AVATA、50カ国以上への海外進出を計画 グローバル拡張を豪語するも、巨額赤字でフォード頼みの延命状態

2025年の上海モーターショーにおいて、AVATAテクノロジーの総裁・陳卓氏は、同社が今年、50以上の国・地域に進出し、海外で161の販売・サービスネットワークを構築する計画であると発表しました。年間の海外販売目標は1万5,000台であり、これはAVATAのグローバル戦略加速の一環であり、いわば「海外進出元年」の延長とも位置付けられています。
さらに、4月19日にAVATAは壮大な成長ビジョンを発表しました。2027年までにグローバル販売台数を40万台とし、そのうち6万台を海外販売とするほか、2030年には80万台、2035年には150万台を目指すとしています。また、製品ラインアップも拡充され、2030年までに17車種の新型車を投入する予定です。
技術面では、AVATAはファーウェイやCATL(寧徳時代)との連携を深めており、自動運転技術、三電(バッテリー、モーター、制御)システム、シャーシ技術を自社車両に迅速に適用しています。2025年第3四半期には、AVATA 06、11、12、07などのモデルが、ファーウェイの「ADS 4」高度運転支援システムへと全面的にアップグレードされる予定です。
また、重慶市政府の「渝車出海(重慶車の海外進出)」政策の支援を受け、AVATAの重慶拠点からの輸出台数は顕著に伸びています。ブランド戦略としても、従来の「並行輸出」方式を廃止し、海外現地での販売・サービス体制の構築へと舵を切り、長期的かつ安定的な運営を目指しています。
しかしながら、このような雄大な拡張計画にもかかわらず、AVATAは厳しい財務状況に直面しています。長安汽車の2024年通期決算によれば、AVATAの年間販売台数は73,606台で前年比ほぼ倍増、売上は153.48億元に達したものの、赤字は40.18億元にのぼりました。同じく傘下のDeepal(深藍汽車)も15.72億元の赤字を計上しており、この2ブランドだけで長安汽車の純利益の約8割を食いつぶしていることになります。
2024年長安汽車財務報告抜粋
この「増収減益」の状況に対し、業界関係者や投資家からは様々な意見が上がっています。AVATAはまだ成長段階にあり、初期の赤字は避けられないとして、今後も投資を続けて高級スマートEV市場での地位を固めるべきだという声もあれば、一方で、現在の新エネルギー車市場は競争が激化し、価格競争が頻発しているため、業界全体の収益力が低下しており、長安はリソースを注ぎ続けるのではなく、主力の内燃機関車に回帰すべきだとの指摘もあります。
注目すべきは、AVATAやDeepalが赤字を出している一方で、従来型の合弁ブランドである「長安フォード」がグループ全体の「金のなる木」となっている点です。2024年、長安フォードは売上483.06億元、純利益20.9億元を計上し、長安全体の利益の約30%を占めています。これにより、「フォードがAVATAを食わせているのではないか」との疑念の声も出ています。
AVATAの将来は、依然として不確定要素が多く残されています。一方では攻めのグローバル戦略と技術連携の強み、もう一方では巨額赤字と激しさを増す市場競争。新エネルギー車市場の淘汰が加速する中、AVATAが真にグローバル市場の中心に躍り出るためには、拡大と収益性のバランスを見つけ出す必要があるでしょう。