中国、L3自動運転車の生産を条件付きで認可へ ― 工業情報化省の最新政策を読み解く

3月29日の報道によると、中国工業情報化省の辛国斌副部長は、「中国電動汽車百人会フォーラム2025」において、次のように発言しました。
工業情報化省は新時代におけるスマートコネクテッド・新エネルギー車の産業発展計画の策定を急ぎ、関係部門との連携を強化し、支援政策を充実させることで、産業競争力の優位性を引き続き強固にし拡大させるとともに、中国の自動車産業の質の高い発展を着実に推進していくと述べました。辛副部長は以下の5つの重点施策を提案しました:
- 技術革新の取り組みを一層強化し、リーディング企業を中心に、大・中・小企業の連携によるイノベーションを支援すること。
- 自動運転の産業化を加速し、スマートコネクテッドカーの認可・公道走行の実証実験プログラムを推進すること。標準体系を整備し、L3自動運転車の生産許可を条件付きで承認するとともに、道路交通安全や保険などに関する法制度の整備を進めること。
- 自動車消費を安定・拡大させるため、新たな業界成長支援策を策定・実施し、老朽車の買い替え促進策を着実に実行すること。
- 産業チェーン全体のデジタル化を推進し、AIの研究開発・製造・運用管理といった自動車関連シーンへの応用を進めること。
- 業界管理の改革をさらに深化させ、自動車生産認可管理の関連法整備を加速させ、企業の退出メカニズムを整備し、生産認可制度改革を進めること。
この5つの施策の中でも、特に注目されるのは2番目の自動運転関連施策です。しかし、その内容は非常に簡潔で曖昧であり、理解しづらいとの指摘もあります。
従来の政策と同様に、当局の政策説明は往々にして曖昧です。これは当局が自らの発言に修正の余地を残すための慣行ですが、実施側にとってはこの曖昧さが混乱を生む原因となります。実施過程で問題が生じた場合、その責任は政策の誤りではなく、実行側の「誤解」にされる可能性が高いためです。したがって、新政策が出るたびに「正しく」どう解釈するかは、関係機関にとって頭を悩ませる課題となっています。
今回の「電動汽車百人会」で発表された工業情報化省の政策について、当サイトでは(参考情報として)以下のように要点を整理・解釈してみます。
今回の政策のポイントは以下の3点にまとめられます:
①スマートコネクテッドカーの認証制度整備と公道実証実験の推進(2024年6月に開始、第一陣として9社の企業が選定済み)
②L3自動運転車の生産許可を条件付きで承認(①の実証実験参加が前提、または実証実験企業を優先)
③ 道路交通安全や保険制度に関する法整備の推進(①と②の実績を踏まえて段階的に制度整備)
まず、生産許可の前提となるのが実証実験参加です。実証実験プログラムは2024年6月に始まり、第一陣として以下の9社が認可されました:
- 乗用車(7社):Changan(長安)、BYD、GAC(広汽)、SAIC(上汽)、BAIC(北汽)、FAW(一汽)、NIO(蔚来)
- 商用トラック(1社):上汽紅岩
- バス(1社):宇通客車
認可は、自動車メーカー+運営事業者の共同申請、地方政府の推薦、専門家による審査・選考という形で行われています。
今後、L3自動運転車生産の「条件付き承認」の条件は、こうした実証実験を通過し、技術・管理体制が十分であると証明された企業に限定される見通しです。具体的な承認スケジュールは明示されていませんが、業界関係者の見方では、2025年にL3認証標準が公表されるとの予測もあります。
次に、法律・制度の整備の遅れは避けられません。制度整備は実証実験の経験やデータを踏まえて進める必要があり、現実と乖離したルールづくりを避けるためにも拙速な立法はできません。
L3以上の高レベル自動運転には、まずは試験都市ごとの条例が不可欠で、全国レベルでの制度整備(保険責任、事故認定ルールなど)は、地方での検証結果に基づいて策定される見込みです。
従来の政策と同様に、今回の方針も「実証実験先行 → 生産許可 → 法制度整備」という「三段階アプローチ」によって、技術革新と安全管理のバランスを図るものです。第一陣の実証実験企業は、L3認可を最も早く得られる可能性が高く、全国的な法整備はその成果をもとに段階的に実施される見通しです。