EU(欧州連合)は、2024年に中国製電気自動車(EV)に追加の反補助金関税を課したのに続き、中国製ハイブリッド車にも貿易制限を拡大することを検討しています。中国車の輸入急増による欧州の自動車産業への競争圧力を抑える狙いがあります。
10月7日付のBloombergの報道によると、欧州委員会は中国製ハイブリッド車を対象とした貿易セーフガード(緊急輸入制限措置)を検討しています。その一案が「関税割当制度」で、一定の輸入数量までは現行の関税を適用し、割当数量を超えた分にはより高い関税を課すことで、輸入規模を抑制する仕組みです。
現時点では、具体的な割当数量や関税率、実施時期は決まっておらず、EUは今後の中国との貿易交渉の結果に応じて、措置の内容を調整する可能性があります。
EVへの追加関税で中国メーカーがPHEVにシフト
EUは2024年10月末、中国製EVに対する追加の反補助金関税を正式に導入しました。従来の基本輸入関税10%を含めると、一部メーカーに適用される税率は最大45.3%に達します。一方、プラグインハイブリッド車(PHEV)は追加関税の対象外で、基本的に10%の輸入関税が適用されています。
この関税の違いを背景に、中国メーカーは欧州市場での車種構成を見直し、PHEVの投入を加速させました。比較的低い関税負担と価格競争力を生かして、販売を拡大しています。
中国製ハイブリッド車の欧州向け輸出も急増しています。英紙Financial Timesによると、EUの中国からのハイブリッド車輸入台数は、2024年10月の約3,800台から2026年7月には約5万台へと、12倍以上に増加しました。
2026年8月には、中国ブランドの欧州新車市場におけるシェアが12%近くに達し、PHEV市場では約3分の1を占めました。
この動きを象徴するのがBYDです。2026年5月、BYDはドイツのPHEV市場で販売台数首位となり、月間新規登録台数は4,290台に達しました。「ATTO 2 DM-i」「SEAL U DM-i」「SEAL 6 DM-i Touring」などが欧州市場での主力モデルとなっています。
EU、輸入制限で対中貿易赤字の縮小を狙う
今回EUが検討している中国製ハイブリッド車の輸入制限は、自動車産業だけの問題ではなく、対中貿易政策全体の見直しとも関係しています。
現在、EUの対中貿易赤字は1日平均10億ユーロを超えています。EUは一部商品の輸入制限や、欧州企業の中国市場へのアクセス改善などを通じて、貿易不均衡の是正を目指しています。
欧州委員会は、ハイブリッド車を新たな貿易制限措置の試験的な対象とし、期待する効果が得られれば、貿易不均衡が問題視される他の産業にも適用を広げることを検討しています。
注目されるのは、ドイツとフランスの立場が次第に近づいていることです。ドイツはこれまで、自国の自動車産業が中国市場に大きく依存していることから、貿易制限の拡大に慎重でした。しかし、中国車の欧州市場での競争力が高まるなか、貿易防衛措置の強化を巡って、両国の足並みがそろいつつあります。
現在、EUのマロシュ・シェフチョビッチ通商担当委員は北京を訪問し、中国の王文濤商務部長と協議を進めています。EUはこれに先立ち、中国側にハイブリッド車の輸出自主規制を求めましたが、中国側はこれに反対しています。今回の交渉結果が、今後の輸入制限措置の具体的な内容を左右する可能性があります。
輸入制限は輸入制限は中欧貿易戦争の引き金になるか
第一に、輸入制限は中国メーカーによる欧州現地生産をさらに加速させる可能性があります。
BYDはハンガリーで完成車工場を建設しているほか、トルコでの生産拠点整備も進めています。奇瑞汽車(Chery)はスペインの現地企業との協力を通じて完成車生産を計画し、零跑汽車(Leapmotor)もStellantisグループとの提携を活用して、欧州での現地生産を推進しています。
EUが中国製自動車に輸入割当制限を導入した場合、原産地規則などの条件を満たす欧州現地生産車は、同様の制限を受けない可能性があります。このため、新たな措置は短期的に中国からの完成車輸出を抑える一方、中国メーカーによる欧州への投資や現地生産を加速させる可能性もあります。
第二に、中欧間の自動車貿易摩擦はさらに拡大する可能性がありますが、双方には交渉によって対立を解消する余地も残されています。
EUの対中貿易赤字が拡大し、ドイツとフランスの貿易防衛政策に対する立場も近づいていることから、今後EUがより多くの中国製品に制限措置を導入する可能性があります。これに対し、中国側もEUの具体的な措置に応じて対抗策を講じることが考えられます。
