「自動運転」は売り文句に、販売員すら信じないのに顧客が信じた
ユーザー数の急増や新車種の発売に伴い、自動運転という言葉がニュースに頻繁にでている。
9月22日,A氏が最先端と言われる理想汽車の初モデル「理想ONE」を運転して青島G18高速を走行し、その際に運転支援システムをオンにした。走行中に横から急に割り込んできたバンに追突し、理想ONEのAピラーが破断し、車の7つのエアバッグが1つも飛び出しなかった。最も重要なのは、事故が発生する前にシステムが警告または減速していないことだ。
10月中旬、広東省東莞市の道路で車のボッディに「自動運転タクシー」と表示された自動運転テスト車両が事故を起こし、「自動運転がただの売り文句だ」という議論が再び巻き起こった。
日常の通勤渋滞時に楽になるという営業マンの説得を納得して、B氏は今年7月、L2級「自動運転」システムを搭載したトップクラスの新エネルギー車を購入した。渋滞時に、この車は先行車に追随しながら、安定的に進むことができる。ただし、他の車両も同じ状態で行儀よく走行することが前提だ。実際は、ちょっとした車間距離でも強引に割り込んでくる「賢い人」があまりにも多く、楽になるはずの前提が崩れている。「隣の車が急に割り込んだら、システムがそれを認識して急ブレーキをかける。その時は壁にぶつかったような感覚だ」とB氏は皮肉った。
同じ理由で「自動運転」機能つきの新車を購入したC氏は、「渋滞時に、システムがときどき自動モードを勝手に解除してしまう。この場合、慌てて手動で運転を引き継がなければならないが、困ったことに、システムがいつ自動モードを解除するのか、いつ急ブレーキがかかるのか、いつ前方物体を認識できなくなるのか分からないため、自動モードをオンにしている状態では、常に緊張して、かえって疲れる」と語った。
ある自動運転ベンチャー企業の自動運転テスト車両の安全要員を務めていたM氏は、記者に対して「すべての車両が交通規則を守って丁寧に走行しない限り、L3以上の高度自動運転システムであっても、人間による介入なしでは危険だ」と述べた。
「はっきり言って、今の多くの自動運転は車を売る時の売り文句に過ぎない」。
広州市のある新エネルギー車4S店の営業マンの胡氏によると、4S店は、顧客に販売車両の運転支援システムの機能を見せることをよく販売員に要求している。しかし、販売員が顧客に付き添って自動運転機能を体験して交通事故を起こしたというニュースがネット上でしばしば見られている。胡氏とほかの販売員も、車両の自動運転や運転支援機能を手放しで実演することは怖くてできない。「私は個人的に試してみたが、中国国内の現在の道路状況では、これらの自動運転や運転支援機能は本当に『鶏のあばら』(食うほどの肉はないが、捨てるには勿体ないところから、大して役には立たないもののたとえ)」。
顧客が明確に要求しない限り、彼らは基本的に自動ブレーキや車線維持などの「危険な」機能を実演することはなく、4S店が設計した敷地内で、リスクの低い自動駐車機能を見せるだけだ。しかし、セールスポイントとして、多くの4S店や販売員は、新モデルには、「自動運転」、さらには「無人運転」の「能力」を備えていることを顧客にアピールしようとしている。
メーカーと協力してネット上で「運転中にハンドルから手を離しておしゃべりをしている」という動画が投稿されているいる有名人はいるが、基本的には視聴者をミスリードしたり、運転支援、自動運転、無人運転の概念を混同したりする恐れもある。
ある自動車メディア関係者によると、現在市場に出回っている大部分の車種が搭載しているいわゆる自動運転機能は、実際にはL2級運転支援システムに過ぎない。これはドライバーに道路状況の事前判断、走行アドバイス情報しか提供できず、その中の緊急ブレーキ機能であっても、状況次第で問題が発生する可能性がある。
「しかし、自動車メーカーは注目を集めるために、L2級運転支援システムの役割を誇張し、さらには混同されるようなコンセプトを大量にでっち上げている。例えば、L2.5級や準L3級も無人運転だという。現在の運転支援技術の限界については、自動車メーカーはよく知っているはずなのに」と同関係者が述べた。
誇大宣伝による悪影響と重大な責任を逃れるために、自動車メーカーは説明書において、小さな文字で「但し書き」を入れている。これらの「素晴らしい」機能は、「限られた運転支援システム」にすぎず、ドライバーは両手を放すことができず、常に道路状況に注目して運転する必要があると。
自動運転(運転支援システム)を搭載した車両が事故を起こした場合、世論やメーカーは、「自動運転」への過信として、ドライバーのせいにするのが一般的だ。しかし、顧客はメーカーが開発した「自動運転(運転支援システム)」に対して過信に陥ったのは、販売段階の売り文句や企業の誇大宣伝によるものかどうかを真剣に考えなければならない。