NVIDIA、H20チップの安全性問題に反論──バックドア否定と設計の適法性強調も、中国では行動による証明求める声

7月下旬以降、NVIDIA(エヌビディア)のH20チップを巡る安全性に関する議論が、中国国内で大きな波紋を広げております。7月31日には、中国国家インターネット情報弁公室(網信弁)が《ネットワーク安全法》《データ安全法》《個人情報保護法》に基づき、NVIDIAに対して正式に事情聴取を行い、H20チップに「バックドア」や「遠隔停止」機能などのリスクが存在する可能性について説明を求めるとともに、安全性を証明する関連資料の提出を勧告いたしました。

これを受けて、NVIDIAは8月6日未明、公式ブログを通じて長文の声明を発表し、H20チップに「バックドア」や「キルスイッチ」、「監視ソフトウェア」などの安全上の欠陥は存在しないと強く否定いたしました。

NVIDIAはこの声明の中で、現在の安全性に対する懸念は「誤用リスクへの過剰反応」によるものだと主張し、「NVIDIAのGPUにはキルスイッチやバックドアは存在せず、また存在してはならない」と明言しております。また、同社は1990年代に米国家安全保障局(NSA)が推進した「Clipperチップ」プロジェクトの失敗事例を引き合いに出し、「ハードウェアにおける単一点の制御構造は常に不適切である」と強調いたしました。当時、Clipperチップには政府がアクセス可能な暗号鍵のバックドアが設けられておりましたが、深刻なセキュリティ上の欠陥が明らかとなり、ユーザーの信頼を著しく損ねたことで、最終的にプロジェクトは中止されております。

さらに、NVIDIAは、いかなる形式のハードウェアバックドアも「恒久的な欠陥」であり、ユーザーが感知することも、無効化することもできないと指摘しております。そして、もし悪意のある勢力によって利用された場合には、極めて深刻な結果を招く可能性があると警告しております。

また、スマートフォンの「端末を探す」や「遠隔ワイプ」などの機能と、GPUにおけるキルスイッチを同一視する一部の論調についても、NVIDIAは明確に否定しております。ソフトウェアによるこれらの機能はユーザーが任意で有効化でき、データの流れも追跡・管理が可能であるのに対し、ハードウェアレベルのバックドアはユーザーの制御が一切及ばない、恒久的な脆弱性であると説明しております。

技術面において、NVIDIAは自社のチップの安全性は「多層防御」の考え方に基づいて設計されており、単一の脆弱性によってシステム全体が致命的な影響を受けることがないよう配慮されていると強調しております。さらに、すべての製品は国際的なサイバーセキュリティ基準に準拠しており、社内テストに加え、第三者による独立した検証を通じて安全性が担保されていると説明しております。

加えて、同社はチップ設計の原則として「バックドアを設けないこと」が前提であるとし、責任ある形で信頼性の高いシステムを構築することこそが、世界中の顧客および国家の利益に資する唯一の道であると述べております。創業者兼CEOである黄仁勲(ジェンスン・フアン)氏も以前、「私たちに求められているのは、常に法令を順守し、各市場の顧客に最大限のサービスを提供することだけだ」と発言しております。

とはいえ、NVIDIAの今回の声明は慎重かつ論理的に構成されているものの、中国国内の世論では、当局や市場関係者の不安を完全に払拭するには至っておらず、今後、NVIDIAが信頼に足る技術資料や第三者機関による検証結果を提示することが不可欠であるとの見方が強まっております。

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