米国防総省が中国企業を「中国軍事企業リスト(1260Hリスト)」に指定している問題を巡り、司法手続きに新たな動きが出ています。最近では、LiDAR(ライダー)メーカーのHesai Technology(禾賽科技)と、民生用ドローン大手のDJI(大疆創新)が相次いで控訴審で進展を得ており、いずれの訴訟も米連邦控訴裁判所が下級審に差し戻し、改めて審理するよう命じました。
米国時間8月18日、コロンビア特別区巡回控訴裁判所は、Hesaiが米国防総省による1260Hリストへの指定を不服として起こした訴訟について判断を示し、地方裁判所の従来の判決を取り消した上で、事件を差し戻しました。国防総省に対し、Hesaiを同リストに指定した手続きについて改めて整理・検討するよう求めています。
ただし、今回の判断によってHesaiが1260Hリストから直ちに除外されるわけではありません。控訴裁判所は、国防総省が2024年に行った指定そのものについては現時点で取り消していません。一方、国防総省が新たな最終判断を下す前に、指定の根拠とした機密扱いではない資料をすべてHesai側に開示し、同社に十分な反論・意見表明の機会を与えるよう求めました。
Hesaiは2024年1月、米国防総省によって初めて1260Hリストに指定されました。同社はその後、軍事関連事業との関係を否定し、同年5月に提訴しました。国防総省は2024年10月に一時Hesaiをリストから除外したものの、その2カ月後に再び指定しました。2025年7月には地方裁判所が一審で国防総省側の判断を支持したため、Hesaiが控訴していました。
Hesaiに先立ち、DJIが起こした同様の訴訟でも8月14日に進展がありました。コロンビア特別区巡回控訴裁判所は、一審裁判所が示した「DJIが中国の国防産業基盤に貢献している」との認定を取り消し、ワシントンD.C.の連邦地方裁判所に事件を差し戻しました。
控訴裁判所は、一審裁判所が国防総省の関連する非公開資料を確認しないまま、その他の資料を基にDJIが指定要件を満たすとの判断を独自に導き出した点について、審理の根拠に問題があったと判断しました。差し戻し審では、国防総省がDJIを1260Hリストに指定した際の事実関係や法的根拠を改めて精査する必要があります。
DJIは2022年から米国防総省の関連リストに指定されており、2024年、2025年、2026年に更新されたリストでも指定が継続しています。2024年10月には連邦地方裁判所に正式に提訴しましたが、2025年9月の一審では敗訴し、その後控訴しました。今回の差し戻しは、DJIにとって同訴訟における重要な手続き上の前進となりますが、同社が1260Hリストから除外されたことを意味するものではありません。
1260Hリストは、米国の「2021会計年度国防権限法」第1260H条に基づいて策定され、国防総省が企業の指定とリストの更新を行っています。同リストに指定された企業は、米政府の一部の調達案件や補助金、融資などで制限を受けるほか、企業イメージや事業活動への影響も懸念されます。
近年、同リストに指定される中国企業が増加する中、行政上の再審査や司法手続きを通じて国防総省の判断に異議を申し立てる企業も増えています。HesaiとDJIが今回、控訴審で一定の進展を得たことで、米裁判所が国防総省による指定手続きや証拠の妥当性をより厳格に審査する動きがうかがえます。ただ、両社はいずれも現時点で1260Hリストに残っており、最終的な結論は今後の差し戻し審に委ねられます。
