ネクスペリア問題で米中が一時合意──中国が輸出再開を容認、半導体供給の裏に見える妥協と緊張

11月1日、中国商務部の報道官は、ネクスペリア(Nexperia、中国語名「安世半導体」)をめぐる問題について記者の質問に答えた。報道官は、オランダ政府による企業内部への不適切な介入が、現在の世界的な生産・供給網の混乱を引き起こしたと指摘した。そのうえで、中国政府は責任ある大国として、国内外のサプライチェーンの安全と安定を重視しており、経営上の困難に直面する企業には商務部または地方当局への相談を呼びかけた。また、企業の実情を踏まえ、一定の条件を満たす輸出については免除措置を検討する方針も示した。

ネクスペディアをめぐる問題は、オランダ政府が同社の株式構成に介入したことに端を発しています。オランダ側は国家安全保障や技術流出の懸念を理由に、中国の聞泰科技(WenTech)が保有するネクスペリア子会社の一部株式を凍結し、同社の一部経営権を接収しました。これに対し、中国側はネクスペリアの中国工場での製品輸出を停止し、その影響で自動車用半導体の世界的な供給網が一時的に混乱しました。

中国商務部の発表と同日に、米国政府も声明を発表しました。ブルームバーグの報道によりますと、ホワイトハウスはネクスペリアの中国工場からの出荷再開を承認したとされています。ホワイトハウスは声明の中で、世界の自動車産業における半導体不足を緩和することが目的であると説明しました。報道によれば、トランプ大統領と習近平国家主席の会談で合意された枠組みに基づき、中国工場の出荷が再開されることになったということです。つまり、最近の米中首脳会談を通じて、ネクスペリアの中国工場からの輸出再開を含む一時的な貿易合意が成立したとみられます。中国側の供給再開は、米国との交渉の中でやむを得ず受け入れた妥協措置と解釈されています。

一方、オランダのネクスペリア本社およびオランダ政府は、この件についてコメントを控えています。ロイター通信によりますと、両者は「中国側が出荷を再開する」との報道に対し、いずれも公式な見解を示しませんでした。これは、中国による供給再開を肯定することが、同国にネクスペリア中国工場の支配権を認める行為と受け取られかねないためだとされています。中国が供給再開を認めたことは世界の自動車業界にとってはプラスですが、同工場の所有者にとっては沈黙が最も現実的な対応だとみられています。

以上の3件のニュースから、中国と西側諸国との対立、すなわち「貿易戦争」が依然として非常に激しく、鋭い駆け引きが続いており、しかも手段を選ばない状況にあることがうかがえます。今回、米中が合意し、中国によって輸出制限されている半導体をネクスペディアが供給できるようになった件については、米国政府の立場から見れば問題のある措置ではありますが、貿易戦争の状況下でやむを得ず取られた非常手段でもあります。

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