2025年11月12日
公安部、自動車安全の新基準案を発表 新エネ車・運転支援車の安全要件を強化、「0-100km/h加速5秒以上」を義務化

11月10日、中国公安部は国家標準化管理委員会の改定計画に基づき、「自動車運行安全技術条件」に関する国家標準の意見募集稿(以下、「意見稿」)を策定し、公に意見募集を開始しました。
この意見稿では、近年の交通事故で明らかになった中大型トラックやバンの安全性能不足、軽トラックの過積載問題(いわゆる「大トン小標」)などを踏まえ、自動緊急ブレーキ(AEB)、電子安定制御装置(ESC)、死角監視システム(BSD)などの装備を義務化し、車両全体の安全性能向上を図っています。さらに、新エネルギー車(NEV)および運転支援車に関する安全要件も新たに追加されています。
意見稿の主な改訂点は以下の通りです。
【貨物車】
- 自動緊急ブレーキ(AEB)の適用拡大
ごみ収集車や低速車を除くすべての貨物車にAEBの装備を義務化。 - 車線逸脱警報(LDW)の適用拡大
総重量4,500kg以上(ごみ収集車を除く)の貨物車、および定格積載量(またはけん引用能力)1,000kg以上の特殊作業車にLDWの装備を義務化。 - 電子安定制御システム(ESC)の適用拡大
ごみ収集車・低速車を除くすべての貨物車にESCの装備を義務化。 - 電子制御ブレーキ(EBS)の適用拡大
総重量12,000kg以上の危険物輸送車・セミトラクター、および総重量10,000kg以上のセミトレーラーにEBS装備を義務化。 - サラウンドビューカメラシステム・死角監視システムの導入
総重量4,500kg以上の貨物車に360°カメラまたは死角監視システムを装備。 - ドライバー注意力監視システムの導入
危険物輸送車および三軸以上のトラックに注意力監視システムを装備。 - タイヤバースト時の緊急装置の適用拡大
三軸以上のトラック(ダブルステア車を除く)および総重量3,500kg超の危険物輸送車の操舵輪に、タイヤ破裂時の緊急対応装置を装備。 - コンテナ輸送車の構造要件追加
コンテナトラックおよびセミトレーラーは単層骨格構造とし、可動式・可倒式の骨格構造は禁止。 - エアタンク作動圧の強化
総重量12,000kg以上の貨物車および貨物車シャシー改造の特殊作業車で空気圧ブレーキを採用する場合、エアタンクの定格作動圧力を1,000kPa以上とする。 - 電動セミトラクターの側面防護要件追加
純電動セミトラクターは、固定装備を除き、車体側面に1m以上のすき間がある場合、巻き込み防止用の側面防護装置を装備。
- 自動緊急ブレーキ(AEB)の適用拡大
【バス】
中・大型バスの安全性能不足、とくに能動安全装置の普及が遅れている点を踏まえ、安全基準が強化されました。
- 自動緊急ブレーキ(AEB)の適用拡大
立席区を設けていないすべてのバスにAEBの装備を義務化。 - 電子安定制御装置(ESC)の適用拡大
立席区を設けていないすべてのバスにESCの装備を義務化。 - サラウンドビューカメラシステム・死角監視システムの導入
車長6m以上のバスに360°カメラまたは死角監視システムを装備。 - ドライバー注意力監視システムの導入
高速バス・観光バスに注意力監視システムを義務化。 - タイヤ空気圧監視システム(TPMS)の導入
高速バス・観光バスの単輪にはTPMS装備を義務化。 - シートベルト着用警告装置の適用拡大
高速バス・観光バスの全座席にシートベルト警告装置を設置。 - 大型バス座席間隔の拡大
車長9m以上の高速バス・観光バスでは、同一方向の座席間隔を700mm以上とする。
- 自動緊急ブレーキ(AEB)の適用拡大
【新エネルギー車(NEV)】
新エネルギー車の安全性向上を図り、高品質な発展を支えるため、以下のような新要件が追加されました。
- A型回生ブレーキシステムの導入
「ワンペダルモード(単一ペダル制御)」の使用範囲を明確化。 - 誤操作加速抑制機能の導入
電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)には、停止・低速走行時にアクセルとブレーキの踏み間違いを検知し、出力を抑制、音や光で警告を行う機能を搭載。これにより誤操作による急加速事故を防止。 - 車載インフォテインメントの安全要件追加
走行速度が10km/hを超える場合、運転席側ディスプレイでは映像再生・ゲーム機能を禁止。 - 動力電池の安全要件強化
純電気自動車およびプラグインハイブリッド車のバッテリーは国家標準「GB 38031」に準拠し、車体には定向減圧装置および圧力均衡装置を備えることを義務づけ。
- A型回生ブレーキシステムの導入
総括
意見募集稿では、中・大型商用車の運行安全技術要件をさらに強化し、制動性能や走行安定性など、安全性能の不足という課題を解決することを目的としていますが、なかでも「新エネルギー車の初期加速制限」「誤操作加速抑制」「電池熱暴走時の自動遮断」などは、近年急増する電気自動車の関連事故を背景にした規定であり、高速化・電動化が進む中での安全基準の空白を埋めることを目的としています。
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