BYDはなぜ強いのか(その3)
BYDの強さは、また車載基準半導体の内製化にあると「雷峰網」が指摘している。
新エネ車はこの2年、バッテリー原材料価格の高騰と半導体供給不足に見舞われている。
2021年から特に車載チップの供給が不足となり、最も厳しい時期に、STマイクロの常用チップは通常価格の20元から3500元に急騰した。2022に入ってからも半導体供給難は緩和されておらず、多くの自動車メーカーは減産を余儀なくされた。
しかしBYDはそれほど車載チップ不足の影響を受なかった。たとえ需要増と供給減のダブルパンチの下でも。そのなかで最も活躍しているのがBYD傘下の子会社、BYD半導体である。
BYD半導体の事業内容は5種類に分けられ、パワー半導体(主にIGBTとSiC)、インテリジェント制御IC(主にMCU、電源IC、BMS AFEチップ)、インテリジェントセンサー、光電半導体、およびその製造とサービスである。過去2年間、自動車業界で最も供給が不足しているはパワー半導体とMCUで、この2つはBYD半導体のメイン事業でもある。
「雷峰網」によると、BYDは自社半導体の6割以上を子会社であるBYD半導体が自社で供給することが可能で、これは、ベンチャー系自動車新勢力を含む他の自動車メーカーが持っていない実力である。
車載基準半導体以外に、BYDは他の重要部品にも力を入れている。
2020年、BYDは相次いで5つの弗迪(FinDreams)系子会社を設立した。弗迪電池、弗迪視覚、弗迪テクノロジー、弗迪動力、弗迪金型である。
5社は新エネ車のバッテリー、モーター、電子制御、ゲージ級チップ、車体のシャーシ、ライト、金型など新エネ車のほぼすべての重要部品をカバーしている。一部のメディアの調査によると、BYDの 61個の重要部品のうち37個が内製化を実現している。
「雷峰網」のまとめを読んで、BYDは伝統的な自動車メーカーでありながら、中国市場の流れをいち早くキャッチし、早めに新エネ車への戦略的布石を打ったことに感心するであろう。
確かにBYDが早めに準備していたのが事実である。ただし、それは、BYDが時代変化への臭覚が他社より特に鋭いというわけではない。実はBYDは昔から、電気自動車に対して特別な思いを持っていたのである。BYDは1995年に設立され、携帯電話向け電池の生産から始まり、2000年に重要顧客のモトローラの審査に合格し、モトローラ初の中国リチウムイオン電池サプライヤーとなった。その後、BYDはノキア、サムスンなどの多くの重要な顧客を手に入れ、全国最大の電池サプライヤーとなり、世界第3位に入った。
1997年からBYDの王伝福会長は電気自動車をつくる考えを持っており、「BYD中央研究院」という研究機関を設立して、電動二輪用バッテリー、電動四輪用バッテリーなど多くの研究プログラムを立ち上げた。倒産した自動車メーカー「秦川汽車」を買収した時、BYDは上海に電気自動車プロジェクト部を設立し、電気自動車の研究開発を始めた。その後、いくつかの電気自動車を開発したが、時期尚早でいずれも量産まで持っていかなかったが、その技術的な蓄積が、今日の同社の競争力に大きく寄与したわけである。
即ちBYDにとって、たまたまバッテリーを動力とする自動車に興味をもって早めに着手したことが無駄にならず、新エネ車の政策的な好機に恵まれ、ラッキーヒットとなって、他社を引き離すアドバンテージに化したというわけであろう。
(つづき)