工業情報省が「電気自動車用動力蓄電池安全要件」新標準を発表、2026年7月施行へ

4月14日、中国工業情報化省は「電気自動車用動力蓄電池安全要求」の国家強制標準(以下「新標準)を分かりやすく解説したインフォグラフィックを公開しました。この新標準は、国家市場監督管理総局と国家標準化管理委員会によって2025年3月28日に承認・公布され、2026年7月1日から正式に施行される予定です。

今回の新標準は、2020年版の改訂版であり、電動車用動力電池の安全性に対してより高い要求を提示しています。その目的は、業界に対する規範化と指導の役割をより効果的に発揮させることにあります。

新標準の策定には、動力電池企業と自動車メーカーの2大分野の企業が関与しており、CATL(寧徳時代)、Gotion High-tech(国軒高科)、BYD、CALB(中創新航)、Sunwoda(欣旺達)、ZEEKR、Xiaomi、中国一汽、トヨタ中国、日産中国、Xpeng、BMW、SAIC-GM-Wuling、Teslaなどが含まれています。

新標準で追加または重要な修正が加えられた主な項目は以下の3点に集中しています:

    • 急速充電サイクル後の安全性
    • 熱拡散
    • 底部衝撃への対応

熱拡散試験においては、2020年版で推奨されていた「外部加熱」「ピン刺し」に加え、今回新たに「内部加熱」試験が導入されました。改訂版では、試験対象バッテリーの温度要件、電源のオンオフ状態、観察時間、車載試験条件などが明確にされ、技術要件も更新されています。2020年版では火災・爆発の5分前に警報を出すことが求められていましたが、新標準では「発火せず、爆発せず(ただし警報は必要)、乗員に害を及ぼす煙を発生させないこと」となっています。

新たに追加されたバッテリー底部衝撃試験では、バッテリーの漏れ、外殻の破裂、発火や爆発がないこと、また絶縁抵抗の要件を満たすことが求められています。

急速充電サイクル後の安全性試験においては、300回の急速充電サイクルを経た後、バッテリーに対して外部短絡試験(ショートテスト)を行い、「発火せず、爆発しない」ことが要求されます。

以上が新標準の主な内容ですが、特に内部加熱と発生する煙が乗客に害を与えない要求が注目されます。

電気自動車の火災の多くは、バッテリーのショートによって内部から燃え出すことが原因であるため、内部加熱試験はその性能をより厳しく検証するのに有効とされています。

ただし、「煙が乗客に害を及ぼさないこと」という要件については、業界内でも「物理・化学の法則に反しており、実現は困難ではないか」との声もあります。そもそも正常な使用状態では発火や爆発は起こらないはずですが、いったん火災が発生すれば煙は毒性を含むことが多く、仮に無害であっても乗客の呼吸器に悪影響を与える可能性があります。これはある意味で「難題を突きつけている」と言えるかもしれません。

とはいえ、動力電池に対する業界の要求水準は今後も一層高まっていくことは確実です。ここ数年、動力電池市場は非常に魅力的な分野となっており、様々な資本が参入、小規模メーカーが雨後のタケノコのように出現しています。猫も杓子もバッテリー製造に乗り出すような状況下で、厳しい基準を導入することによって、研究開発への投資が少ない企業や価格競争だけを武器にした小規模メーカーは自然と淘汰されていくでしょう。すなわち、今回の基準改訂には「時代遅れの生産能力をふるいにかける」という目的も込められているのです。

「電気自動車用動力蓄電池安全要求」の解説

資料:工業情報化省

 

 

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