東風と長安が合併へ?市場圧力が加速させる国有自動車メーカーの再編

中国の国有自動車メーカー(国資委〈国務院国有資産監督管理委員会〉傘下の国有自動車メーカー)の再編に関する噂がついに公式に発表され、長年にわたって流布されてきた再編計画が実行段階に入ることが明らかになりました。

2月9日、複数の上場企業が公告を発表し、国有自動車メーカーの再編が行われる可能性があることが示されました。これに関係する企業には、東風汽車股份有限公司(東風股份)、東風電子科技股份有限公司(東風科技)、長安汽車股份有限公司(長安汽車)、東安汽車動力股份有限公司(東安動力)などが含まれます。

東風股份は東風集団の子会社であり、主に軽商用車の事業に注力し、一方の同じ東風集団子会社の東風科技は電子技術分野に特化しています。東安動力は長安汽車と同じく兵装集団の子会社であり、自動車の動力システムの開発と製造に特化しています。

公告から読み取れる重要なポイント

今回の再編に関する東風股份、東風科技、東安動力、長安汽車などの上場企業の公告は、内容がほぼ共通しており、次の3つの重要なポイントを伝えています。

    • 間接的な支配株主(ここでは、それぞれ東風集団、兵装集団を指す)は他の国有企業との再編を計画している。
    • 再編後、間接的な支配株主は変更される可能性があるが、実際の支配者(国務院国有資産監督管理委員会)は変わらない。
    • 現在、関連手続きが進行中であり、最終的な承認には政府管理機関の許可が必要である。

東風集団と長安汽車が合併?

これまで、一汽集団、東風集団、兵装集団(長安汽車の親会社)の三大国有自動車メーカーグループが統合されるとの噂がありました。しかし、現在の情報を見る限り、今回の再編は東風集団と長安汽車に限定され、一汽集団は対象外と考えられます。

この点については、証券取引所への公告状況からも推測できます。

    • 東風股份(東風集団)・東安動力(兵装集団)は、2月9日に上海証券取引所で投資家向け公告を発表。
    • 長安汽車(兵装集団)は、同日に深圳証券取引所で類似の公告を発表。
    • しかし、同じく深セン証券取引所に上場する一汽解放(一汽集団の商用車子会社)は、公告を発表していない。

証券市場のルールでは、上場企業が重大な株式構成の変化を伴う場合、投資家向けに情報を公開する義務があります。したがって、現時点での公告内容から判断すると、今回の再編は東風集団と長安汽車に限定され、一汽集団は含まれていないと考えられます。

市場圧力が再編を推進

今回の再編の背景には、激化する市場競争が大きく影響しています。特に業界内で囁かれている「中国全体の自動車業界の総利益がトヨタ一社の利益にも及ばない」という指摘が、今回の再編の引き金になった可能性があるとの見方があります。

近年、中国の自動車業界は過当競争(内巻)が深刻化しており、中国政府の対応も次第に強化されています。2023年12月の中央経済工作会議では、「過当競争を本格的に是正するため、大規模な対策を実施する」と表明されました。このように、市場の圧力が政策の調整を促し、最終的に国有自動車企業の再編が推し進められることとなりました。

今回の再編の推進は、世界的な自動車市場の競争激化と密接に関連しています。日本でも日産とホンダの統合が試みられたように、中国の国有企業の統合も産業の再編成と競争力向上を目的とした動きであると考えられます。

もし市場に競争圧力がなければ、国有自動車メーカーの再編がこれほど早急に進むことはなかったでしょう。実際、中国の国有自動車メーカーの合併に関する噂は、過去6~7年にわたって流れていましたが、実際に動きがあったのはごく最近になってからです。

今後、市場環境のさらなる変化に伴い、中国自動車業界の競争構造も一層の調整を迎える可能性があります。今回の再編は、その第一歩に過ぎないかもしれません。

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