10月28日、フォルクスワーゲン(VW)グループ中国は、安徽省合肥市で初の技術発表会「テクノロジーデー」を開催し、中国で自主開発した統合技術体系「VEGA」を正式に発表しました。VEGAは、車両プラットフォーム、電子・電気アーキテクチャー、高度運転支援システム(ADAS)の3つの中核技術を統合したものです。
同時に、VWは従来の「中国で、中国のために(In China, for China)」という戦略を「中国に根ざし、世界へ(In China, Beyond China)」へと発展させ、中国で開発した車両プラットフォームやインテリジェント技術を海外市場にも展開する方針を明らかにしました。
VWによると、VEGAは車両開発からソフトウェア、運転支援までを網羅する、中国で初めて構築した独自の統合技術体系です。同社は、中国市場に進出する外資系自動車メーカーとして、こうした現地開発の統合技術体系を保有する唯一の企業だとしています。
2つの車両プラットフォームで主力市場から高級車まで対応
VEGAの基盤となるのは、中国で開発した「CMP」と「CSP」の2つの車両プラットフォームで、いずれも電子・電気アーキテクチャー「CEA」と密接に統合されています。
CMPは主にAセグメントの量販車向けで、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)に対応します。EVのCLTCモードでの航続距離は600kmを超え、最も電費性能の高い仕様では100km当たりの電力消費量が約11kWhとなります。バッテリー残量30%から80%までの充電時間は25分以内です。
一方、CSPはフルサイズの高級EVやレンジエクステンダー式EV(EREV)向けに開発されました。EVの航続距離は800km超を目標とし、EREVの総合航続距離は1,500kmを超えます。ピーク電圧850V超の高電圧システムを採用し、最短13分でバッテリー残量10%から80%まで充電できます。
安全面では、両プラットフォームとも中国の国家基準を上回る検証体系を採用しています。VWによると、重大な衝突事故が発生した場合、5ミリ秒以内にモーターの駆動力を遮断し、5秒以内に高電圧バッテリーシステムの電圧を安全な水準まで低下させることができます。
CEA電子・電気アーキテクチャーをエンジン車にも展開
CEAはVWが中国で開発した次世代電子・電気アーキテクチャーで、コンパクトカーからフルサイズ車まで幅広い車種に対応し、EVだけでなくエンジン車などにも適用できます。3カ月ごとに主要なソフトウェア機能を更新し、2年ごとにアーキテクチャーを全面的にアップグレードする計画です。
2026年には、中国で生産する「与衆06」「与衆07」「ID. ERA 5X」「ID. AURA T6」「ID. AURA L5」のEV5車種にCEAを採用しています。2027年にはPHEVとエンジン車にも適用範囲を拡大するとともに、中央演算システムの統合を進め、レベル3の自動運転に対応する技術基盤を整備します。
さらに、2029年には「CEA 3.0」を導入し、車両全体でAIエージェントを活用できるようにするとともに、レベル4の自動運転技術の開発を支える計画です。
VWはまた、独自開発したAIツールチェーン「C-Brain」をソフトウェア開発やテスト、故障診断に導入しています。同社によると、一部のソフトウェア機能テストに要する時間は従来の2~3日から2~3時間に短縮され、作業効率は最大36倍に向上しました。
独自開発の運転支援システムを新型7車種に搭載へ
運転支援分野では、中国の地平線(Horizon Robotics)との合弁会社「酷睿程(CARIZON)」を通じて開発した、レベル2++の高度運転支援システム「Hyper Sense 8(HS8)」を発表しました。
HS8は都市部や高速道路でのナビゲーション支援運転(NOA)と、さまざまな駐車場面に対応する駐車支援機能を備えています。2026年には、VW傘下の中国合弁完成車メーカー3社が投入する新型電動車7車種に搭載し、その後も適用車種を拡大する計画です。
また、VWは独自のAIワールドモデル「GAIA 2.0」も開発しました。同システムは、実際の走行距離に換算して1日当たり500万km相当の運転支援安全シミュレーションを実施でき、約3,000万件の実道路走行シーンのデータを活用して性能を改善します。
VWは2027年までにレベル3の自動運転機能について技術面での準備を整える計画で、すでに合肥市でレベル3自動運転の公道試験許可を取得し、実証試験を開始しています。
中国開発技術を海外へ輸出、南米で先行導入
VEGAの発表に合わせ、VWグループは中国の研究開発拠点をグローバル事業に活用する方針を一段と明確にしました。
現在、中国で生産されたVWブランドとジェッタ(捷達)ブランドの車両は、中東、中央アジア、アフリカの一部市場への輸出を開始しています。2026年末までにメキシコ、エジプト、ベトナムなどにも輸出先を拡大し、年間で計7市場への輸出を実現する計画です。
技術面でも、中国で開発したCMPプラットフォームとCEA電子・電気アーキテクチャーを海外に展開し、現地での車両開発・生産に活用します。2030年までに南米を中国開発技術の最初の海外導入地域とし、その後、南アフリカなどへの展開も検討します。
これまで、VWの中国における研究開発は、主に中国市場のニーズへの対応を目的としてきました。今回の戦略転換により、中国は重要な販売・生産拠点であるだけでなく、海外市場向けの車両プラットフォームや電子・電気アーキテクチャー、運転支援技術を開発する拠点としても位置付けられることになります。
中国市場での競争が激化し、従来の外資系ブランドが電動化・知能化への対応を迫られるなか、VWは現地の研究開発体制を強化し、開発期間の短縮やコスト削減を通じて、中国事業と海外市場の競争力を高める狙いです。ただし、中国で開発した技術が海外市場でも競争力を発揮できるかどうかは、今後の製品投入と市場での評価を見極める必要があります。
VWの統合技術体系「VEGA」

画像:VW中国
