高速道路で追突、衝突10メートル手前でNOAが突然解除 運転支援の「危機直前の引き継ぎ」に安全性と責任を巡る議論

 中国の国慶節連休中、滬昆高速道路(上海~昆明)で発生した追突事故をきっかけに、自動車の運転支援システムの安全性や事故時の責任分担が再び議論の的となっています。ナビゲーション運転支援(NOA)を使用して時速約120kmで走行していた乗用車が、前方の大型トラックまでわずか約10メートルに迫ったところで、運転支援システムが突然解除され、ドライバーに運転操作の引き継ぎを求めました。しかし、車間距離が短すぎたため、ドライバーは間に合うようにブレーキをかけることができず、トラックに追突しました。

 今回の事故で問題視されているのは、運転支援システムが衝突を回避できなかったことだけではありません。なぜ危険が目前に迫るまでシステムが作動を続けていたのか、また、ドライバーに十分な引き継ぎ時間が与えられていたのかという点にも議論が集中しています。

残りわずか10メートル、ドライバーにはほとんど反応する余裕がなかった

 10月6日付の中国テクノロジーメディア「快科技」によると、事故は貴州省安順市内の滬昆高速道路で発生しました。高速道路をNOA機能を使用して走行していた乗用車が前方の大型トラックに接近した際、システムが突然解除され、ドライバーに運転操作の引き継ぎを求めました。このとき、車両の速度は約120km/hで、前方のトラックとの距離はわずか約10メートルでした。

 ドライバーは、システムが解除された時点でトラックとの距離があまりにも近く、ブレーキをかける時間がなかったと話しています。その後、乗用車はトラックに追突しました。後続の報道によると、この事故による被害は車両の損傷にとどまったということです。

 時速120kmは、車両が1秒間に約33.3メートル進む速度です。通常、ドライバーが危険を認識してから実際にブレーキ操作を行うまでには一定の認知・反応時間が必要であり、ブレーキが作動して減速を開始した後も、車両が完全に停止するまでには相応の距離が必要です。

 交通安全技術者による過去の研究では、一般的な乗用車が時速110kmで走行している場合、乾燥した路面での制動距離にドライバーの反応距離を加えると、完全停止までに約113メートルを要するとされています。つまり、障害物に接近してからシステムがドライバーに運転操作を引き継ぐよう求めても、すでに衝突を回避する余地が失われている可能性があります。

 ただし、実際に衝突するまでの時間は、前方車両の速度や両車の相対速度、ブレーキの作動状況などによって異なるため、車間距離が10メートルという情報だけでは正確に算出できません。それでも今回の事故は、高速道路での運転支援における危険認識、警告、ドライバーへの運転引き継ぎの一連のプロセスに、安全上の問題が潜んでいる可能性を浮き彫りにしました。

 現時点では、事故車両のメーカーや具体的な車種、システムの作動データなどは公表されておらず、交通警察による最終的な事故責任の認定も明らかになっていません。そのため、システムに不具合があったのか、事前に警告が発せられていたのか、ドライバーが周囲への注意を維持していたのかについては、今後の調査を待つ必要があります。

システムの突然の解除は安全措置か、それとも責任転嫁か

 近年、衝突の直前に運転支援システムが突然解除され、ドライバーに運転操作の引き継ぎを求める事例が相次いで報告されています。一部の事故では、システムが警告を出してから解除されるまでの時間が極めて短く、ドライバーが運転操作を引き継ぐ前に衝突が発生しています。

 10月5日付の経済メディア「第一財経」は、同済大学の元教授、朱西産氏が以前指摘した内容を紹介しました。朱氏によると、高速道路でドライバーに十分な引き継ぎ時間を確保するには、運転支援システムに高い周辺環境認識能力が求められます。時速100km以上で走行する場合、危険を10秒前に検知するには、数百メートル先の潜在的な障害物を認識する必要があるといいます。

 朱氏の研究チームが過去に実施したシミュレーター試験では、システムが警告を出してから事故が発生するまでの平均時間はわずか1.7秒だったのに対し、ドライバーが警告を認識してから実際に有効な運転操作を引き継ぐまでには、平均約2.3秒を要することが分かりました。これは、一部の緊急場面では、システムが確保した引き継ぎ時間が、ドライバーの実際の反応に必要な時間を下回っている可能性があることを意味します。

中国、運転支援の安全要件を強化する新基準を2027年から施行

 NOAなどの運転支援機能が急速に普及するなか、中国では安全規制の強化が進められています。

 2026年6月27日、中国の国家市場監督管理総局と国家標準化管理委員会は、強制国家標準「インテリジェント・コネクテッドカーの複合運転支援システムに関する安全要求」(GB 47955—2026)を公布しました。2027年1月1日から施行される同基準は、単一車線・複数車線での運転支援やNOAなどを対象に、システムの安全性、ドライバーの状態監視、危険警告、データ記録などの要件を定めています。特に、ドライバーが警告に応じない場合には、システムがリスク軽減措置を講じることが求められます。

 また、L3・L4レベルの自動運転を対象とする「インテリジェント・コネクテッドカーの自動運転システムに関する安全要求」(GB 44721—2026)も7月30日に公布され、2027年7月1日から施行されます。こちらはシステムの安全性能、運転操作の引き継ぎ、危険を最小限に抑えるための対応策などを規定しています。

 両基準は、運転支援・自動運転システムの機能や性能だけでなく、安全な作動やドライバーとの連携、メーカーによる安全確保を重視するものです。

ドライバーには安全運転義務、システムの解除だけでメーカーは免責されず

 法的責任について、中国ではL2レベルの運転支援とL3以上の自動運転を区別しています。

 2026年2月13日、最高人民法院(最高裁判所)は指導的判例第271号を公表し、運転支援機能を使用していても、ドライバーには安全運転の義務があることを明確にしました。

 一方、9月7日に公表された「人工知能関連紛争案件の適法な審理に関する意見」では、車両の欠陥によって事故が発生した場合、メーカーや販売業者が相応の賠償責任を負うことが示されています。車両の欠陥とドライバーの過失が重なった場合には、双方がそれぞれ責任を負う可能性があります。

 また、裁判所は事故原因の解明に向け、メーカーなどに運転支援システムの作動記録の提出を求めることができます。衝突直前のシステムの作動状況、警告や解除のタイミング、ブレーキの作動状況などが、責任を判断する重要な証拠となります。

 さらに、8月25日に初めて審議された「道路交通安全法(改正草案)」には、自動運転機能の作動中に発生した交通違反について、車両メーカーまたは輸入業者を処分の対象とする規定が盛り込まれています。ただし、現時点では審議段階にあり、施行されていません。

 今回の追突事故は、システムが危険に対処できなくなった際、いかに安全に運転操作をドライバーへ引き継ぐかという課題を改めて浮き彫りにしました。NOAの普及が進むなか、危険認識や自動ブレーキの性能向上に加え、十分な引き継ぎ時間の確保が、自動車メーカーにとって重要な課題となっています。