トヨタ、次世代レクサスEVで中国現地調達を拡大 車体・電池分野で日系サプライヤーが受注苦戦

 トヨタが2027年秋に中国で生産を開始する予定の次世代レクサスEVで、中国現地のサプライチェーンからの部品調達が拡大しています。9月25日付の「日本経済新聞」によると、同モデルへの供給を目指していた複数の日系部品メーカーが中国のサプライヤーとの競争に敗れ、少なくとも車体や電池関連部品では、日系企業の受注が限定的となっています。

 この新型車は、トヨタが中国で先行生産する方針を決めた次世代EVです。トヨタは2027年秋から上海の新工場でレクサスブランドのSUVを生産する計画です。新世代車や新しい生産技術をまず日本で導入してきた従来の慣行を改め、中国で先行して生産します。

 新型車には、大型アルミ鋳造部品によって複数の車体部品を一体化する「ギガキャスト」が採用される予定です。当初の生産規模は月間約1,000台で、2028年以降は年間数万台まで拡大する計画とされています。

 トヨタは2025年2月、上海市金山区にレクサスのEVと電池を開発・生産する独資会社を設立すると発表しました。上海および長江デルタ地域に集積する自動車産業のサプライチェーンや物流網、人材、市場規模を活用し、中国でレクサスEVの研究開発から生産までを行う方針です。工場は2027年の稼働を予定しており、設立時に示された生産能力は年間約10万台です。

 今回注目されているのは、トヨタの中国での現地化が、研究開発や完成車生産だけでなく、部品調達にまで広がっている点です。

 日本経済新聞によると、トヨタ系部品メーカーは当初、日本で開発してきた技術を上海生産の新型車に採用することを期待していました。しかし、多くの案件で中国現地のサプライヤーが受注しているといいます。

 トヨタと取引する企業の幹部からは、中国で生産するSUVに日本の設備や技術が採用されるという話をほとんど聞かないとの声も出ています。特に車体や電池関連部品では、日系サプライヤーが中国の現地企業と入札で競合した結果、受注できた案件は限られているとされています。

 すでに公表されている案件の一つが、トヨタ社内で「761D」と呼ばれるレクサス向けプロジェクトです。

 中国の重慶海徳世拉索系統(集団)有限公司は今年2月、2025年の事業実績を振り返る新年メッセージの中で、「トヨタ・レクサス761Dプロジェクト」などの重要案件を受注したことを明らかにしました。同社は、自動車用コントロールケーブルやウインドーレギュレーター、ドアモジュール、電動ドア制御システムなどを手掛けています。

 ただし、重慶海徳世は完全な中国資本の企業ではありません。1995年に設立され、重慶利龍科技産業集団、日本のHI-LEX CORPORATION、日本の東工コーセンなどが出資する日中合弁の部品メーカーです。

 そのため、「761D」の受注は、トヨタが中国資本の企業だけに発注を切り替えていることを意味するものではなく、より正確には、中国国内に構築された現地サプライチェーンからの調達を拡大している動きとみるべきでしょう。

 こうした調達方式は、すでにトヨタの中国向けEVでもみられます。

 日本経済新聞は、広汽トヨタが2025年3月に発売した「鉑智3X(bZ3X)」についても、中国国内で生産された部品を大量に採用していると指摘しています。

 中国のNEV市場では激しい価格競争が続いており、トヨタにとっては、自社のEVと中国ブランド車とのコスト差を縮小する必要があります。中国のサプライヤーは価格だけでなく、開発スピードでも強みを持っています。また近年は、品質や技術力の面でも急速に競争力を高めています。

 こうした変化は、日本の自動車産業が長年維持してきたサプライチェーンの構造にも影響を与えています。

 従来、トヨタなどの日系自動車メーカーが海外進出する際には、長年取引してきた日系部品メーカーも現地に進出し、自動車メーカーを中心とした系列型のサプライチェーンを形成するケースが一般的でした。

 しかし、中国のNEV市場では、コスト、開発スピード、電動化や知能化技術などの競争力がサプライヤー選定でより重視されるようになっています。従来からの取引関係だけでは、受注を確保することが難しくなりつつあります。

 トヨタ自身も、中国側の開発チームの役割を拡大する方針を明確にしています。

 レクサス(上海)新能源有限公司の採用情報によると、同社はトヨタ本体とは独立した組織として、中国現地の人材を中心に、商品企画から開発、生産までを一貫して行い、中国の消費者向けEVの開発を進める方針です。

 このため、今回の次世代レクサスEVにおけるサプライヤーの変化を、単純に「トヨタが日本のサプライヤーを切り離している」あるいは「中核サプライチェーンを全面的に中国化している」と捉えるのは適切ではありません。

 より正確には、研究開発と生産の重心が中国へ移るのに合わせて、トヨタの調達方針も、従来の系列サプライヤーを中心とした仕組みから、中国現地のサプライチェーンの中でコスト、技術、開発スピードを基準にサプライヤーを選定する方向へと変化しているとみられます。

 長年トヨタ向けの受注に依存してきた日系部品メーカーにとっては、たとえトヨタに追随して中国に生産拠点を構えていたとしても、今後は中国企業や中国で事業を展開する現地サプライヤーと直接競争する必要があります。

 一方、トヨタにとって、2027年に上海で生産を開始する次世代レクサスEVは、中国で次世代EVを先行投入する初の重要プロジェクトであると同時に、同社のグローバルなサプライチェーン構造が今後どこまで変化していくのかを占う重要なケースとなりそうです。