中国の自動車業界で、「支払サイトの長期化」が再び問題となっています。
昨年6月、中国政府は、長年続いているサプライヤーへの支払い遅延を解消するよう自動車業界に働きかけました。政府の要請に応じる形で、第一汽車(FAW)、東風汽車(Dongfeng)、広州汽車(GAC)、賽力斯(Seres)、吉利汽車(Geely)、長安汽車(Chang’an)、BYDなど主要自動車メーカー17社は、サプライヤーへの支払サイトを60日以内とする方針を一斉に表明しました。中国工業情報化部はその後、こうした動きが、完成車メーカーと部品メーカーが協調し、共存共栄を図る産業エコシステムの構築につながるとの見解を示しました。
中国汽車工業協会(CAAM)が今年2月に公表した調査結果によると、主要メーカーの大半が平均支払サイトを約54日まで短縮し、前年同期より10日短くなりました。各社が足並みをそろえて大々的に「60日以内」を掲げたことで、サプライヤーへの支払い遅延は解消に向かっているかに見えました。
ところが、上場自動車メーカーの中間決算からは、これとは正反対の傾向が浮かび上がっています。新浪財経や優視汽車などの中国メディアがこのほど報じたところによると、主要上場自動車メーカー14社の買掛金・支払手形の合計額は、2026年6月末時点で7825億1000万元に達し、2025年末から175億5000万元増加しました。14社の仕入債務回転日数の平均は、2025年6月末が約170日、同年末が164日、2026年6月末が187日でした。平均支払サイトは短縮するどころか、昨年末より23日延びています。
14社のうち、13社で昨年末より支払サイトが長期化しました。最も大きく延びたのは小鵬汽車(XPENG)で、57日増加しました。一方、理想汽車(Li Auto)は唯一短縮したメーカーで、23日減の162日となりました。
大手メーカーの買掛金・支払手形の残高は、特に大きな規模に膨らんでいます。2026年6月末時点で、上海汽車集団(SAIC)は1870億6000万元、BYDは1763億5000万元、奇瑞汽車(Chery)は1456億7000万元に達しました。このうち奇瑞汽車は昨年末から354億6000万元増え、増加率は32.17%となりました。零跑汽車(Leapmotor)は139億8000万元、上海汽車集団は133億2000万元、それぞれ増加しました。
もっとも、自動車メーカーが表明した「60日以内の支払い」は、主に中小サプライヤーへの代金支払いを対象としています。これに対し、187日という数字は、企業の買掛金・支払手形全体を基に算出した財務指標で、大口調達や関連当事者との取引、表明の対象外となるサプライヤーも含まれます。このため、両者を単純に同一視することはできません。
ただし、集計範囲の違いだけでは説明できない疑問も残ります。対象となるサプライヤーへの平均支払サイトが実際に54日まで短縮されたのであれば、なぜ自動車メーカー全体の買掛金・支払手形の残高が増え続け、14社中13社で仕入債務回転日数がさらに延びたのでしょうか。自動車メーカーと監督当局には、より詳細なデータに基づく説明が求められます。
実際の運用では、一部の自動車メーカーが照合作業や検収を遅らせたり、企業グループの引受手形を利用したり、新旧の契約で異なる基準を適用したりすることで、書面上の「60日」とサプライヤーが実際に現金を受け取る時期にずれが生じています。一部サプライヤーの実質的な代金回収期間は依然として180日前後に及び、最長で250~300日に達するケースもあります。サプライチェーン金融のプラットフォームは資金調達手段を提供しているものの、手数料や金利はサプライヤーが負担しており、自動車メーカーがサプライチェーンの資金を占有している実態は変わっていません。
値下げ競争が続き、業界の利益が減少するなか、完成車メーカーの資金繰りには一段と強い圧力がかかっています。2026年上半期の自動車製造業の売上高は前年同期比1.8%増えた一方、利益総額は19.5%減少し、売上高利益率は3.8%に低下しました。一部の自動車メーカーは、こうした経営上の負担を、価格交渉力の弱い部品サプライヤーへ転嫁しています。
昨年、17社が「60日以内の支払い」を大々的に表明したにもかかわらず、今年は上場自動車メーカー14社の平均支払サイトが187日に延びました。財務データを見る限り、支払い遅延の問題は改善しておらず、むしろ一段と深刻になっています。「60日以内」という表明が実行されたかどうかは、最終的にはサプライヤーの口座に代金が実際に入金された日を基準に判断すべきです。
