CATL、インドネシアで総額60億ドルの電池一貫プロジェクト始動——ニッケル資源確保と製造・リサイクル体制を構築

6月29日、中国の電池大手CATL(寧徳時代)は、インドネシアにおいて総投資額約60億ドルに上る電池材料および電池製造の統合プロジェクトを正式に始動させました。本プロジェクトは、CATLの子会社であるCBL(普勤時代)、インドネシア国有鉱業会社PT Aneka Tambang Tbk(ANTAM)、インドネシア電池会社Indonesia Battery Corporation(IBC)によるコンソーシアムが共同で出資・建設を行うもので、ニッケル鉱の採掘・精錬、電池材料の製造、電池の生産からリサイクルに至るまでの完全なバリューチェーンを網羅しています。
プロジェクトは以下の2地域に分散して展開されます:
北マルク州東ハルマヘラ:ニッケル鉱の採掘、精錬、電池前駆体の製造および材料リサイクル施設を建設。CATLは邦普定向循環技術(DRT技術)(注)を導入し、インドネシア初の再生可能エネルギーによる循環システムを構築します。金属の回収率は95%を超える見込みで、年間ニッケル14.2万トン、正極材3万トンを生産。加えて、年間2万トンの使用済み電池を処理できる能力を備える計画です。
西ジャワ州カラワン県:電池製造工場を建設。第1期では年間6.9GWhの生産能力を計画しており、全体完成後は総生産能力15GWhを見込んでいます。これは電気自動車約25万~30万台分に対応可能な規模であり、将来的には太陽光発電による蓄電用途への展開も予定されています。
インドネシアは世界最大のニッケル資源保有国であり、同国のニッケル鉱埋蔵量は世界全体の50%以上を占めています。上流資源の確保が電池産業における競争力の核心となるなか、CATLがインドネシアに直接投資する主な目的のひとつは、資源の囲い込みによって第三国からの原材料供給への依存を低減することにあります。かつてオーストラリアからの一部原材料供給が中断された経験もあり、CATLはサプライチェーンの安全保障をより一層重視するようになっています。今回のインドネシアプロジェクトは、同社が掲げる「資源から製造まで」の一体化戦略を体現する重要なマイルストーンとなります。
注:邦普定向循環技術(DRT技術):CATLの子会社「邦普時代(Brunp)」が開発した電池材料のリサイクル技術(Directed Recycling Technology)のこと。