アウディ、中国事業を再編 フォーリングスは一汽、上汽は「AUDI」純電動ブランドに特化

 10月26日、アウディ中国は、中国第一汽車集団(一汽)および上海汽車集団(上汽)とそれぞれ戦略協定を締結し、中国市場における「2ブランド・2パートナー」体制を正式に確立すると発表しました。

 今後、一汽アウディは、従来の四つの輪のエンブレム「フォーリングス」を採用したアウディブランドを全面的に担当し、エンジン車と新エネルギー車の両分野を展開します。一方、上汽アウディは、フォーリングスを使用しない「AUDI」の文字ロゴを採用したブランドに経営資源を集中し、高級スマートEV(電気自動車)市場に特化します。これにより、約10年にわたって続いてきた「南北アウディ」のブランドや販売網をめぐる競合関係は、大きな転換点を迎えます。

 新たな協定に基づき、一汽アウディはA6LやA5Lなどのエンジン車を引き続き展開するとともに、A6L e-tronやQ6L e-tronなどの新エネルギー車の投入を進めます。一方、上汽アウディは中国市場向けのAUDIブランドに注力します。同ブランドでは、すでに純電動モデルのE5 SportbackとE7Xを発売しています。

 事業移行を円滑に進めるため、上汽アウディは2027年末まで、A7LやQ6など既存のフォーリングスを採用したモデルの販売を継続できます。移行期間中は、対象車種のアフターサービスを継続し、顧客やディーラーの権益も保護されます。

約10年にわたる内部競合に終止符、ブランドの役割を明確化

 アウディと一汽の提携は1988年に始まり、長年にわたり、一汽アウディが中国市場におけるアウディブランドの中心的な役割を担ってきました。

2016年にはアウディと上汽が提携交渉を開始し、2021年に上汽アウディが正式に発足しました。その後、A7LやQ6などフォーリングスを採用したモデルを相次いで投入し、2つの合弁パートナーが同じアウディブランドを展開する体制が形成されました。

 しかし、南北アウディの間では、製品の位置付けや価格帯、販売チャネルが次第に重複し、内部競合が問題となっていました。同時に、中国の地場高級新エネルギー車ブランドが急速に台頭し、従来の高級車ブランドはスマート化・電動化への対応を迫られ、競争圧力が強まっています。

 こうしたなか、アウディと上汽は2024年11月、中国市場専用の新ブランド「AUDI」を共同発表しました。中国国内の研究開発基盤やサプライチェーンを活用し、スマートEVの開発と製品改良の迅速化を目指しています。

 今回の再編により、両社の役割分担が一段と明確になります。一汽アウディは従来のブランド力を生かし、エンジン車と新エネルギー車の両分野を展開する一方、上汽アウディはフォーリングスを採用した従来のアウディブランドの製品開発上の制約から離れ、中国のスマートEV市場に経営資源を集中します。

一汽はエンジン車とEVの両輪、上汽は中国市場向けスマートEVに特化

 今回の再編は、南北アウディ間の内部競合を減らし、経営資源の効率的な配分につながるとみられます。ただし、これによってアウディが中国市場で直面する課題が解消されるわけではありません。

 一汽アウディは、A6LやA5Lなどの主力エンジン車と、A6L e-tronやQ6L e-tronなどの電動モデルを柱に、高級車市場での事業基盤を維持する方針です。エンジン車事業の安定を図る一方、純電動モデルのスマート化を加速させる必要があります。

 一方、上汽アウディは、中国の消費者ニーズを重視した独自の製品開発を進めます。フォーリングスを使用しないことで、従来のグローバルモデルとの共通性に縛られず、車両デザインやコックピット、先進運転支援システム(ADAS)などを中国市場向けに最適化できる点が大きな特徴です。

 今回の「南北アウディ」の事業再編は、中国における事業戦略が、2つの合弁パートナーによる同一ブランドの展開から、異なる2ブランドによる差別化戦略へと転換することを意味します。

 2027年末の移行期間終了後、アウディが中国市場で競争力を回復できるかどうかは、今後投入する新型車の商品力やスマート化の水準、市場での販売実績にかかっています。