中国L2運転支援の新国家標準案を解説 故障注入試験やドライバー監視で安全要件を強化

中国工業情報化部は9月17日、「スマートコネクテッドカー向け統合型運転支援システム安全要件(智能網聯汽車組合駕駛支援系統安全要求)」(L2級強制国家標準案、以下「国標案」)のパブリックコメントを開始しました。意見募集は11月15日までで、正式施行は2027年1月1日を予定しています。今回の新標準はL2級の運転支援を対象とし、安全リスク低減と制度的な枠組み整備を目的としています。

定義と対象範囲

国標案では、L2は自動運転に該当しないと明確にされました。横方向・縦方向の制御を支援できても、運転者が常に車両を掌握する必要があります。また、L2からL5までの自動化レベルを定義し直し、利用者の誤認防止を図っています。L2支援は「単一車線(LCCやACCなど)」「複数車線(車線変更支援を含む)」「ナビゲーション型(都市NOAなど)」の3区分に整理され、それぞれに安全要件が規定されています。

安全検証と試験シナリオ

安全検証は段階的に設計され、場内試験では故障注入や環境干渉など計76シナリオが設定されました。道路試験は同一種類の道路で少なくとも72時間実施し、夜間利用を想定する場合は夜間試験が必須となります。さらに設計資料や安全保証の書類提出も求められます。なお、乗用車と商用車で基準に差は設けられません。

特に注目を集めるのは「50センチ紙箱障害物試験」で、高精度LiDARがほぼ必須とされる難関シナリオです。業界関係者によれば、現状これをクリアできるのはファーウェイ系の車種に限られます。さらに「3・29銅陵シャオミSU7火災事故」をほぼ再現した施工区域試験も盛り込まれており、市場の反響を呼んでいます。

運転者監視とペナルティ

運転者の監視強化も柱の一つです。ハンドルから手を離すと5秒で警告、10秒で段階引き上げとなります。視線逸脱は5秒で注意喚起、さらに3秒で警告、追加5秒で即時制御警告が発せられます。違反を繰り返した場合、システムは最低30分間停止します。併せてメーカーには利用説明書の提供と運転者への教育が義務づけられます。

事故データと責任追及

システム作動時の車両挙動、運転者操作、環境情報などは標準化された形式で記録し、事故分析に備えることが必須となります。

業界への影響

今回の標準はL2搭載を義務化するものではなく、安全基準を最低ラインとして示すものです。ただし難易度は従来より格段に高く、特に純 粋なカメラベースの方式では対応が難しいとみられます。業界試験によれば、テスラのHW3.0は不合格、HW4.0でもAPやEAPは基準を満たしません。最新のFSD13は通過可能とされますが、まだ市場投入されていません。

今回の試験要件は昼夜・逆光・悪天候など多様な条件を網羅し、車両・歩行者・二輪車・特殊車両、さらには仮設障害物まで含みます。複数目標の同時対応も求められるため、事実上、先進的なセンサー融合と高度な制御ソフトを備えなければL2機能を名乗れなくなります。

標準施行後も移行期間が設けられ、新規型式は13カ月、既存型式は25カ月の猶予があります。しかし業界関係者は「これは単なる試験対応ではなく、企業の総合力が問われる時代の到来です」と指摘しています。シャオミSU7の大規模リコール(11.7万台)を契機に強まった安全規制の流れは、今後の自動車メーカーとサプライヤーの勢力図を大きく塗り替える可能性が高いとみられます。

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