L2黒字化の兆し、L4は苦境続く:2024年中国スマート運転業界の明と暗

最近、国内のスマート運転業界の主要企業であるBlack Sesame Technologies(3月31日)、Horizon Robotics(3月21日)、WeRide(3月25日)、Pony.ai(3月25日)が、それぞれ2024年度の財務報告を発表しました。これらの報告からは、中国のスマート運転業界が「明暗分かれる」発展段階にあることが浮き彫りになっています。L2レベルの運転支援技術に注力するHorizon RoboticsやBlack Sesame Technologiesは、初めて帳簿上の黒字化を達成。一方、L4自動運転に注力するPony.aiやWeRideの赤字は拡大を続けており、業界内の二極化が一層顕著になっています。

L2分野:黒字の兆しは見えるものの、自立した収益力にはなお課題

2024年、Horizon Roboticsの売上高は前年比53.6%増の23.84億元、粗利益率は2023年の70.5%から77.3%に上昇し、親会社に帰属する純利益は23.47億元となりました。Black Sesame Technologiesの売上高は4.74億元(51.8%増)、粗利益率も2023年の23.7%から41.1%へと大きく改善しました。

しかし、これらの好調な数字の裏には懸念材料もあります。両社の黒字は主に金融資産の公正価値変動による収益によるものであり、これを除くと、Horizonの調整後純損失は16.81億元(2.8%増)、Black Sesameは13.04億元(4%増)の損失を計上しています。

利益を圧迫している最大の要因は、高水準の研究開発(R&D)投資です。HorizonのR&D費用は31.56億元(33.4%増)で、売上高の1.32倍に相当します。Black SesameのR&D投資は14.35億元(5.33%増)で、売上高の実に3倍に達しています。

BYDなど、自社開発チップの導入を進めようとする自動車メーカーとの競争が激化する中、HorizonのCEO・余凱氏は「業界の最終形は『20%自社開発+80%協業』になるだろう」と楽観視しています。

なお、中国乗用車市場におけるL2機能搭載率は2024年に67.8%に達しており(乗連会調べ)、この分野が他に先駆けて大規模な収益化を実現する可能性もあります。

L4陣営:商業化の遅れが赤字拡大に拍車

一方、L4自動運転企業は依然として深刻な赤字状態から抜け出せていません。2024年、Pony.aiの売上高は5.39億元(4.35%増)で、純損失は約20億元に達しました。WeRideの売上高は3.61億元(10%減)、純損失は25億元と、売上高の7倍に上っています。両社の粗利益率はそれぞれ15.2%と30.66%で、Horizonとは大きな差があります。

赤字の主な要因は以下の3点です:

    • 政策的制約:Robotaxi(無人タクシー)は中国国内の限られた都市でしか試験運用されておらず、Teslaの「Cybercab」の量産も2026年以降と見込まれています。
    • 技術コスト:Pony.aiのR&D費用は前年比95.7%増の17.45億元に達し、WeRideも売上高の300%超をR&Dに投入しています。
    • 商業化の遅延:WeRideのCEO・韓旭氏は「黒字化にはあと5年必要」と見込んでおり、Pony.aiも2029年頃に訪れるとされる市場拡大期に期待を寄せています。

調査会社Frost & Sullivanは、2030年には世界のRobotaxi市場が8,349億元規模に達すると予測していますが、現時点で企業のキャッシュフローには黄信号が灯っています。Pony.aiの現金保有額は54億元、WeRideは49億元にとどまり、現在の損失ペースが続けば、あと2~3年で資金が枯渇する恐れがあります。

業界の未来:技術路線とビジネスモデルの最終的な競争へ

短期的には、「漸進型」の成長ルートを取るL2企業のほうが資本市場での評価を得やすい状況です。HorizonはこれまでにBYDやSAICなどの大手メーカーに対して累計770万個のチップを出荷しており、2025年には1,000万個を超える見込みです。Black Sesame TechnologiesもBYDなどの顧客を獲得して搭載台数を拡大しています。

一方、L4企業は「間接的な突破口」を模索しています。Pony.aiとWeRideはすでに北京南駅で自動運転シャトルサービスを提供しており、WeRideは世界で初めて中国、アメリカ、フランスなど5か国で自動運転ライセンスを取得した企業となりました。また、華泰証券のアナリストは「アセットライト型のビジネスモデル」が、L4企業の打開策になり得ると指摘しています。

業界の専門家は、「スマート運転業界はすでに本格的な調整期に突入している」と見ています。L2企業は早期に実質的な黒字を実現する必要があり、L4企業は資金が尽きる前に持続可能なビジネスモデルを確立しなければなりません。技術路線と商業化のせめぎ合いこそが、今後5年間の業界構造を左右する鍵となるでしょう。

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