「スマート運転」は自動運転にあらず──公安省が明言、事故時は運転者に責任

7月23日、中国公安省は国務院新聞弁公室が開催した「第14次五カ年計画の高品質な遂行」に関する記者会見において、いわゆる「スマート運転(智驾)」機能の定義と責任の所在を明確にしました。

公安省によれば、現在中国国内で販売されている自動車に搭載されている「スマート運転」システムは、いずれも「自動運転」機能を備えておらず、あくまで「運転支援(ADAS)」の段階にとどまっています。つまり、これらのシステムは一部の動的な運転操作を補助するものであり、車両の制御は最終的に人間の運転者が担う必要があります。運転者がハンドルから手を離したり、前方から目をそらしたりした(ハンズオフ、アイズオフ)状態では、安全リスクが高まるだけでなく、事故が発生した場合には民事賠償・行政処分・刑事責任という三重の法的リスクを負う可能性があります。

近年、「スマート運転」モード中に運転者の注意が散漫になったことが原因とみられる交通事故が相次いで発生しています。

たとえば、2023年7月25日には、京港澳高速道路の安陽区間で2台の乗用車が追突事故を起こし、加害車両はそのまま逃走しました。運転者は、疲労により車内で眠っており、車両は自動運転モードで追い越し車線を走行し続けていたと供述しました。

2024年12月4日には、江蘇省南京市で、酒気帯び状態で「スマート運転」機能を使用したことに起因する重大事故が発生しました。報道によれば、運転者は飲酒後に同機能を起動し、高速道路を走行中に眠ってしまい、車両は南京六合東料金所の安全島に激突して横転、炎上しました。

2025年3月16日、武深高速道路では、小型の新エネルギー車が突然右側に逸れ、そのまま道路脇の山肌に衝突し横転する事故が起きました。調査により、運転者が「スマート運転」モードを作動させた後に注意をそらし、異常に気づいて慌てて手動で制御しようとしたものの、誤操作により事故に至ったことが明らかになりました。

2025年3月19日、大広高速道路信陽区間において、小型の新エネルギー車が走行中に横転し、車両が大破しました。調査の結果、事故当時は「スマート運転」モードが作動していたことが判明しました。

また、2025年3月29日には、小米(シャオミ)のSU7が「スマート運転」モードで高速走行中に中央分離帯に衝突し、3人の若い女性が死亡するという悲惨な事故が発生しました。この事故をきっかけに、スマート運転の安全性に対する世論の関心が一気に高まりました。

こうした事故の頻発の背景には、運転支援(ADAS)と自動運転の混同、さらに一部自動車メーカーが機能を過度に誇張して宣伝している実態があると指摘されています。

中でも象徴的な存在とされるのが、ファーウェイの常務董事でコンシューマー部門のトップを務める余承東氏です。彼は自身のスマート運転体験をSNSで頻繁に共有し、世間の注目を集めています。

2024年2月12日、余氏は安徽省から深圳までスマート運転で移動した体験をSNSに投稿し、「唯一不満なのは、法律により長時間ハンドルから手を離せないこと」と述べました。また、長時間手を離したことでシステムから3分間の使用制限を受けたことにも言及し、「できればこの手放し検知機能をなくしてほしい」ともコメントしました。

さらに、2025年7月には「運転中に居眠りをしている」とされる余氏の動画がネット上で拡散しました。彼はすぐに釈明し、「寝ていたわけではなく、スマートフォンを操作していただけだ」と説明。また、「省公安庁と市公安局にすぐに呼び出され、自ら出頭した」と明かしました。最終的に、彼には違反点数3点が加算されました。

公安省はこのような行為に対し、改めて法的リスクの存在を警告しています。「中華人民共和国道路交通安全法実施条例」によれば、運転中に携帯電話を使用したり、テレビを見たりするなど、安全運転を妨げる行為は禁止されており、違反した場合は警告、または20〜200元の罰金、さらに違反点数3点の処分が科されます。

このような行為が原因で交通事故を引き起こした場合、運転者は民事上の賠償責任を負うことになります。これには車両の修理費、治療費、休業損害などが含まれ、死傷者が発生した場合は、障害補償金や死亡補償金の支払い義務も生じます。

さらに重大な場合は、刑法に定められた「交通事故罪」が適用されます。中華人民共和国刑法によれば、交通運輸に関する規定に違反して重大な事故を引き起こし、人を重傷・死亡させたり、公私の財産に重大な損害を与えたりした場合には、3年以下の懲役または拘留が科されます。事故後に逃走した場合や、特に悪質な事情がある場合は3年以上7年以下、逃走によって死亡事故を引き起こした場合は7年以上の懲役が科されます。

公安省は今後、関連部門と連携し、「中華人民共和国道路交通安全法」および関連法規の改正を推進していく方針です。これにより、レベル0〜2(L0〜L2)の運転支援システムにおける「人間と機械による共同運転(Shared Autonomy)」の法的性格を明確化し、自動車メーカーに対しては技術の信頼性向上、安全技術基準の整備を促すとともに、運転者教育や運転免許試験の中に運転支援の操作規範や自動運転レベル分類の内容を組み込むことを検討しています。

スマート運転(運転支援)機能の普及率は年々上昇しており、2025年には65%に達する見込みです。専門家は、運転支援段階では現行の交通法で管理が可能である一方、L3以上の自動運転に移行すれば、責任の所在が一層複雑になると指摘しており、今後は「責任の階層化」に基づく新たな法制度の構築が求められるとされています。

現在、北京市・上海市・深圳市などではすでに自動運転に関する地方条例が施行されていますが、国家レベルでの統一的な立法は現在も進行中です。公安省が主導する「道路交通安全法」の改正作業は、自動運転車のテスト、走行管理、事故処理などを対象に進められています。

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