10月8~9日、中国商務部の王文濤部長と欧州委員会のマロシュ・シェフチョビッチ通商・経済安全保障担当委員は、北京で中国・EU貿易投資協議メカニズムの第2回会合を開催しました。双方は貿易・投資や輸出管理などの分野で16項目の合意に達しました。このうち、自動車産業では、ハイブリッド車の貿易、EV(電気自動車)に対する反補助金関税、レアアースの輸出許可が主な焦点となりました。
ハイブリッド車貿易で合意、EU側は輸出増加の抑制を見込む
近年、中国製ハイブリッド車の欧州市場への輸出が急速に拡大しています。特に2024年にEUが中国製EVに反補助金関税を導入して以降、対象外となっているハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の輸出が大幅に増加し、中国・EU間の新たな貿易摩擦の焦点となっています。
今回の協議で双方は、世界貿易機関(WTO)のルールに適合する形で、ハイブリッド車貿易について合意に達したと発表しました。
シェフチョビッチ委員は10月9日、EU側の予測として、今回の合意によって、今後4年間の中国からEUへのHEV・PHEV輸出量が、制限措置を講じない場合の予測と比べて50%以上抑制される可能性があると述べました。ただし、中国側が公表した共同声明には、具体的な数量や実施方法、実施時期は示されておらず、詳細は今後明らかになる見通しです。
EV反補助金関税問題は引き続き協議
EVについては、双方が反補助金調査に関する企業の価格約束と再審査手続きを引き続き進めることで合意しました。
これにより、EUが2024年から中国製EVに課している反補助金関税は撤廃されないものの、価格約束などを通じた紛争解決の余地は残されています。今後、最低輸入価格の設定などによって反補助金関税の一部を代替できるかどうかは、引き続き行われる協議とEU側の審査結果に左右されます。
レアアースの輸出許可を円滑化、自動車サプライチェーンの安定化へ
双方は、レアアースと永久磁石の輸出許可についても合意しました。中国側は「グリーンチャネル(優先審査ルート)」を通じて、関連製品のEU向け輸出許可手続きの円滑化を引き続き図る方針を示しました。一方、EU側も加盟国と連携し、中国向けの軍民両用物品の輸出許可に関する重要案件の解決を進めるとしています。
レアアースを使用した永久磁石は、EVの駆動モーターなどに広く採用されており、その安定供給は欧州の自動車メーカーや部品サプライヤーの生産に直結しています。今回の合意は輸出許可をめぐる不確実性の緩和につながると期待されますが、輸出規制そのものを撤廃するものではありません。
このほか、双方は一部製品の関税引き下げの可能性について引き続き検討するとともに、EUの外国補助金規則(FSR)に関する技術的な対話を進めることで合意しました。
中国とEUは、2027年1月に閣僚級のオンライン会議を開き、同年3月に第3回貿易投資協議メカニズム会合を開催することを決めました。今回の協議では一定の進展が見られたものの、自動車貿易をめぐる関税や市場アクセスの問題が全面的に解決されたわけではなく、具体的な成果は今後の合意内容の実施状況にかかっています。
今回の中欧貿易合意をどう評価するか
今回の合意については、主に3つの観点から評価できます。
第一に、中欧間の貿易摩擦を緩和する効果です。
来週のEU首脳会議では、中国との貿易不均衡や対中強硬策が議論される見通しです。今回の合意によって対立が完全に解消されるわけではありませんが、緊張を和らげ、EU側の強硬姿勢を一定程度抑える効果が期待されます。
第二に、中国側が想定外ともいえる譲歩に踏み切ったことです。
EUが対中貿易規制を強めるなか、中国はハイブリッド車の輸出抑制を受け入れる方向を示すとともに、レアアースの輸出許可の円滑化にも応じました。中国側の予想以上ともいえる譲歩が目立ちますが、これはEUとの全面的な貿易対立を回避し、欧州での自動車現地生産を進める時間を確保するための戦略的な判断とも考えられます。
第三に、中国自動車メーカーの欧州現地生産戦略との関係です。
中国メーカーは、完成車の輸出に依存する販売方式から、欧州での現地生産へと移行しつつあります。BYD、奇瑞汽車、零跑汽車などが欧州での生産体制を整備しており、今後4年間は現地生産への移行を進める重要な期間となります。
仮に中国からの完成車輸出が抑制されても、欧州工場の稼働によって販売を維持・拡大できれば、その影響は限定的となる可能性があります。つまり、中国側は大幅な譲歩と引き換えに、現地生産体制を構築するための時間を確保したとも解釈できます。
また、米国との貿易摩擦が続くなか、中国にとってEUとの対立激化を避けることにも大きな意味があります。
ただし、今回の合意によってEUの対中強硬姿勢が転換するとは限りません。今後のEU首脳会議でどのような方針が示されるか、引き続き注目されます。
