GAC AIONの配車サービス車両で電池不具合相次ぐ 大量の既販車で今後顕在化する安全リスク

 中国新華社系のニュースサイト「新華網」は7月14日、「動力電池の新国家標準施行、安全基準を一段と厳格化 既販車の不具合への対応が課題」と題する記事を掲載し、CALB(中創新航)製の177Ahリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を搭載した、ある自動車メーカーの事業用車両で、動力電池の不具合が相次いでいることを初めて明らかにしました。不具合は主に走行距離15万~25万キロの車両で発生しており、航続距離の急減や絶縁異常、出力制限、走行中の電源喪失のほか、セルの膨張や液漏れなどが報告されています。

 新華網はメーカー名を明らかにしませんでしたが、自動車苦情サイト「車質網」や消費者苦情サイト「黒猫投訴」などには、関連する苦情が100件以上寄せられています。車質網が2026年7月1~18日に受け付けた動力電池に関する関連苦情だけでも、182件に上りました。対象車種は主にGAC AION(広汽埃安)の「AION S Plus」「AION S魅580」「AION S MAX」で、車両の多くは2022~2023年に生産され、いずれもCALB製の177Ah LFP電池を搭載しています。

 複数の車両の検査結果によると、衝突や浸水などの外的要因を除外したうえで、セルの膨張や液漏れ、安全弁の破損、セル間の電圧差の拡大などが確認されています。ただし、これらの不具合がセルの設計や製造品質のばらつき、あるいは別の要因によるものかについては、今後の調査を待つ必要があります。

 GAC AIONは7月18日、CALB製の177Ah電池を搭載した一部の事業用車両で不具合が発生していることを認め、対象車両の動力電池保証を従来の「8年または15万キロ」から「8年または30万キロ」に延長すると発表しました。異常を検知した車両については無料点検を実施し、その結果に応じて無償修理またはバッテリーパックの無償交換を行います。修理に5日を超える期間を要し、営業に支障が生じた場合は、関連規定に基づいて車両所有者に補償金を支給します。

 CALBも、対象車両の所有者がサービス拠点で無料点検を受けられるようにし、検査結果に応じて無償修理や保守サービスを提供すると表明しました。現時点で両社は、保証期間の延長と無償点検・修理で対応しており、リコール計画は発表していません。

 AION Sは、GAC AIONが配車サービス市場を開拓するうえで主力となった車種です。2023年に中国で新たに登録された新エネルギー車の配車サービス車両は74万台で、このうちGAC AIONは約22万台と、メーカー別で首位でした。同年のAION Sの販売台数は約22万900台で、配車サービス向けが72%を占めました。

 CALBは、GACグループにとって主要な電池供給会社です。GACグループは2022年、CALBから80億5,000万元(約1,690億円)相当の動力電池を調達し、この取引額はCALBの売上高の約40%を占めました。2023年もGACグループ向けの売上高は約77億7,000万元で、全体の3割近くに達しました。

 バッテリーパックの交換費用が高いことも、対応を難しくしています。販売価格12万元の電気自動車(EV)を例にすると、バッテリーパック全体の交換には7万~8万元程度かかります。対象車両が多数に及んだ場合、自動車メーカーと電池メーカーの双方にとって大きな負担となります。

 近年は、Li Auto(理想汽車)やBYD、Zeekr(極氪)なども、動力電池や関連システムの不具合を理由にリコールを実施しています。今回のAION Sの不具合がリコールの要件に該当するかどうかは、現時点では明らかになっていません。中国では自動車をリコールする場合、法律に基づき、国家市場監督管理総局への届け出が必要です。このため、調査結果が公表されるまで、両社は保証期間の延長や無料点検、バッテリーパックの交換などで対応しています。

 中国公安部によると、2022~2025年に中国で新たに増加した新エネルギー車は3,000万台を超えました。動力電池の新たな国家標準は2026年7月に施行されましたが、施行前に登録された車両には遡って適用されません。使用中の動力電池に対する検査の強化、不具合の責任範囲の明確化、アフターサービス体制の整備が業界の課題となっています。

 動力電池の専門家は、セルの膨張が相次いだ背景には、セル設計の検証不足や製造上の品質問題がある可能性を指摘しています。新エネルギー車の普及初期には、事業用車両と自家用車の間で、動力電池の開発、試験、保証基準にほとんど違いがなく、走行距離20万キロを超える使用を想定した特別な試験も一般的ではありませんでした。一方、配車サービス車両は自家用車に比べて充電頻度と動力電池の充放電回数が大幅に多く、より長い耐用期間が求められます。

 中国で普及初期に販売された新エネルギー車の走行距離が伸び、保証期間の満了を相次いで迎えるなか、既販車に搭載された動力電池の安全性と保証をめぐる問題への関心が高まっています。

48

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です