ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、トヨタなどで構成する米自動車イノベーション協会(Alliance for Automotive Innovation,AAI)はこのほど、米議会に書簡を送り、中国メーカーによる米国内での自動車の販売、生産、輸入を禁止する法律を早急に制定するよう求めました。規制対象には、中国企業が開発または供給する車載ソフトウェアとハードウェアも含めるよう要請しています。
現在、BYDや奇瑞汽車(Chery)など中国ブランドの乗用車は、米国市場に本格参入していません。AAIが今回の法制化で問題視しているのは、中国車の販売台数ではなく、中国車とそのサプライチェーンが将来的に米国市場へ進出する可能性です。
AAIのジョン・ボゼラ最高経営責任者(CEO)は、中国自動車メーカーが公的支援を受けながら低価格で販売を拡大し、欧州や東南アジアでシェアを伸ばしていると指摘しました。また、情報セキュリティー上の懸念にも言及し、中国製のソフトウェアや部品を搭載したコネクテッドカーが情報収集に利用される可能性があるとして、今会期中に関連法案を可決するよう議会に求めました。
米国はこれまでにも、関税や補助金の制限、コネクテッドカー規制を通じ、中国の自動車産業に対して複数の参入障壁を設けてきました。
2024年には、中国製電気自動車(EV)に対する関税を25%から100%へ引き上げ、車載電池と一部部品の関税も25%に引き上げました。また、インフレ抑制法(IRA)の「懸念される外国の事業体(FEOC)」規定により、中国製の電池部品や重要鉱物を使用した車両は、最大7,500ドルの購入税額控除を受けられません。
米商務省は2025年1月、コネクテッドカーに関する規則を最終決定しました。中国で設計、開発または供給された車両接続システムのソフトウェアやハードウェア、自動運転システム用ソフトウェアを搭載する乗用車の輸入と販売を禁止するもので、ソフトウェア規制は2027年モデル、ハードウェア規制は2030年モデルから適用されます。
トランプ氏の大統領再就任後も、これらの措置は維持され、輸入車と主要部品には25%の追加関税が課されました。複数の関税を合算すると、中国製EVに対する税率は135%以上に達する可能性があります。
中国ブランド車の米国販売がほぼゼロであるため、新たな法制化が中国の完成車輸出に与える短期的な影響は比較的限定的です。中国から米国への完成車輸出台数は、2024年が11万6,000台で、中国の自動車輸出台数全体の1.81%にとどまりました。2025年には、対米乗用車輸出台数が約7万1,000台まで減少しています。
一方、部品とソフトウェアへの影響は、より大きくなる可能性があります。2024年の中国から米国への自動車部品輸出額は182億6,000万ドルに達し、米国の自動車部品輸入額全体の約9.3%を占めました。
規制対象が車載通信モジュール、Bluetooth、Wi-Fi、セルラー通信、自動運転用ハードウェア、車載OS、データサービスにまで広がれば、完成車を生産していない中国企業も米国の自動車サプライチェーンから排除される可能性があります。敏実集団(MINTH)、拓普集団(Tuopu Group)、均勝電子(Joyson Electronics)、移遠通信(Quectel)のほか、華為技術(ファーウェイ)、百度Apollo、斑馬智行(Banma)なども影響を受ける可能性があります。
また、メキシコ、カナダ、ブラジルで生産された車両であっても、規制対象となる中国製ソフトウェアやハードウェアを搭載していれば、米国市場に投入できなくなる可能性があります。
AAIのメンバーにトヨタが含まれていることも、メディアの注目を集めています。トヨタの2026年上半期の中国販売台数は69万4,700台と、前年同期比17.1%減少しました。一方、米国販売は0.5%増の124万3,400台でした。トヨタにとって中国市場のシェアと重要性が徐々に低下する一方、米国は引き続き最も重要な販売・収益市場の一つとなっています。
現在、米上院と下院では、それぞれ関連法案の審議が進められています。AAIの要請が最終的に法律として成立した場合、中国からの完成車輸出に対する直接的な影響は限定的とみられますが、中国製の自動車部品や車載ソフトウェア、スマートカー関連技術が米国市場に参入する道は、事実上閉ざされる可能性があります。
