巨大国有メーカーの東風汽車、壮絶なバーゲンセールの背後にあるのは深刻な経営危機か
3月に入って、湖北省は複数の自動車メーカーと共同で政府・企業による自動車購入補助金を打ち出している。情報によると、自動車購入補助金に参加しているのは東風ホンダ、東風日産、東風風神、東風プジョー、東風シトロエン、広汽ホンダなどのブランドで、補助金は5000元から9万元までという人を驚かせるほどの金額である。これにより、一部の車種は大幅に値下げが可能となり、最も極端な下げ幅は9.8万元に達している。今回の大規模な販促は、湖北省に限定され、期間は1カ月で、湖北省のナンバープレートを取得するこが前提であるが、湖北省以外の地域の消費者が一定の条件で優遇を享受できるという。
地元政府が率先して自動車購入補助金を提供する動きは、業界で波紋を呼んでいる。近年、新エネルギー車の勢いが増しており、ガソリン車は大きな打撃を受けている。データによると、2022年の国内市場シェアトップ15の自動車メーカーの半数以上が、販売台数が2021年に比べて大きく落ち込んだ。うち東風日産は同20.9%、東風ホンダは17.8%それぞれ下落した。
また最近、湖北省政府が緊急財政出動で東風汽車を救済したという内容の書き込みがネット上で拡散されている。今回の大幅な自動車購入補助金キャンペーンの背景には、東風汽車がすでに陥っている深刻な経営危機があると指摘された。噂によると、東風汽車傘下の東風日産がまだ稼働を維持しているだけで、東風シトロエン、東風プジョー、東風風神、東風キアはいずれも数週間にわたって生産を停止しており、在庫は過去最高水準に達しているという。
今年年末に任期を迎える東風汽車の会長の竺延風氏が3月3日に早期退職したニュースもこうした噂を裏付ける材料と見なされている。
東風汽車の危機は、傘下の新エネルギー車ブランドYoyah(嵐図)の不発にも関係しているとの見方もある。2018年、東風汽車は、ハイエンド新エネルギー車ブランドYoyahを立ち上げた。東風汽車は、Yoyahに多大な資金と資源を注いだが、市場では連戦連敗しており、2021年のYoyahの年間純損失は7.06億元で、1台当たり10.4万元の赤字となった。2022年上半期、Yoyahの損失はさらに拡大しており、上半期に計5676台を販売したが、純損失額は7.38億元に達し、1台を販売するごとに約13万元の純損失を計上したことになる。
最近、販売台数が振るわなかったため、Yoyahはアウトソーシングや販売支援など多くの部門を中心に人員削減に着手したと報じられた。これに対し、Yoyahは「事実ではない」と否定したが、火の無い所に煙は立たたないであろう。
つまり、ガソリン車だけではなく、新エネルギー車も東風汽車の足を引っ張っており、ここ数年間で、東風汽車の自動車販売台数は下がる一方である。
売れなかったら値下げして生き残るしかない。ガソリン車にとっても、新エネルギー車にとっても、今年は激しい競争に晒される年になる。一方、コロナ感染が始まって3年間が経過した今、中国の一般消費者の購買力と購買意欲が大きく低下している。優遇政策や農村キャンペーンによる販促にせよ、大幅な値下げにせよ、パイの縮小に伴い、シェア争いが激化し、必ず淘汰される敗者がでてくる。巨大国有メーカーの東風汽車も倒産の運命から逃れないかもしれない。