長城の魏建軍会長発言が波紋──中国の新エネ車産業はビジネスモデル未成立、EV専用プラットフォームは「ナンセンス」

BYDを「自動車業界の恒大」と痛烈に批判したことに続き、長城汽車(GWM)の会長・魏建軍氏が、再び業界を揺るがす発言を行いました。魏氏は複数の場で中国の新エネルギー自動車(NEV)産業に対する懸念を相次いで示し、現在のNEV産業は持続可能なビジネスモデルを形成できておらず、国家補助金に依存する発展方式を「親のスネかじり」と表現しました。また、「EV専用プラットフォーム」というコンセプトにも疑問を呈しました。これらの発言は業界内で強い反響を呼んでいます。

魏建軍氏は何を語ったのか

11月12日の「ORA 5」予約販売発表会で、魏建軍氏は現在の新エネルギー自動車産業のビジネスモデルに強い懸念を示しました。BEV(純電動車)であれREEV(レンジエクステンダー付きEV)であれ、現時点では持続可能なビジネスモデルが形成されていないとし、「すでに10年経っても成熟した収益モデルを確立できなければ、この産業はどうなるか分からない」と述べました。さらに、新エネルギー車が政策補助金に依存し続ける現状を「親のスネかじり」になぞらえ、「国家は新エネルギー産業を支援しているが、財政補助は永遠に続けられるものではない……こんな取引ができるのは父親と息子だけで、まさに親のスネかじりではないか」と強調しました。

また、資本の影響についても指摘しました。初期には資本が雪崩のように流れ込み、現在は撤退しつつあるため、多くのNEVメーカーが資本に「縛られ」、恒大式の財務リスクや市場混乱を引き起こしたと批判しました。

さらに数日後の11月18日、ハヴァル(HAVAL)H6Lの発表会後のメディア懇談でも、魏建軍氏は「EV専用プラットフォームはナンセンス」とさらに踏み込み、長城汽車が「全動力(フルパワートレイン)プラットフォーム」をまもなく発表すると明かしました。全動力プラットフォームは、消費者により多くの選択肢や高い残価をもたらし、EVのビジネスモデルが黒字化しにくいという問題を解決する有効な手段であると述べました。

また、過去5年間はNEVの成長速度こそ速かったものの、将来、過去を振り返れば「中国の自動車産業にとって最悪の5年」だったと評価されるだろうと述べました。多くのメーカーが倒産し、車両の残価やメンテナンスの問題が表面化したためです。こうした背景から、全動力プラットフォームの重要性を改めて強調し、「国内で使えなくても、中古車として輸出できる」とも語りました。

業界内の強い反応と、分かれるネット世論

魏建軍氏の一連の発言は、業界内に大きな波紋を広げました。長年政策補助金に依存し、規模拡大を追求してきた中国のNEV業界では、補助金の段階的な縮小に伴い、収益難や過剰生産といった問題が近年顕在化しています。魏氏の主張は、こうした現実的な矛盾を突いたものだとして、一部関係者から賛同の声も上がっています。

一方、資本の影響についての警告も業界の痛点を突いています。過去数年、資本は企業価値や市場占有率の引き上げを急がせ、多くの企業が資本の期待に応えるために販売台数やシェアを競いましたが、実際の収益力は軽視されました。その結果、資本が撤退すると多くの企業が困難に陥りました。

ネット上でも魏建軍氏の発言は大きな議論を呼び、賛否が分かれています。

批判的な意見としては、「長城汽車は電動化技術で遅れているため、魏氏は他社を貶めているだけだ」という指摘や、「EV専用プラットフォームはナンセンス」という発言が過激で、技術の現状と整合しないとする声が見られます。

一方で支持的な見方としては、「発言は過激だが、EVのシャシー設計は電池の配置や車体性能を前提から見直す必要があり、現状は妥協の産物と言わざるを得ない」といった指摘もあります。また、サプライチェーン品質の低下を懸念する声として、「EV部品が車載グレードから工業用、さらには一般消費者向けレベルへと品質が下がりつつあり、その結果としてEVのライフサイクルが短くなり、3年や5年ごとの買い替えを促す流れが生まれている」という意見も出ています。

総じて、魏建軍氏の発言は再び業界内外の広範な議論を巻き起こしました。ビジネスモデル、資本の役割、技術パラダイム、プラットフォーム戦略に至るまで、魏氏の主張は賛否を呼びつつも、新エネルギー市場が抱える課題を鋭く突いていることは間違いありません。

22

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。