中国EVメーカー相次ぐ「高速増資」、資金不足の懸念広がる

3月27日、新興EVメーカーNIO(蔚来)は、香港市場で40億香港ドル超の増資を完了したと発表しました。これにより同社は、流行りの高速増資(Accelerated Bookbuild Offering, ABO)に参加した自動車メーカーとなりました。
高速増資(ABO)とは、上場企業が一般個人投資家ではなく、特定の投資家(主権基金、長期投資家、戦略的投資家など)に対して新株を発行し、資金を調達する迅速な資金調達方法です。投資家の参加を促すため、高速増資は通常、市場価格を下回る価格で新株を発行します。
NIOは取引終了後の公告で、米国外のオフショア取引を通じ、米国籍でない投資家向けに最大1億1900万株のA類普通株を発行すると明らかにしました。調達資金は主に、スマートEVのコア技術・新製品開発、キャッシュリザーブの強化、バランスシートの最適化、長期的な事業成長のためのリソース確保に充てられます。最終的に同社は1株29.46香港ドルの価格で配売を成立させ、総額40億3000万香港ドルの資金調達を達成しました。
これに先立ち、シャオミ(小米)も3月25日早朝、割安価格での資金調達計画を発表しました。創業者・雷軍氏は自身が保有する約3.2%の既存株を売却するとともに、同比率の新株を引き受ける形で、総額約425億香港ドルの資金調達を実施しました。これによりシャオミの上場以降の累計調達額は1兆香港ドルに迫る勢いです。同社は調達資金を事業拡大、研究開発投資、運転資金に充てるとしています。
さらに、3月4日にはBYDが約434億香港ドルのH株の高速増資を完了しました。1億2980万株の新株を1株335.2香港ドルで配売し、世界的な長期投資家、ソブリンウェルスファンド、中東の戦略的投資家などが参加しました。これは過去10年間の自動車業界において最大規模の増資案件の一つとなりました。BYDは調達資金を、国際化戦略の推進、海外生産拠点の現地化、販売チャネルの整備、グローバルブランド力の強化などに活用すると説明しています。
証券アナリストは、「新エネルギー車分野では技術革新のスピードが速く、市場ニーズも絶えず変化するため、十分な資金準備が企業の長期的成長に不可欠です」と指摘しています。一方で、「中国の新エネルギー車メーカー同士の競争が過熱し、各社とも資金不足に陥っている」との見方も示されています。