EVの実航続距離は公称値の7割、CLTC基準は中国NEVを「国際的な笑いもの」にするのか

 8月21日、著名な自動車評論家の顔宇鵬氏は微博(Weibo)への投稿で、CLTCの航続距離基準を「中国の新エネルギー車(NEV)業界にとって最大の隠れみの」と痛烈に批判しました。

 顔氏によると、CLTCに基づく公称航続距離を日常の走行環境で実現することはほぼ不可能で、一般的なユーザーが実際に走行できる距離は公称値の70~80%程度にとどまります。厳しい寒さや猛暑、高速道路、山岳路などの条件下では、航続距離の達成率が60%を下回ることもあるといいます。

 顔氏は、こうしたデータが消費者の誤解を招きやすいと指摘しています。特に、中国のNEVが本格的に海外進出を進めるなか、CLTCが「国際的な笑いもの」となり、中国車の海外におけるイメージや評判を損なう可能性があると警鐘を鳴らしました。

 CLTCは「China Light-duty Vehicle Test Cycle(中国軽量車走行試験サイクル)」の略称で、2021年に正式導入されました。中国の41都市、5,000台以上の車両から収集した実走行データを基に策定されており、中国の都市部に多い低速走行や渋滞、頻繁な発進・停止といった道路事情を反映することを目的としています。

 CLTCの試験時間は1,800秒、走行距離は約14.48kmで、平均速度はわずか28.96km/h、最高速度は114km/hです。低速・中速走行が中心で、全体の2割以上を停車時間が占めるうえ、エアコンを使用せずに試験を行います。

 こうした試験条件は、バッテリー電気自動車(BEV)に有利に働きます。停車中は走行用の電力をほとんど消費せず、頻繁な減速時には回生ブレーキによって電力を回収できるためです。一方、高速走行や低温環境、冷暖房の使用といった航続距離を大きく縮める要因は、十分に反映されていません。

 このため、実際の走行環境ではCLTC航続距離を大幅に下回るケースが少なくありません。乗員や荷物を満載し、エアコンを使用して高速走行した場合、一部車種の実航続距離は公称値の60~70%程度にとどまります。低温環境で暖房を使用しながら高速走行すると、50~60%まで低下することもあります。極端な例では、CLTC航続距離620kmの車両が、氷点下10度の環境で約250kmしか走行できず、達成率が約40%にとどまったケースもあります。

 顔氏も、CLTCの数値そのものが実現不可能だとはしていません。ただし、その性質は「最も理想的な条件下での航続距離」に近く、自動車の0~100km/h加速タイムと同様、理論上は達成できても、多くのユーザーが日常的に再現できるものではないと指摘しています。

 欧州では主にWLTP、米国ではEPA基準が採用されており、一般的にCLTCよりも保守的な結果が出ます。テスラ「Model 3」を例に挙げると、EPA航続距離は439km、WLTCは513km、CLTCは606kmです。同じ車両でも、試験基準が変わるだけでカタログ上の航続距離に約170kmもの差が生じます。海外メディアの分析では、同一車種のCLTC航続距離がEPA基準を30%上回る場合があるとされています。

 中国車がCLTCの数値を掲げて世界市場へ進出すれば、こうした落差を単に「試験基準の違い」だけで説明することは難しくなります。海外の消費者が各試験基準の技術的な違いを詳しく調べるとは限りません。公称値と実際の航続距離に大きな差があれば、「中国製EVは航続距離を水増ししている」という印象を持たれる恐れがあります。