最近、自動運転企業である毫末智行（HAOMO.Ai、以下はHAOMO）がリストラ計画を開始したとの情報がありました。職能部門で約30％、さらには半数近くの人員削減が行われ、解雇された従業員には「N+1」基準で補償が行われる予定です。その後の報道では、このリストラは職能部門だけでなく、研究開発技術者にも影響を及ぼしていることが明らかになりました。1月22日、HAOMO側は「会社は正常な組織構造の調整を行っている」とコメントしました。

HAOMOは元々、長城汽車の自動運転部門で、2019年11月に同社から独立しましたが、現在でも長城汽車が実質的な支配権を持っています。これまでにHAOMOは複数回の資金調達を行っており、投資元には長城汽車、美団（メイトゥアン）、首鋼基金（Shougang Fund）、高瓴創投（GL Ventures）、九智資本（JZ Capital）などが含まれています。今年の上半期には、2月に1億元のB1ラウンド資金調達、4月には3億元のB2ラウンド資金調達を発表しており、自動運転業界のスター企業とされています。

このような状況で、多くの人が「順調に資金調達をしているように見えるが、なぜHAOMOは今リストラをするのか？」と疑問を抱くことでしょう。この問題にはいくつかの理由があります。

新規顧客の獲得が予想よりも進まない

HAOMOは独立したTier1企業として、すべてのOEM（自動車メーカー）との協力を積極的に進めていますが、現状では進展は芳しくなく、既存の顧客は主に長城汽車に限られています。公開情報によれば、HAOMOのHPilot自動運転システムは20以上の車種に搭載されていますが、これらの車両はすべて長城汽車からのものです。他の自動車メーカーとも契約を結んでいるものの、具体的な進展はまだ明らかにされていません。

都市NOA（注）製品の進展が難航

業界内の一部では、HAOMOの自動運転技術のアプローチは他社よりも大胆で、最初からエンド・ツー・エンドの大規模モデル技術を採用しようとしたため、その難易度が予想以上に高く、NOA（Navigate on Autopilot）の短期導入が難航しているとの意見があります。

2023年にHAOMOは第二世代のHPilot自動運転製品を発表しました。3000元クラスの「高速NOH（NOH：Navigation on HPilot）」製品HP170、5000元クラスの都市NOAおよび自律駐車HP370、8000元クラスの「高精度地図に依存しない都市NOH」製品HP570が含まれています。計画では、HAOMOの「高精度地図に依存しない都市NOH」は2024年に100都市を開拓する予定ですが、複数の業界関係者によると、HAOMOの都市NOHソリューションは実際には順調に進んでいないとのことです。この遅れにより、競争で不利な立場に立たされています。

今年3月、HAOMOのCEOである顧維灏氏は「エンド・ツー・エンドは将来非常に重要な方向性になるだろうが、すぐには来ないと考えている。あと数年の発展が必要だ」と述べました。

「支援者」である長城汽車が新たなパートナーを選択

今年に入り、長城汽車は突如として別の自動運転企業「元戎啓行」（DEEPROUTE.Ai、以下はDEEPROUTE）社の都市NOAソリューションを選択し、このソリューションを他の車種にも拡大する計画を立てました。このニュースはHAOMOにとって大きな打撃となり、業界内では、長城汽車がHAOMOの「高精度地図に依存しない都市NOH」の量産効果が期待に達していないため、DEEPROUTEとの協力を選んだとの見方が広がっています。この推測はHAOMOの将来に対する懸念をさらに強める結果となりました。

同時に、長城汽車とファーウェイとの協力も再び強化され、長城のTANKブランドの一部のモデルには、ファーウェイの自動運転およびスマートキャビンソリューションが搭載される見込みです。これは、現在長城汽車に大きく依存しているHAOMOにとって、さらに厳しい状況を意味します。

資本市場の冷え込み

厳しい経済状況はすべての業界に影響を及ぼしており、特に資金を大量に必要とする自動運転業界にとっては痛手です。ある関係者によれば、長城汽車の会長である魏建軍氏は10月に、HAOMOの香港株式市場へのIPO計画を一時停止したとのことです。HAOMOの会長である張凱氏はこれを否定し、来年IPOを進めるとしていますが、このニュースはHAOMOの評判と資金調達の見通しに少なからぬ影響を与えています。

全体を通して、HAOMOのリストラ計画とその背景について、技術的な進展の遅れ、新たな競合他社の登場、そして資本市場の冷え込みといった複数の要因が絡み合っていることが明らかになりました。これらの要因が合わさることで、HAOMOは現在厳しい状況に直面しています。将来の動向がどのように展開するか、特にHAOMOがこの困難な時期をどのように乗り越えていくかに注目が集まります。

注：NOA（Navigation on Autopilot）はテスラが北米でベータテストをしているFSD機能と同様の運転支援システムの一種｡