BYD、ブラジル工場建設現場での中国人労働者の「奴隷状態」が国際的に波紋
海外メディアによりますと、中国の電動車大手BYD(比亜迪)がブラジル・バイーア州に新設する電動車工場の建設プロジェクトで、163人の中国人建設労働者が「奴隷のような条件」で働き、生活していたとされています。この問題は国際社会で広範な注目を集めています。
ブラジル労働検察官事務所の声明によると、ブラジル当局は12月23日、バイーア州の新工場建設現場で働いていた163人の中国人労働者を救出し、工場建設の停止を命じるとともに、問題のあったすべての宿泊施設を閉鎖しました。
労働者の厳しい状況
調査によりますと、これらの中国人労働者はBYDの中国系下請け企業である「錦江建設ブラジル有限会社」に雇用され、ブラジルに連れて来られました。労働者のパスポートは押収され、給与の一部が不当に差し引かれたほか、高額な違約金や往復航空券代金を支払わされる状況だったといいます。
さらに深刻なのは、労働者の生活環境でした。31人に対して1つの浴室しかなく、ベッドにマットレスはなく、個人用品と食料が雑然と置かれた劣悪な衛生環境でした。また、労働者は午前4時に起床させられ、午前5時30分には仕事を始めるという過酷なスケジュールが強制されていました。その結果、労働者の1人は25日間連続勤務を強いられた後、作業中の事故で負傷したとされています。検査官は、この労働環境を「人間の尊厳を損ない、安全を脅かすもの」と評しています。
BYDの対応
この事件を受け、BYDは問題の下請け企業との契約を直ちに解除すると発表しました。同社は過去数週間にわたり労働環境の改善を繰り返し要求していたと述べ、被害を受けた労働者全員をホテルに移動させ、生活・労働条件の改善を約束しました。また、BYDはブラジルの法律を厳守し、今後のプロジェクトが現地の労働規則に従うことを強調しました。
事件の背景と影響
BYDは世界最大級の電動車メーカーの一つであり、近年は海外市場での事業拡大を加速させています。ブラジルは同社にとってラテンアメリカ地域での重要な市場であり、2015年から電動バスの車台を製造する工場を運営しています。昨年、BYDは約30億ブラジルレアル(約45億元)を投資して新しい電動車工場を建設する計画を発表しました。しかし、今回の労働問題はブランドイメージに影響を及ぼし、国際的な事業展開の複雑さを浮き彫りにしました。
BYDは下請け企業の責任を強調する一方、この問題の根底にある中国国内の労働環境に関する課題も指摘されています。
中国国内と西側の反応の温度差
今回のニュースは西側諸国で大きな衝撃を与えましたが、中国国内では異なる反応が予想されます。ブラジル政府が労働者を「救出」した行為は、当の労働者にとって「余計なお世話」と映る可能性があります。
これらの労働者は自らの意思でこの状況を受け入れている場合も多く、彼らにとっては耐えられる範囲での選択肢であった可能性があります。仮に良い仕事が他にあれば、このような過酷な労働環境を選ぶことはなかったでしょう。
さらに、31人で1つの浴室やマットレスのないベッドといった条件は、中国国内の多く土木建設企業が提供する環境よりもむしろ良い場合もあります。こうした状況を西側諸国が驚きをもって報じる一方、中国国内の多くの人々には特段驚くべきものではないと受け取られる可能性があります。
今後の示唆
この事件が中国国内の労働環境改善に直接つながるかは不透明ですが、海外に進出する中国企業にとって、現地の労働法を順守し、適切な環境を提供する重要性が改めて浮き彫りになりました。独立した労働組合が存在せず、労働者保護の法整備が不十分な中国国内の慣習をそのまま海外に持ち込むことのリスクが、今回の事件を通じて明らかになったといえます。