Black Sesame、香港上場初日に株価急落―国産車載チップメーカーの成長課題が浮き彫りに
中国自動運転チップ開発企業のBlack Sesame Technologies(黒芝麻智能科技有限公司)は、2024年8月8日に香港証券取引所に上場し、「国産スマートドライブチップの第1号」と称賛されました。しかし、上場初日にBlack Sesameの株価は急落し、始値は18.8香港ドルにとどまり、発行価格の28香港ドルを大きく下回りました。この結果は、市場に大きな関心と議論を呼び起こしました。
株価の下落の背景には、Black Sesameが継続的に赤字を計上していることや、将来的な成長見通しに対する市場の懸念が影響しています。
Black Sesameは2016年に設立され、武漢に本社を構え、「華山シリーズ」や「武当シリーズ」といった車載グレードのSoCの提供に注力しています。また、OSサポートや「漢海」自動運転ソリューションプラットフォーム(ADSP)ミドルウェア、認知アルゴリズムなどのソフトウェアサービスも提供し、スマートドライブやスマートコックビットなどの分野で広く活用されています。
2023年6月時点で、Black SesameはFAW(一汽)、東風、JAC(江淮)、HYCAN(合創)、百度、ボッシュ、ZF、Marelliなど49社以上の自動車OEMおよびサプライヤーと提携しています。しかし、Black Sesameのチップが搭載されたこれらのOEMの車種は、同じ自動運転チップ開発企業のHorizon Roboticsと提携するBYD、Li Atuo、NIOなどの車種に比べて、人気がなく、販売台数も後者に匹敵するのは難しい。特に注目すべきは、新興メーカーのシャオミやNIOがBlack Sesameに投資しているにもかかわらず、Black Sesame のチップを採用していない点です。例えば、シャオミの新モデルもBlack Sesameのチップを搭載する意向が明確になっています。
さらに、自動車メーカーが自社でチップの研究開発を始める動きが増え、これまでの「顧客」が「ライバル」へと変わりつつあります。一方、自動運転分野でソフトとハードを一体化したソリューションを全力で推進しているファーウェイは、すでにSERES「問界」ブランド、NETA、AVATAなどのOEMと提携しています。このような競争環境は、Black Sesameのようなサプライヤーにとって、事業展開が一層難しくなる要因となっています。
また、Black SesameのSoC製品は主にTSMCによって製造されており、単一または少数のTier2に依存するサプライチェーンは、リスク管理の面で明らかに脆弱です。
加えて、Black Sesameの財務状況は満足のいくものではありません。
同社はこれまでに10回以上の資金調達を経て、総額6.95億ドルを調達しました。目論見書によると、過去3年間で営業収入は増加し、2021年には0.61億元、2022年には1.65億元、2023年には3.12億元に達しましたが、同時に赤字額も急速に拡大しています。2021年から2023年までのBlack Sesameの純損失は、それぞれ23.57億元、27.54億元、48.55億元で、累計損失は100億元に近づいています。
これほどの損失の主な原因は、Black Sesameの多額の研究開発投資にあります。2021年から2023年にかけて、同社の研究開発費用はそれぞれ5.95億元、7.64億元、13.63億元で、当期の営業収入に占める割合はそれぞれ975%、463%、437%に達しています。この巨額な研究開発投資は、企業の継続的な財務負担にもつながっています。
また、Black Sesameの粗利益率も年々低下しており、2021年の36.1%から2023年には24.7%にまで減少しています。この粗利益率の低下は、同社の自動運転製品やソリューションの収益性が伸び悩んでいることや、コスト抑制の課題を反映しており、将来の収益性に対する市場の懸念を一層高めています。
こうした状況の中で、Black Sesameは上場による資金調達を通じて財務的なプレッシャーを軽減する必要がありますが、会社の財務状況に対する市場の懸念や世界経済の不確実性から、投資家は、Black Sesameの将来の営業収入が過去の研究開発投資を回収できるかどうか疑問に思い始めており、これも同社の株価が上場初日に急落した要因の一つとなっています。