自動車事業に逆風、ロボット事業の評価額は63億ドル XPeng、「フィジカルAI」に賭ける

 XPeng(小鵬集団)は8月24日、2026年上期決算を発表しました。売上高は前年同期比3.8%減の327億8,000万元、純損失は同173.4%拡大の31億2,000万元となりました。自動車の納車台数は約16万6,000台で、同15.8%減少しました。

 決算発表後、XPengの米国株は8月24日に8.53%下落し、香港株も翌25日に9.19%下落しました。

 一方、自動車事業とは対照的な動きを見せているのがロボット事業です。XPeng傘下のヒューマノイドロボット事業は決算発表と同じ日に、初回の資金調達で9億ドル超を調達したと発表しました。調達後の企業評価額は63億ドルに達しました。

 今回の資金調達はIDGキャピタルが主導し、Gaorong Venturesが参加したほか、テンセントとアリババが戦略投資家として加わりました。XPengは引き続き同事業の支配権を維持します。

 資本市場では、自動車事業とロボット事業を切り分けてXPengの企業価値を評価する動きも出ています。証券関連メディアが報じたシティグループの試算によると、XPeng全体の企業価値からロボット事業の評価額を差し引いた場合、自動車事業の潜在的な評価額は約65億ドルとなり、ロボット事業の63億ドルとほぼ同水準になります。

 つまり、市場は現在、XPengを二つの異なる尺度で評価していることになります。自動車事業では販売台数や粗利益率、収益力が重視される一方、ロボット事業の価値は、技術力や将来の事業化に対する期待に大きく左右されています。

 XPengも近年、こうした事業転換の方向性を明確にしています。中国語の社名を「小鵬汽車」から「小鵬集団」に変更し、自社の事業領域を「フィジカルAI」へと拡大しました。現在は、スマートカー分野で蓄積してきたTuring AIチップ、VLA大規模モデル、センシングシステムに加え、生産やサプライチェーンのノウハウをヒューマノイドロボット「IRON」やRobotaxiに応用しようとしています。

 8月27日には、第2世代VLA大規模モデルのアップデートを発表するとともに、3枚目となるTuring AIチップの起動に成功したことを明らかにしました。IRONには3枚のTuring AIチップを搭載し、端末側の実効演算性能は2,250TOPSに達します。センシング技術にも、同社の高度運転支援システムで培った技術を採用しています。

 計画では、IRONは2026年末に量産を開始し、2027年から法人顧客向けに納入する予定です。当初は店舗や各種施設などへの導入を想定しています。

 ただ、自動車分野で培った技術をそのままロボットの商品力に転換できるとは限りません。スマートカーでは主に周囲の認識、走行経路の策定、車両制御などが求められますが、ヒューマノイドロボットには、物をつかむ、運ぶ、ねじを締めるといった精密な作業も必要です。そのため、器用な動作が可能なロボットハンドや力制御、ロボット専用データ、部品の信頼性など、自動車とは異なる技術的課題への対応が求められます。

 コストも事業化に向けた課題です。従来型IRONのコストは100万元を超えていましたが、XPengは将来的に10万~20万元程度まで引き下げることを目指しています。そのためには、主要部品のコスト低減に加え、量産規模を拡大して1台当たりのコストを引き下げる必要があります。

 XPengは現在、二つの事業が大きく異なる局面にあります。自動車事業は依然として最大の収益源であるものの、販売台数や収益、キャッシュフローに圧力がかかっています。一方、ロボットはまだ本格的な売上を生み出していないにもかかわらず、自動車事業に迫る規模の企業価値が付けられています。

 もっとも、XPengにとってロボットは自動車事業に代わる存在ではありません。少なくともIRONが本格量産に入り、独自に収益を生み出せるようになるまでは、自動車事業が研究開発やサプライチェーン、生産体制を支える基盤であり続けます。

 ロボット事業の63億ドルという評価額は、市場の将来への期待を反映したものです。XPengにとって今後の焦点は、過去10年以上にわたってスマートカー分野で蓄積してきた技術と生産ノウハウをロボットへと移植し、新たな成長事業として確立できるかどうかです。