「国民車」ジェッタがEV時代に再出発 初の純電動セダン「M6」で復活を狙う

 10月22日、一汽フォルクスワーゲン(一汽VW)傘下の「ジェッタ(捷達、JETTA)」ブランドは、初の電気自動車(EV)となるセダン「M6」を発売しました。465 Pro、555 Max、555 Ultraの3グレードを設定し、価格はそれぞれ7万9,800元、8万9,800元、9万9,800元です。

 新型車はミッドサイズのEVセダンで、フロントにシングルモーターを搭載し、最高出力113kWと145kWの2種類を用意しています。バッテリー容量は42.9kWhと51.9kWhで、CLTCモードの航続距離はそれぞれ465kmと555kmです。メーカー公表の最小電力消費量は100km当たり10.5kWhとなっています。

 最上位グレードの555 Ultraには、フォルクスワーゲンと中国の自動運転SOCサプライヤーである地平線(Horizon Robotics)の合弁会社「CARIZON(酷睿程)」が開発した運転支援システムを搭載し、都市部NOA、高速道路NOA、記憶駐車などの機能に対応しています。

かつての「国民車」からEVへの転換

 ジェッタはかつて、サンタナ、シトロエン・フーカン(富康)とともに、中国の国民的乗用車「老三様(御三家)」と呼ばれていました。高い信頼性、低い維持費、優れたコストパフォーマンスを強みに、中国での自家用車普及に重要な役割を果たしてきました。

 2019年には、VWの単一車種から一汽VW傘下の独立ブランドへと移行し、主に「VS5」「VS7」「VA3」などのエンジン車を販売してきました。2021年の販売台数は約17万台に達しましたが、その後は成長が鈍化し、2025年には11万8,000台まで減少しました。

 中国で新エネルギー車(NEV)の普及が急速に進み、BYD、吉利汽車(Geely)、零跑汽車(Leapmotor)などの中国メーカーが低価格帯の乗用車市場で存在感を強めるなか、エンジン車への依存度が高いジェッタは、事業転換を迫られています。

 2026年1月には「一汽大衆捷達汽車科技有限公司」を設立し、研究開発、生産、サプライチェーン、販売を一体的に手掛けるNEV事業体制への移行を開始しました。4月にはスマートEV市場への本格参入を発表し、NEV向けの新たなブランドロゴも公開しました。

 同ブランドは2028年までに新型車5モデルを投入する計画で、このうち4モデルをNEVとする方針です。

競争激化する10万元以下のEV市場、ジェッタは巻き返せるか

 今回発売されたM6は、ジェッタの電動化戦略を担う最初のモデルです。競争の激しい10万元以下のEV市場に参入し、VWの生産・品質管理体制と中国で開発されたスマート技術を組み合わせることで、BYD「秦PLUS EV」や五菱「星光」EVなどの競合車種に対抗する狙いです。

 VWグループにとっても、ジェッタの電動化は、中国のエントリークラスのNEV市場における商品ラインアップを補完する重要な取り組みとなります。

 ただし、10万元以下の市場は価格競争が激しく、利益率も低いのが実情です。ジェッタが長年培ってきたブランドの知名度や顧客基盤をEVの販売拡大につなげ、中国メーカーが優位に立つ市場で巻き返しを図れるか、今後の動向が注目されます。