ファーウェイ系「鴻蒙智行」の販売が4カ月連続で減少、「五界」戦略が壁に直面、ファミリーSUV市場の成長余地も縮小

 ファーウェイ(Huawei)が主導する自動車ブランド連合「鴻蒙智行(HIMA:Harmony Intelligent Mobility Alliance)」の販売減少が続いています。11月1日に発表されたデータによると、鴻蒙智行傘下の問界(AITO)、智界(LUXEED)、享界(STELATO)、尊界(MAEXTRO)、尚界(SAIC Shangjie)の5ブランドの2026年10月の合計納車台数は3万3,537台となり、前月比10.5%減、前年同月の6万8,216台から50.8%の大幅減となりました。

 鴻蒙智行の納車台数は、今年6月をピークに4カ月連続で前月を下回っています。6月の5万624台から、7月は4万5,046台、8月は4万2,101台、9月は3万7,490台、10月はさらに3万3,537台へと減少しました。この4カ月間で月間納車台数は約33.8%減少しました。

 鴻蒙智行の累計納車台数はすでに160万台を突破しており、同社は全ブランドの平均成約価格が40万元(約800万円)を超えていることを強調しています。しかし、月間納車台数の減少が続いていることは、かつて急成長を遂げたファーウェイ主導の自動車ブランド連合が、新たな市場環境の変化に直面していることを示しています。

 一方、10月の零跑汽車(Leapmotor、リープモーター)の納車台数は前年同月比51%増の10万6,127台、小鵬汽車(XPENG)は同20%増の5万237台となり、小米汽車(Xiaomi Auto)も5万台を突破しました。中国の新エネルギー車(NEV)市場全体が成長鈍化の圧力に直面するなか、メーカー間の販売実績には明確な差が生じており、鴻蒙智行の販売減少を市場環境の悪化だけで説明することは難しい状況です。

「五界」のブランド数は増加したものの、販売台数は伸びず

 鴻蒙智行は当初、ファーウェイの技術力、ブランド力、販売チャネルを背景に、賽力斯(SERES、セレス)との協業によって問界ブランドを立ち上げ、中国の高級NEV市場への参入に成功しました。その後、ファーウェイは奇瑞汽車(Chery Automobile)、北京汽車(BAIC)、江淮汽車(JAC Motors)、上海汽車(SAIC Motor)とも相次いで提携し、智界、享界、尊界、尚界を展開しました。これにより、幅広い価格帯をカバーする「五界」のブランド体制が形成されました。

 この戦略は、異なる完成車メーカーの生産能力と製品ポジショニングを組み合わせることで、市場のカバー範囲を拡大し、販売規模の持続的な成長を実現することを狙ったものでした。

 しかし、足元の販売実績を見る限り、期待された規模拡大の相乗効果は十分に表れていません。

 賽力斯が発表した生産・販売速報によると、問界ブランドを担う賽力斯汽車の10月の販売台数は2万2,105台となり、前年同月比54.7%減少しました。また、奇瑞汽車が発表した智界ブランドの10月の販売台数は6,090台で、前年同月比52.5%減となりました。なお、両社が公表した販売台数と鴻蒙智行全体の納車台数は統計基準が異なるものの、主要提携ブランドが販売面で厳しい状況に直面していることがうかがえます。

 問題は、5ブランドがそれぞれ異なる市場ポジショニングを掲げながらも、SUV、MPV、高級ファミリーカーなどの一部セグメントで、製品特性や価格帯が重複している点にあります。消費者に提示される選択肢は増えたものの、各ブランドの差別化が必ずしも明確になっているわけではありません。

 中国のインターネット上では、こうした状況について「五界が成功すればするほど、五界全体が苦しくなる」という逆説的な見方も出ています。

 つまり、5ブランドが市場シェアを奪い合う「共食い」の構造になっており、これはビジネスモデルそのものに起因する問題だという指摘です。

 例えば、5ブランドのうち1つから爆発的なヒットモデルが登場した場合、本来は鴻蒙智行全体にとって好材料となるはずです。しかし、その新型車が獲得する顧客の一部は、他の4ブランドの潜在顧客と重なっている可能性があります。

 問界を好む消費者が必ずしも享界に魅力を感じるとは限らず、尊界を高く評価する消費者が尚界を購入候補に入れるとも限りません。ブランド間で価格帯や顧客層に違いがある一方、ファーウェイの技術やブランド力に魅力を感じる顧客層には共通する部分もあります。

 そのため、特定ブランドのヒットが必ずしも他ブランドの販売拡大につながるとは限らず、むしろ鴻蒙智行内部で顧客の奪い合いを引き起こす可能性があります。

 こうしたブランド間の競合は、5ブランド体制を拡大するほど顕在化する構造的な課題といえます。

理想汽車型ファミリーSUVの成長機会が縮小

 鴻蒙智行が直面するもう一つの構造的な問題は、初期の成功を支えた製品コンセプトの希少性が失われつつあることです。

 理想汽車(Li Auto)に代表される高級ファミリーSUVは、レンジエクステンダー(EREV)方式のパワートレイン、広い室内空間、6人乗りレイアウト、スマートコックピット、充実した快適装備などを特徴とし、中国のNEV市場に新たな成長分野を切り開きました。

 問界M7、M8、M9なども、こうした市場ニーズを取り込み、ファーウェイの高度運転支援技術やブランド力を組み合わせることで、高い競争力を確立してきました。

 しかし、近年の急速な市場拡大に伴い、この製品コンセプトは多くの自動車メーカーに採用されるようになりました。広い室内空間、快適性の高いシート、車載エンターテインメントシステム、高度運転支援機能などは急速に普及しており、消費者はより幅広いブランドや価格帯から、同様の機能を備えた車種を選べるようになっています。

 また、バッテリー電気自動車(BEV)の航続距離の延長や急速充電性能の向上により、航続距離への不安を解消するというEREVの従来の優位性も、一部で薄れつつあります。

 中国汽車流通協会乗用車市場情報分会(乗連会)のデータによると、2026年9月の中国のBEV乗用車の卸売台数は前年同月比18.3%増加した一方、EREV乗用車は同4.0%減少しました。NEV乗用車の卸売台数に占めるBEVの割合は67.6%に達したのに対し、EREVは7.0%にとどまりました。

 こうした変化は、高級EREV SUVの需要が全面的に減少していることを直接示すものではありません。しかし、EREV市場が従来のような高成長の恩恵を受けにくくなっていることを示唆しています。

 注目されるのは、この市場を切り開いた理想汽車自身も成長圧力に直面していることです。2026年10月の理想汽車の納車台数は2万9,025台となり、前年同月比8.6%減少しました。

 同月の販売には主力BEVモデルのモデルチェンジなどの影響もありましたが、理想Lシリーズ(Li L Series)が直面している競争の激化は、高級ファミリーSUV市場が製品コンセプトの革新によって成長する段階から、製品競争力とコスト競争力が問われる段階へと移行しつつあることを反映しています。

 鴻蒙智行にとって、これはEREV方式、ファミリー向けの快適装備、ファーウェイのスマート技術などを組み合わせた従来の差別化戦略が、より多くの競合メーカーから挑戦を受けることを意味しています。

ファーウェイの技術的優位性は健在も、「五界」モデルに衰退の兆し

 市場競争の変化に加え、鴻蒙智行内部の協業体制の調整も、今後の事業運営に不確実性をもたらしています。

 ファーウェイの高度運転支援技術などを採用する自動車ブランドが増加するにつれ、「ファーウェイの技術を搭載している」という特徴だけでは、市場で持続的な競争優位を確保することが難しくなっています。

 鴻蒙智行にとって真の課題は、ファーウェイの技術プラットフォームを共有しながら、5ブランドがそれぞれ明確な製品ポジショニング、独自のブランド価値、コスト競争力を確立できるかどうかにあります。ブランドや車種の数を増やすだけでは、市場シェアの拡大につながるとは限りません。

 現時点では、数カ月連続の販売減少だけで「五界」モデルの失敗を断定することはできません。しかし、販売低迷が長期化していることは、同モデルがすでに成長の限界に直面し、衰退局面に入り始めた可能性を示唆しています。

 鴻蒙智行が直面している課題は、もはや新型車をいかに多く投入するかではなく、既存ブランドと既存車種の競争力をいかに高めるかという問題に変わりつつあります。

 今後の焦点は、5ブランドの市場における役割分担を明確にし、不必要な製品の重複を減らすとともに、販売チャネルや経営資源の配分を最適化し、製品開発・改良の効率化とコスト管理能力の向上を図れるかどうかにあります。