2019年販売目標を達成した自動車スタートアップ企業は一社もなかった
2019年は自動車スタートアップ企業にとって「夢を実現する年」だった。この年に多くの自動車スタートアップ企業は、念願の新エネ車をユーザーに手渡したと同時に、市場の試練を受け始めた。
現在までに、NIO(蔚来)、Weltmeister(威馬)、小鵬汽車、Hozon(合衆)、SITECH DEV(新特)、LeapMotor(零跑)など10社以上は、納車実績を持っており、うち、NIO、Weltmeister、小鵬汽車の3社が登録台数を1万台突破した。しかし、年初に各社が設定した販売目標を達成したのは一社もなかった。
2019年各社目標達成率
自動車スタートアップ企業の中で2019年の販売台数のトップメーカーとして、NIOは年初に「4万台を守り5万台を狙う」という「小さな目標」を立てたが、年末の販売台数は20,565台と目標達成率は51%にとどまった。2位のWeltmeisterは、「2019年の販売台数は10万台に達するだろう」と予測していたが、実際の達成率は16.9%しかなかった。3位の小鵬汽車は年間3万台の保守的な販売目標も41.5%しか達成していない。注目すべきは、4位のHozon以下の各社は、いずれも万台レベルから一桁減って千台レベルにとどまったことだ。
新車販売実績が目標から遠ざかる一方で、自動車スタートアップ企業各社の前に突きつけられているのが「お金に困っている」という、さらなる難題だ。
研究開発、量産、納車、マーケティングは至る所でお金が必要だが、マクロ経済成長が次第に鈍化しているなかで、自動車市場の消費マインドが低下し、融資はさらに難しくなっている。
データによると、多くのスタートアップ企業は融資目標を達成していない。一部の企業の創業者らは、自腹を切って経営圧力を緩和している。例えば、NIOの創業者の李斌氏は9,500万ドルを追加投資した。小鵬汽車の創業者の何小鵬氏も自社のCラウンド融資に参加した。
2019年各社融資状況
「金が足りない」という理由で、自動車スタートアップ企業がリストラを始めたり、賃金未払いに追い込まれたり、工場を閉鎖したりするなどのニュースが頻繁に出ている。
NIOは全世界で数千人の人員削減、店舗閉鎖などの措置で運営コストを削減すると発表した。もう一つの自動車スタートアップ企業のBORDRIN(博郡汽車)は先日、資金難で完成車事業が中断したと報じられた。同じスタートアップ企業のSINOGOLD(国金汽車)が従業員の賃金未払いだけでなく、社員の社会保険費の支払いまで停止していたことが明らかになった。発改委と工業情報化省から2つの新エネルギー車生産資質を手にした新エネ車メーカーの長江汽車も、賃金未払いで操業を停止したことが明らかになった。
自動車スタートアップ企業の狼狽ぶりに比べ、これまでライバル視されてきたテスラが、2019年は中国で順風満帆に過ごしている。
テスラ上海工場の完成に伴い、国産Model 3は順調に発売され、2019年末までに累計36万8,000台を納車し、年間目標を達成した。
2020年1月3日、テスラは国産モデル3の値下げを発表し、購入税と新エネルギー補助金の免除を加えると、国産Model 3の入手価格は30万元を切ることになる。今後テスラの国産化が進むことで、さらに20-30%の値下げ余地があるとの情報がある。
テスラの値下げ攻撃は、中国の新エネルギー自動車メーカーとりわけスタートアップ企業に対する大きな脅威とみられている。
テスラのほか、ベンツやフォルクスワーゲンなど多くの大手自動車メーカーも中国の新エネルギー自動車市場への布石を加速させており、合弁メーカーの新エネ車新車が次々と発売される見通しで、2020年から自動車スタートアップ企業が直面する競争環境はますます厳しいものとなっている。