中国の新エネルギー車、ますます大型化 「532」モデル相次ぐ、サイズ軍拡競争に限界も

 中国の新エネルギー車市場では、いま新たな「サイズ競争」が始まっています。

 今年に入ってから、全長5m超、ホイールベース3m前後またはそれ以上、全幅2m近くに達する大型の新エネルギー車が相次いで発売されています。9月に入ってからも、Epicland(奕境)X9、XPeng(小鵬)G9L、DENZA(騰勢)N9L、Aistaland(啓境)GX7、Luxeed(智界)RXなど10車種以上の大型モデルが集中して発売、あるいは予約販売を開始しました。かつては主に高級車に限られていた「532」サイズ、すなわち全長5m、ホイールベース3m、全幅2m前後という車体寸法が、いまでは20万元台、さらにはそれ以下の価格帯にも急速に広がっています。

 大型化は、もはや一部のフラッグシップ車だけに見られる現象ではなく、中国の新エネルギー車市場全体の傾向になりつつあります。一方で、自動車メーカーがより長く、より幅広く、より重い車体によって消費者を取り込もうとする一方、駐車スペースや都市道路、機械式駐車場が同じように「大型化」しているわけではありません。新エネルギー車の車体サイズ拡大に伴う弊害も、次第に明確になってきました。

全長5m、全幅2mが次第に一般化

 中国乗用車市場信息聯席分会(乗聯分会)の崔東樹氏が公表したデータによると、2026年1~8月に新たに発売された新エネルギー車のうち、全長5mを超えるモデルは83車種に達し、同期間に投入された新エネルギー車の78%を占めました。2024年は44%、2025年は55%だったことから、大型化が急速に進んでいることが分かります。

 大型車が急増する一方、小型の新エネルギー車は明らかに減少しています。今年1~8月に発売された全長4.5m未満の新エネルギー車はわずか2車種で、全体の2%にとどまりました。前年同期は13車種、8%でした。

 車は長くなるだけでなく、幅も広がっています。

 BYDの何志奇執行副総裁によると、2018年には中国市場で全幅1.9m以上の車種は全体の約10%にすぎませんでしたが、2026年1~7月には40%まで上昇しました。かつて「532」は数十万元から100万元を超える高級車に見られるサイズでしたが、現在では20万元台の車でも同様のサイズに達していなければ、市場では「小さい」と受け取られるケースも出ています。

 今年1~5月には、全長5m超、ホイールベース3m超、全幅1.997m超を基準とする「532」の新型および改良モデルが31車種に達し、2025年通年の約4倍に迫りました。

 同時に、車両重量も増えています。中国で販売される新車乗用車の平均車両重量は、2024年に1704kgに達し、2012年と比べて約400kg増えました。現在、主流の大型3列シート新エネルギーSUVでは、全長5.2m超、全幅2m近くが一般的になりつつあり、一部車種では車両重量が2.5tを超えています。

 中国の新エネルギー車の競争軸は、これまでの航続距離、スマートコックピット、運転支援から、車体サイズや室内空間へも広がりつつあります。

なぜ新エネルギー車は大型化しやすいのか

 新エネルギー車の大型化には、まず市場ニーズの変化があります。

 近年、中国では6人乗り、7人乗りSUVが急増しています。広い室内、3列シート、後席の快適性、積載能力などは、ファミリー層が実感しやすい商品価値です。特に大型の新エネルギーSUVが市場で受け入れられて以降、「車体が大きい、室内が広い、装備が充実している」という組み合わせが、高級感を分かりやすく表現する商品ロジックとして定着しつつあります。

 従来、大型SUVは価格が高く、購入層も限られていました。しかし、新エネルギー車専用プラットフォームや電池、モーター、電子装備の普及が進んだことで、大型車は20万~30万元の価格帯にまで下がり、一部では10万元台にまで進出しています。

 一方、「車を大きくする」こと自体も、自動車メーカーにとって分かりやすい競争手段の一つです。

 崔東樹氏は、現在の新エネルギー車が大型化する背景には、商品スペックで「競合を上回る」という狙いがあると分析しています。全長を数cm、ホイールベースを数十mm延ばすだけでも、「広い室内」「クラスを超えたサイズ」「同クラス最大級」といった宣伝文句に結び付けやすいためです。

 新エネルギー車特有の技術も、大型車を作りやすくしています。

 従来のエンジン車と比べ、モーターは低速域で大きなトルクを発生するため、車重増加による走行性能への影響を相対的に抑えやすくなります。また、EVプラットフォームでは長いホイールベースとフラットな床を生かして室内空間を拡大しやすいという特徴があります。

 さらに、自動駐車、リモート駐車、後輪操舵、ステア・バイ・ワイヤ、インテリジェントシャシーなどの技術進化によって、大型車が従来抱えていた「運転しにくい」「駐車しにくい」という問題も一定程度軽減されています。

 小鵬汽車の何小鵬会長は以前、中国の消費者がこれまで大型車を敬遠してきた理由として、価格が高いこと、道路や駐車スペースが狭いこと、そして運転しにくいことの3点を挙げています。しかし、新エネルギー車のコスト低下や自動運転、インテリジェントシャシーなどの技術進化によって、後者2つの問題は徐々に解消されつつあるとしています。

 商業的なメリットも、大型化を後押ししています。

 NIOの李斌会長は、大型車は一般的に高い粗利益を確保しやすく、新エネルギー車関連の制度も車両大型化を強く制限していないことから、自動車メーカーが大型車市場へ集中するのは、市場原理に基づいた合理的な選択だと述べています。

 つまり、現在の中国の新エネルギー車市場では、大型車は消費者の「グレードアップ」需要を満たすと同時に、自動車メーカーにとっても価格、ブランドイメージ、利益率を高めやすい商品になっています。

「大きさ」がメリットから負担へ

 問題は、自動車の大型化が、都市インフラの更新速度を大きく上回っていることです。

 現在も多くの都市駐車場は、従来のエンジン車を前提とした車両サイズで設計されています。北京などでは、地下駐車場や商業施設の直角式駐車区画で、隣接する区画の中心線間隔は約2.4mですが、左右の白線を除いた実際の有効幅は2.1~2.3m程度しかないケースが少なくありません。

 車両自体の全幅が2m近くなると、区画の中央に正確に駐車したとしても、左右に残る空間は十数cm程度です。さらに、ドアの厚みや柱、隣の車の駐車位置などを考慮すると、「車は駐車できても、人が降りられない」という状況が珍しくなくなっています。

 古い住宅団地では、問題はさらに深刻です。

 崔東樹氏のデータによると、都市部の標準的な駐車区画は約11.5㎡、すなわち5m×2.3m程度ですが、一部の古い住宅団地や旧市街では9~10㎡程度しかない駐車スペースもあります。

 一方、全長5m、全幅2mの大型新エネルギー車は、それだけで占有面積が約10㎡に達します。

 このため、車両と駐車区画がそれぞれ規格に適合していても、実際に組み合わせると使い勝手が悪くなるケースが生じています。

 一部のドライバーは、駐車スペースに入る前に同乗者を先に降ろし、その後、運転手だけで車を入庫する方法を取るようになっています。運転席側のドアを開けられない場合には、助手席側から降りるケースもあります。

 また、リモート駐車機能を利用し、人が車外に出た後に車だけを狭い駐車区画へ入れるユーザーもいます。

 本来、自動車の高度なスマート化を象徴する機能だったリモート駐車が、「大型車を停めた後に人が降りられない」という現実的な問題を解決するために使われ始めています。

 しかし、技術ですべてを解決できるわけではありません。機械式駐車場には、車長、車幅、車高、重量について明確な制限があります。自動駐車機能を備えていても、全幅2m超、重量2.5tを超える大型SUVでは、そもそも利用できない場合があります。

大型化は車重とエネルギー消費も増やす

 車体サイズの拡大がもたらす問題は、駐車だけではありません。

 崔東樹氏のデータによると、全長が10cm伸びるごとに、車両重量はおよそ30~50kg増加します。新エネルギー車では、車体サイズと重量の増加が電力消費量を押し上げ、最終的には航続距離にも影響します。

 全幅の拡大は、車体構造やシャシーの設計コストも増加させます。車体が広くなるほど、衝突安全構造、シャシーの耐荷重、タイヤ、サスペンション、ブレーキなども、それに合わせて強化する必要があります。

 新エネルギー車では、大型化による航続距離低下を補うため、より大容量の電池を搭載するケースも多くなります。しかし、電池容量を増やせば車両重量はさらに増えます。

 その結果、「サイズ拡大→重量増加→より大容量の電池が必要→さらに重量増加」という循環に陥りやすくなります。

 李斌氏も以前、新エネルギー車の過度な重量増加について警鐘を鳴らしています。電池を増やし続けて航続距離を確保する方法では、車両が重くなり続け、衝突時の運動エネルギーが大きくなるだけでなく、道路やタイヤへの負担も増えると指摘しています。

 大型車は、道路空間への影響も大きくなります。都市部の片側1車線道路、地下駐車場の通路、旧市街の狭い道路などでは、全幅2m近い車両が増えることで車両間の安全余裕が縮まり、すれ違いや右左折も難しくなります。

 したがって、「大きいほど安全」「大きいほど高級」という考え方には限界があります。

車は大型化、駐車場の規格も対応へ 「サイズ軍拡競争」はいつまで続くのか

 自動車大型化の問題が顕在化するなか、中国では関連規格の見直しも始まっています。

 2026年8月、市場監督管理総局と国家標準化管理委員会は、強制国家規格「自動車、トレーラーおよび連結車両の外形寸法、軸荷重および質量制限」(GB 1589―2026)を承認・公布しました。2027年7月1日から施行され、乗用車の最大幅は2.55mと定められています。

 ただし、この規格は車両の生産や公道走行における適法性を定めるものであり、このサイズに近い車が既存の都市駐車設備に問題なく適合することを意味するものではありません。

 駐車施設側でも見直しが始まっています。住宅都市農村建設部はすでに「都市駐車専項計画標準」の改定作業を開始しており、新エネルギー車のサイズ、重量、機械式駐車設備への適合性などが、これまで以上に重視される方向です。

 既存の駐車施設についても、一部では改修が始まっています。例えば、北京・西城区にある2003年完成の機械式駐車場では、改修によって駐車区画の幅を1.8mから2.05mへ拡大し、耐荷重も1.8tから2.3tへ引き上げました。

 しかし、多くの古い住宅団地では、土地スペース、建物構造、消防、所有権などの制約があり、単純に駐車区画を広げることで解決できる問題ではありません。

 このまま自動車の大型化が急速に進めば、最終的にその使いにくさや追加コストを負担するのは、消費者になる可能性があります。

 その意味で、中国の新エネルギー車市場は新たな課題に直面しています。

 航続距離競争、スマート化競争に続いて広がった「サイズ軍拡競争」を、どのように終わらせるかが問われ始めています。