみられることがあります。中国メーカーの海外展開が単なる輸出から現地生産や長期的な事業運営へと移るなか、価格体系や販売店との関係、アフターサービス、データ管理などの重要性も高まっています。
「指針」の公表後、中国の複数の自動車メーカーが相次いで対応を表明しました。
BYDは関連する要求に積極的に対応する方針を表明しました。奇瑞汽車(Chery)は、海外でのコンプライアンス体制を引き続き強化し、適正な市場競争と現地化経営を通じて海外事業を進めるとしています。賽力斯(Seres)も、海外事業のコンプライアンス体制をさらに整備し、海外市場での競争行為を適正化する方針を示しました。
今回の「指針」は、中国政府が自動車メーカーに対し、海外市場の拡大にあたって低価格だけでシェアを奪う競争から距離を置き、製品力やサービス、現地化、長期的なブランド構築を重視する方向へ転換するよう促すものといえます。
