工業情報化省、2016〜2020年の新エネルギー車補助金を再審査:11社で計8.6億元減額、BYD・Cheryが最大

6月24日、中国工業情報化省は「2016〜2020年度の新エネルギー車(NEV)普及促進補助金清算審査初期結果の公示」を発表しました。これによると、申請を行った11社のうち複数の自動車メーカーで、実際に支給された補助金額が申請額を大幅に下回り、減額総額は合計8.6億元に上りました。中でも、BYDとChery(奇瑞汽車)はそれぞれ約1.4億元および2.4億元以上の補助金が削減され、「補助金削減額が最も大きい自動車メーカー」となりました。

5年間の申請総数は7.5万台超、2万台以上が基準未達で不適格に

工業情報化省の公示によると、2016年から2020年にかけて、各大手自動車メーカーが申請した新エネルギー車は計75,814台、補助金申請額は約29.3億元に達していました。しかし審査の結果、条件を満たしたのは54,089台のみで、実際に支給されるべき補助金は約20.7億元と判定されました。すなわち、約21,725台の車両が補助対象外とされ、差し引き8.6億元の減額となった形です。

主な減額理由としては、車両に関する証明書類が申請基準を満たしていなかったこと、メーカー側が車両の運行データを規定通りにアップロードしていなかったこと、一部車両が航続距離や電力消費など技術的な補助基準に達していなかったことが挙げられます。

BYD・Cheryの補助金が大幅減、長安・BAICも影響受ける

補助金を申請した11社の中で、BYDは5年間で申請した車両約4973台が審査で不適格とされ、申請総額1.6億元に対し、実際の支給額は約1880万元にとどまり、約1.43億元が減額されました(不適格率約88%)。

Cheryは約8760台の車両が基準未達とされ、約2.4億元の補助金が削減されました。これは企業単体としては最大の減額額となります。

また、長安汽車では約438台が対象外となり、1327万元が減額。BAIC(北京新能源)も約2776台が不適格とされ、補助金約9700万元が削減されました。

そのほか、GAC(広汽)、FAW(一汽)、SAIC(上汽)、Geely(吉利)、東風汽車なども補助金の削減対象に含まれており、特に東風汽車は2017〜2020年の4年間で約3700万元が減額、FAWでは約1090万元が削減されました。Geely、SAIC、GACについても一定額の減額が確認されています。

なお、2020年に初めて補助金制度に参加したテスラについては、申請車両すべてが審査を通過し、減額はありませんでした。

新エネルギー車(NEV)普及促進補助金清算審査初期結果(抜粋)

出典:工業情報化省「2016〜2020年度の新エネルギー車(NEV)普及促進補助金清算審査初期結果の公示」をもとに作成

補助金制度の「動的調整」──健全な業界発展を促す仕組みに

新エネルギー車に対する財政補助政策は2009年から実施され、2022年には段階的に終了しました。この間、業界の成長や技術の進展に伴い、補助制度は何度も見直されてきました。バッテリーのエネルギー密度や航続距離の要件強化、30万元以下の車両への限定(バッテリー交換式モデルは除外)、年間補助上限台数の設定など、政策の方向性は「質重視・量抑制」へとシフトしてきました。

2020年には、工業情報化省を含む4つの部門が補助申請車両について、公告、車検証、使用者情報、国家監視プラットフォームのデータを総合的に照合し、現地調査も行うことを明確にしており、今回の審査にもこれが反映されました。これにより、一部の自動車メーカーで見られた「補助金依存体質」を効果的に抑制できたと評価されています。

補助が減れば経営危機も現実に、業界のリスクが浮上

今回の審査結果を踏まえますと、BYDやCheryなど、多くの自動車メーカーによる申請が不合格とされましたが、対象期間中の補助金額自体はそれほど多くありませんでした。これは、新エネルギー車の販売が急増したのが主に2021年からであることが背景にあります。

中国における新エネルギー車の販売台数(出荷ベース)の推移

出典:中国自動車工業協会をもとに作成

実際、BYDの2024年の業績によりますと、売上高は7771.02億元(前年比+29.02%)、純利益は402.54億元(前年比+34%)を記録しています。そのうち、当期損益として計上された政府補助は37.8億元(前年比+72.84%)、日常活動に関連する政府補助は104.06億元(前年比+125.28%)に達しました。これらを合わせますと、BYDが2024年に受け取った補助金は141.86億元となり、純利益の約35%を占めています。これは2023年の68.06億元と比べて、実に108%の増加に相当します。

このような状況から考えますと、将来的に今回と同様の厳格な審査が再び行われた場合、BYDが実際に受け取れる補助金は80%以上削減される可能性があり、その結果として利益の約28%を失うという試算もあります。こうした構造を受けて、補助金がBYDの値下げ競争の「下支え」となっているとの指摘も少なくありません。

業界内では、補助金がわずかでも縮小され、価格競争が制限されると、生産能力を過剰に拡大してきた新エネルギー車メーカーが、連鎖的に経営危機を起こす可能性があるとの声が出ています。補助金に過度に依存した企業体質は、業界全体の健全な発展にとって大きな課題であり、今後は本格的な淘汰の時代に入るとの見方が強まっております。

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