炭酸リチウム価格、下落後、5月に入って急反発
5月連休後、炭酸リチウムの価格は底打ちになったと思われたが、逆に大幅に反発し始めた。中国最大の非鉄金属業界向けのポータルWebサイトである「上海有色網」(以下「SMM」)は5月12日、最新のデータを発表した。データによると、電池向け炭酸リチウムの平均価格は同日1トン当たり1.7万元高の24.2万元となり、10日連続で上昇した。今月に入って上昇幅が1万元を超えた日は何度も見られ、4月下旬の安値17.85万元から6.35万元リバウンドし、その回復幅は35.6%に達した。
動力電池の主要原材料の1つである炭酸リチウムの価格は、過去約1年半の間に大きく上下し、2022年初めの1トン当たり約28万元から上昇し、同年11月には60万元近くの高値を記録したが、その後急速に下落し、今年4月下旬には18万元を割り込んだ。
60万元/トンから20万元/トンへと、電池向け炭酸リチウム価格の下落は「暴落」という表現で表されていたが、20万元/トンを下回ると下げ渋った。20万元/トンという相場は、高値になった時期に参入した多くのリチウム塩会社のコストを上回っており、特に輸入鉱を原料とするリチウム塩企業は半成品の状態のリチウム精鉱で1トン当たり20万元を超え、コストベースラインはすでに抜けられていた。
SMMの2023年第1四半期の電池向け炭酸リチウムコストデータによると、塩湖からのリチウム採収で1トン当たりのコストは4-5万元、自社リチア輝石鉱1トン当たりのコストは約6万元、自社リチア雲母鉱1トン当たりのコストは約6-8万元、外部リチア雲母1トン当たりのコストは約20-25万元、外部リチア輝石1トン当たりのコストは約30-32万元でした(海外鉱山の持分がある主要リチウム塩工場を含む)。
複数のリチウム塩企業が発表した2023年第1四半期決算によると、リチウム塩企業の業績は全般的に振るわず、複数のリチウム塩企業の純利益は前年同期比で半減したり、赤字に転落したりする事態となった。
業界関係者によると、これまでは炭酸リチウムの価格が下がりすぎていたため、一部の企業は赤字を覚悟のうえで販売していたが、赤字が拡大している中で、業者の売り惜しみが高まり、川上のリチウム資源サプライヤーも生産停止や減産などで供給量を減らし、価格を下支えしている。
また、新エネルギー車市場の需要も目立った回復が見られず、景気全体も悪く、今後大きく改善する見込みはないことも、リチウム資源サプライヤーの供給量減少の要因になったと考えられている。
CAAM(中国自動車工業協会)の発表によると、2023年1-4月の新エネルギー車の卸売は222.2万台に達し、前年同期比42.8%増となった。しかし、その伸び率は90%超の前年同期比伸び率と比べると、かなりの減速であると言わざるを得ない。
炭酸リチウムの価格反発に敏感に反応したテスラは5月初め、数回にわたって値上げを実施した。テスラが率先して車両価格を引き上げたことは、炭酸リチウム価格の反発と重なって、業界内では新エネルギー車の値下げ競争に終止符が打たれたのではないかとの憶測が飛び交っている。